今月27日、東京・お台場では、最終日の「ヴィーナスフォート」を訪れようと、開店を待つ人で長蛇の列ができていた。
先頭に並んでいた大学生は、来場の理由について「自転車で埼玉から来ました。やっぱり最終日なので、何度も来ていたので、最後に景色見たいなと。中も綺麗なので!」と語った。
そして、午前11時。スタッフによる開店のアナウンスとともに「ヴィーナスフォート」の最後の1日が始まった。
オープン当時から話題を呼んだ、中世ヨーロッパの街並みを再現した内装。中でも、多くの客が集まるのは、メインスポットの「噴水広場」だ。中央の噴水を見上げる客の中には、寂しさを訴える人の姿も。
女性客「オープン時から来てました。さみしいですよ。なんか思い出しちゃって……。今日は綺麗なので楽しんで帰りたいです」
ヴィーナスフォートは、まだ周辺にほとんど施設がなかった1999年に開業。「非日常な体験」を売りに、お台場の発展を見届けてきた。22年間で訪れた人は、約2億人に及ぶという。オープン当時を知る初代館長は、22年の歴史についてこう語る。
初代館長・荒川信雄 特任執行役員「(開業当初)不安というよりは『やってやるぞ。絶対この街を変えていこう、皆で!』という意気込みでした。あれから22年、二十歳のお客様が42歳ですから…。お子様を連れてベビーカーで、家族でいらしていただいて。出会いがヴィーナスフォートで、(ここで)プロポーズをしたお客さんも沢山いらっしゃる」
長年働いてきた人も、寂しい思いを抱えていた。12年近くクレープ店「モミ&トイズ」の店長を務めた篠崎雄一店長(※篠崎の「崎」は「たつさき」が正式表記)。イベントに合わせたオリジナルメニューの考案や新しい業態の開発なども手がけた。12年間の思いについて、篠崎店長はこう話す。
「文化祭とか学祭を思い出すような、そんな気持ちで働いていた記憶がありますね。生活のほとんどをここでの仕事で占めています。なくなっちゃうっていうのは、心にぽかっと穴が空いたような、寂しい感じはあります」
「悔いのないよう最後まで。素敵なクレープを一つでも多く届けたい」そう話した篠崎店長は、最終日も続々と訪れる客に気持ちを込めて対応していた。来店客の中には、一緒に働いた仲間の姿もあり、篠崎店長たちへ、労いの言葉をかけた。
そして、あっという間に時は流れ…午後5時半。閉店時間となり、最後の客にクレープを手渡した篠崎店長が、業務終了直後の率直な気持ちを明かした。
「やっと走り切った。寂しいというよりも、満足した気持ち。今は達成感でいっぱいです」
全店舗の営業が終了し、いよいよ最後の時が近づいてきた。閉店セレモニーでは、館内で働いてきたスタッフが登壇し、来店客に別れを告げた。
「沢山の笑顔を届けてくださったお客様へ、本日はこの場を借りて心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました!!」
そして、午後6時半すぎ司会の挨拶ともにバルーンが飛び、ヴィーナスフォートは22年の歴史に幕を降ろした。最後の閉店作業を終え、セレモニーに駆けつけていた篠崎さん。閉館への思いを明かした。
「これで最後っていうのはやっぱり惜しく、もったいない気持ち。まだまだもっとクレープ作って渡したかったなっていう気持ちです。(閉館後は)ぜひとも面白い施設作ってもらって、そこで少しでも関われたら、それ以上に幸せなことはないかなと思います」
お台場では、去年9月から「大江戸温泉物語」が、今年8月には「チームラボボーダレス」などの目玉施設が閉館する予定だ。こうした各施設の跡地には、2025年をめどに多目的アリーナが開業。スポーツやコンサートの会場となることが決まっているが、その他の部分については今後、検討が進められる。
(『ABEMAヒルズ』より)
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