太田雄貴氏、日本のスポーツ界は「誰かの我慢で成り立っている」ベッティング導入は“無償の労働”を救えるか
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 2021年の夏季、さらに2022年の冬季と、続けて行われて大いに盛り上がったスポーツの祭典・オリンピック。日本人選手からも多くのメダリストが誕生し、またそれを見守ったファンたちも感動の連続となった。しかし、オリンピック競技になっていても、マイナー競技であるものは、海外遠征に出るにも自費で負担するような選手も少なくない。また、国内スポーツの土台となっている学校の部活動では、今も教師たちが特別な手当をもらうことなく、休みなく顧問として活動していることも多い。元フェンシング五輪メダリストでIOC(国際オリンピック委員会)委員の太田雄貴氏は、この現状に「誰かの我慢で成り立っている」という表現をした。よりよい日本のスポーツ界に必要なものは何かを聞いた。

【動画】国内でも議論され始めた「スポーツベッティング」の現状

 多くの人々に感動を与えた日本選手団だが、競技団体の資金が豊富だったり、個人として多くのスポンサーと契約できていたりする選手は、ほんの一握り。五輪メダリストになったとしても、競技の合間にはアルバイトをして生計を立てるというのも珍しくない。

 太田氏 仮にオリンピックでメダルを取っても、平均の所得に及ばないという方々もいます。スポーツを一つの産業としてみなしてもらえるためには、まだまだ足りない。スポーツ庁が掲げている2025年の市場規模、15兆円というのも言葉だけが独り歩きしていて、今のままでは達成ができません。

 世界に誇るトップアスリートでさえ苦しい状況の中、学校での部活動はさらに厳しい。

 太田氏 スポーツは教育という中で、崇高なものになっています。一方で、崇高なものは誰かの我慢で成り立っている。部活動も学校の先生の問題がありまして、顧問の先生は土曜日・日曜日を無償で捧げていて、その上でスポーツの強化をしてきました。昨今は働き方改革もあって、部活動をアウトソーシングしないと無理だよという声が出てきましたが、誰かが当たり前に思っていることは、誰かが我慢していてくれたから成り立っていることもあります。

 一部のメジャーなプロスポーツ以外、そこでどれだけ頑張ろうとも生活が楽にならない。裾野を広げようと頑張る部活動でも、そこには“無償の労働”に耐える人々がいる。近年、各種スポーツの参加人口の減少が目立っているが、プレーする側も教える側も苦しいのでは無理もない。

 この状況を打開する一手として期待されているのが、海外で盛り上がっているスポーツベッティングだ。合法・非合法のものを含めて、その市場規模は約330兆円にもなる。日本で認められているスポーツベッティング、公営競技(競馬、ボートレース競輪、オートレース)を全て足しても年間約6兆円で、どれだけ大きなマーケットが展開されているかがわかる。また日本では、その他の競技でのベッティングが認められていないにも関わらず、海外では国内スポーツが対象になっており、日本のスポーツ全体で数兆円の売り上げが出ているとも言われている。

 太田氏 海外では賭けの対象になっているのに、日本には1円も支払われてはいない。何しなくても数兆円という額が賭けられているのに、日本に落ちない状況をこの先ずっと続けていきますか、どうでしょうというのが私からの1つの提案です。

 国内でベッティングが合法化され、運営ができれば、今海外で賭けている人々が、日本に外貨を落とすことにもなる。ベッティングの世界では、どの国で行われている、どんな競技であっても、そこに差はなく、さらには競技レベルについてもあまり重視されない。賭けとしておもしろいものが成立すればいいからだ。ここで大きな財源が確保できれば、苦労しているアスリートや競技団体への支援、さらにはそれを支える学校の部活動のアウトソーシング化も進むかもしれない。選手の八百長や、参加者のギャンブル依存など、考えるべきこと、対策すべきことはたくさんあるが、それを乗り越えた先には日本がスポーツ大国になれる未来も見えている。

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