ウクライナとロシアの代表団による5回目の停戦協議がイスタンブールで始まる。これに先立ってロシアメディアの取材に応じたウクライナのゼレンスキー大統領は“妥協”についても言及しているが、先行きは不透明で、西側諸国の経済制裁によって孤立したロシアが“北朝鮮化”するとの見方も浮上している。
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国連安保理の専門家パネル委員を務めた経験のある東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は「ロシアには1億5000万人の国民がいる一方、ガスも石油も穀物もあるので、立てこもった状態でもそれなりに生きてはいける。紛争が中途半端な状態で残ってしまった地域はこれまでもあったし、例えば朝鮮半島も戦争の結果、2つの国に分かれたまま固定化している状態だといえる。その意味では、ロシアが“ガスも石油も出る北朝鮮”みたいな感じになっていく可能性はあるのではないか」との見方を示す。
「ただ、そうした状態をよしとするかどうかは大きな問題だし、国連においてはソ連とアメリカの対立や拒否権発動によって機能しなかった時期が長く続いたが、おそらくそれがまたやって来る可能性もある。西側諸国はロシアを国際経済から隔離し、経済制裁を続けないといけないということでもあるし、世界vs孤立したロシアという関係の中、資源や穀物が欲しいとロシアの近づいていく途上国や周辺諸国も出てくると思う」。
今月に入り、ロシア軍は北方領土を含む地域でミサイルシステムを使った演習を行ったと発表している。仮にロシアの行動がエスカレートした場合、アメリカ軍の支援は得られるのだろうか。
鈴木教授は「極東での演習については、日本に攻めてくるというより、“今はウクライナに集中しているけれども、こちらも忘れていないぞ”というアピールのためのものだ」とした上で、次のように説明する。
「やはり攻められれば自衛しなければならないし、憲法9条の中でも個別的自衛権の発動は認めているという解釈で来た。日米安全保障条約5条で“日本国の施政の下における”と書いてあるのは、アメリカは自らの国土を攻められたわけではないけれども、日本の防衛に共同で参加するということで、そこには色々なオプションがある。それが日米安保のつくりだ。
だから北海道に関しては米軍基地を置かず、まずは自衛隊で守って、虎の子の米軍はその後ろに控えている、という布陣で考えられていて、冷戦時代にもソ連軍は北から攻めてくるというのを前提に、まずは日本が自分たちで守り、アメリカが後ろから様々な作戦で支える、場合によっては攻撃をするということだ」。
こうした問題について、自民党の国防部会長も務める宮澤博行衆議院議員は「大変難しいところだが、会見で官房長官が説明した通り、日本が実効支配できていない以上、北方領土は日米安保の適用外とならざるを得ないだろうが、北方領土から北海道に何かしらの攻撃があった場合には自衛隊の防衛出動、そして日米安保の発動ということになるだろう。非常に残念ではあるが、それが現実だと思う」と話す。
「ロシアの孤立もそうだが、中国の動きも大変気になるところだ。この2国はどうもお互いの親和性を感じているような気がするし、そこをどのように分断するのか、あるいは対峙していくのか。我々自由主義陣営として岐路に立たされていると思う。日本としても、まずは自分たちの国を自分たちの力で守るというところから出発しなければならない。自衛隊を強化するのが一番だと思う。
鈴木先生がおっしゃった通り、よく“矛と盾”、“盾と矛”と言われていて、日本を守る盾は自衛隊だが、攻めてきた相手に後ろから槍を投げてくれるのがアメリカなんだとういうつくりで今までずっと来ているわけだ。日本の防衛力は、来た武力に対して、これを払いのける力は十分にある。だからこそ、その元となっている港や基地に対する攻撃を封じ込めていかなければならない。それが今回の防衛戦略、国家安全保障戦略の改定において敵基地反撃能力を持たないといけないという議論に繋がってくる。やはり敵の基地に対する反撃に関しては自衛の範囲内であるというのが、昭和31年の国会答弁以来の政府の見解だ。とにかく一般市民を巻き添えにすることなく、敵のミサイル基地などの軍事施設、あるいは中枢だけを攻撃する能力を構築しようということだ。
一方で、“核共有”については日本にはそぐわないなというのが、自民党内でも議論した結果、大勢を占めた。ほぼ全員がそういう意見だった。やはり核を置いた時点で攻撃対象になるということ、住民の皆さんも不安になるということ、さらには太平洋上から発射してもらった方が早いわけで、日本が核を持つことには実益がない。また、唯一の被爆国として核兵器廃絶を先導する責務があるわけで、ダブルスタンダードかもしれないが、その理想や夢は絶対に捨ててはならない。だからこそ、“拡大抑止”をどうするかというところに論点が移っていくと思う。いわゆるアメリカの“核の傘”との連携ということだが、これが事務レベルでの協議にとどまっていて、閣僚レベルでの政治責任には至っていない。もしものときにはアメリカが太平洋上等から敵基地に対して反撃するという手順の確認、精緻化をしなければならないという議論が進んでいる」。(『ABEMA Prime』より)
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