第2、第3の『ドライブ・マイ・カー』は生まれるのか? “製作委員会方式”や“しがらみ”と日本映画界
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 27日、滝口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が第94回アカデミー賞で「国際長編映画賞」を受賞した。邦画が同賞を受賞したのは滝田洋二郎監督の『おくりびと』(2009年)以来のことだ。

 かつて世界的に評価の高い監督や作品を輩出してきた日本映画界。しかし『ドライブ・マイ・カー』の製作費は推定で1億数千万円と、他部門の受賞作と比べ差は歴然としている。

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■“製作委員会方式”の問題もある

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 28日の『ABEMA Prime』に出演した、東京国際映画祭の事務局長も務めた元経産官僚の境真良・iU准教授は「日本の場合、“製作委員会方式”と呼ばれる仕組みの問題もある。つまり劇場で公開し、後でテレビ放送したり、DVDで出したりする。最近で言えば配信だ。その使用料を“投資”と捉えて出してもらうようにビジネスモデルが設計されているので、製作の前から予算規模が見えてしまう。また、公開されるスクリーンの数を確保したいという気持ちから、配給会社と先に連携をしたいという気持ちを強めてしまう。だから仕組み的には安定しているが、大きいお金を集めようというチャレンジが成功するのは難しい」と話す。

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 「その点、海外ではギャラだけでなく、脚本にかける予算も違う。日本では一人に任せてしまうが、アメリカでは“どうもうまくいかないな”とプロデューサーが感じると、権利を買い取って別の脚本家に“直してみて”となる。そうやって時間とお金、多くの人を使いながら面白くしている。そして、そのための資金をプロデューサーが責任を負って金融機関から調達し、“投資プロジェクト”として作品を作っていくことも特徴だろう。

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 そうした背景には、自国だけでリクープ(費用を回収)する必要がないというアメリカの強さもある。世界中に流通網があるので、日本、あるいは中国ではウケればいいということで、自国でウケない可能性も踏まえた一種の“ポートフォリオ”を組んでいる。いわば、“失敗しても破産すればいいかな”くらいのベンチャー的な勢いでやっているということだ。その点、日本の作品で言えばアニメのジャンルは評価が上がってきているし、お金も集まるようにはなってきている」。

■産業としてのパイを増やさなきゃいけない

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 アジアの国々に目を向けると、一昨年にはポン・ジュノ監督による韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が大きな評価を得て監督賞、脚本賞など4冠を制覇。去年も中国出身のクロエ・ジャオ監督によるアメリカ映画『ノマドランド』が監督賞を受賞、話題となった。こうしたことから、作品や人材の海外展開を積極的に推進してきた韓国などと日本映画界を比較し、今後を憂うる意見は少なくない。

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 境氏は「韓国については、どうしてああなったかということを考えるべきだろう。1997年の経済危機後、ほとんどの映画会社が潰れてしまう中、韓国の映画を上映しないとハリウッドの映画を上映できないという“スクリーンクォータ制度”があったこともあり、アメリカで映画を学んでいた人材が帰国、作品を制作していった。それらが日本やアメリカでウケれば、規模の小さな韓国市場の倍、3倍の収益が入ってくるわけで、いかに海外で売るかというところにフォーカスをしてリファインしていったということだ」と説明。

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 「だから日本映画も産業としてのパイを増やさなきゃいけないと思っているし、海外市場を攻略する練習をしないと次には進めない。今もアートっぽい作品であれば文化庁系の助成もあるし、経産省も海外でのプロモーションや商談会、ローカライゼーションの支援も行っている。ただ、韓国のように海外市場に向けて作っていく部分については、まだ支援から漏れているように思う。そのためにも、投資をしやすい環境づくりが必要だ。映画は技術開発のようなものなので、そこへの投資は減税するくらいの勢いで資金が集まるようにしてほしい」と訴えた。

■色んな“しがらみ”が入っちゃって…

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 多くの映画作品に出演歴のあるカンニング竹山は「『ドライブ・マイ・カー』のスタッフに知り合いがいるが、スタッフが本当に長距離の“ドライブ”していたようで、大変だねという感じのロケだったようだ」とコメント。

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 「日本映画は素晴らしいと思うし、役者さんにも制作にも素晴らしい人はめちゃくちゃいる。でもNetflixに行った方がお金もあるし、というのが現状だ。やっぱり日本は映画を作るシステムが世界向けにはなっていない。テレビ局と一緒で、10代、20代の若い子たちをターゲットにした作品をバンバン作っているし、配給会社によって予算も全然違うし、弁当や支度部屋も全然違う。

 そして大きな映画会社で大作を作ろうとなればなるほど、監督が”こうしたい”と言っても、“この俳優はあの作品でスベったからダメだ”とか、“客を呼ぶにはこっちを使え”と言われたり、“今回、主題歌はこのアーティストにしたい”と言われたり。そういう色んな“しがらみ”が入っちゃって、結局でき上がったのはこうでした、みたいな。そういうものを一度取り除かないと難しいと思う」。

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 また、ドキュメンタリー映画の監督作品もあるジャーナリストの堀潤氏は「UCLAで映画の授業を受けたことがあるが、映画監督とマーケティングや、中国の投資家からどうやって資金を集めるのか、といったディスカッションを真剣にやっていて、とてもおもしろかった。また、韓国の映画会社を取材した時に感じたのは、俳優から制作まで、自分たちで育成するという仕組みが残っていること。そこに財閥をはじめとした投資家が投資する。あるいは日本のジェトロ(日本貿易振興機構)にあたる機関に行くと、国家として他国の政府としっかり交渉してからエンターテイメント市場に乗り出す戦略性があると感じた」と振り返る。

 その上で堀氏は「一方で、アメリカのアカデミー賞の結果だけをもって、日本映画の衰退だとしてしまうのはどうだろうか。世界中には本当に多彩な映画祭があって、日本の作品が受賞している。それはドキュメンタリーもアニメもそうだ。むしろ、作品の楽しみ方が増えていけばいいと思う」とも話していた。(『ABEMA Prime』より)

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