3月21日、福岡国際センターでプロレスリング・ノア春のビッグマッチ『GREAT VOYAGE 2022 in FUKUOKA』が開催された。メインイベントは王者・藤田和之が田中将斗を迎え撃つ、GHCヘビー級選手権初防衛戦。両者は昨年の12・27「杉浦軍興行」後楽園ホール大会で初対決。その時は、すさまじいエルボー、頭突き、張り手合戦を展開した末、30分時間切れ引き分けだった。

 今回はプロレス界を代表するタフガイである野獣と弾丸がノアの最高峰GHCヘビー級のベルトを賭けての再戦。前回以上の肉弾戦が予想されたが、その予想を超える激闘となった。

 2・23名古屋大会で中嶋勝彦を破りGHCヘビー級王座を初戴冠後、まさかのノア入団を発表して以降、「これからは野獣ではなく人間・藤田和之。ノアの藤田和之として生きていきたいと思います」と語るなど、やけに礼儀正しくなった藤田だったが、試合になるとやはり野獣全開。

 ギラギラした目で野獣ガスマスクを装着して入場し、ゴングが鳴ると長い睨み合いから序盤はグラウンドレスリングで圧倒。これに対して田中は厳しいヒザ攻めで対抗し藤田の動きを止めると、串刺ラリアット、トルネードDDTで畳み掛け機動力の違いを見せつける。続くスーパーフライは藤田のヒザで迎撃されるが、藤田の花道でのビーストボムをリバーススープレックスで返すと、花道でスライディングDを発射。リングに戻り、今度はスーパーフライを成功させるがカウント2。

 ならばとすかさずスライディングDにいくが、これを藤田が喉輪でキャッチし、そのままチョークスラムでマットに叩きつける。そして田中のお株を奪うスライディングDを叩き込むと、コーナーに上がり野獣のスーパーフライか!? と思われたが、これは田中がいち早く立ち上がり、リングが壊れんばかりの強烈な雪崩式ブレーンバスター。

 ここから両者真っ向勝負でエルボー合戦。どちらも一歩も引かずに打ち合いが続くと、田中が「倒れへんな、こいつ!」と吐き捨てたあと、強烈なヘッドバッド。「ゴツン!」という鈍い生音が館内に響き渡る。この一撃を合図に両者がヘッドバッドを連打し合う異様な展開となり、ついに田中がマットに膝をつくと、藤田がエルボーをフルスイングで叩き込みついに田中がダウン。

 この好機に藤田はビーストボムから顔面蹴り。さらにもう一度ビーストボムでマットに叩きつけると、その体勢から再度抱え上げ餅つき式ビーストボムを炸裂させ、ついにカウント3。30分を超える激闘の末、藤田和之がGHCヘビー級王座初防衛に成功した。 

 試合後、倒れたままの田中と握手を交わし抱き起こすと、頭を下げて健闘を称えた藤田。そして会場の四方にも深々と礼をし、生声で「ありがとうございました!」と叫んで花道を引き上げていった。

 バックステージに戻り、「本気の舞台で本気の相手と本気で闘うことはこの上ない幸せでございます」と、“野獣”から“人間”に戻ったかのうように、やたら丁寧な言葉で試合の感想を語った藤田。

 そこに田中が現れて「完敗です。でも、いつか絶対にぶっ壊しますから。また一ついい目標ができました」と告げられると、「またぜひお願い申し上げます。ありがとうございました」と、リング上に続き握手を交わして深々と礼。ケンドー・カシン、杉浦貴、桜庭和志、鈴木秀樹の杉浦軍の仲間がビールを持って乾杯をうながすが、藤田は「お心だけはありがたく頂戴いたしますが、もうそういうのはなしにしていただければ。お先に失礼します」と、丁重に断りを入れて控室へと消えていった。

 残された杉浦軍メンバーは仕方なく主役不在のまま4人で寂しく乾杯。以前は記者会見でもビールをがぶ飲みしていた藤田の豹変ぶりに戸惑うばかりだったが、その晩に更新された鈴木秀樹のSNSには、居酒屋で上機嫌に生ビールをがぶ飲みする野獣の写真がアップされていた……。

 「一体、誰がこの男に勝てるのか?」と思わせる圧倒的な強さを見せつけた藤田和之。リング外での“豹変”ぶりも含めて、その動向からますます目が離せない。

写真/プロレスリング・ノア