夏野剛氏「みんなが管理職になりたいと考えること自体がおかしい」上昇しない女性の管理職比率と日本の企業社会を考える
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 政府が「2020年までの30%達成」を掲げてきた女性の管理職比率。ところが昨年の段階でも8.9%(帝国データバンク調べ)と、目標にはほど遠いのが現状だ。そんな中、金融庁は男女別の賃金水準や女性の管理職比率などを有価証券報告書に記載することを企業に義務付ける方針を明らかにしている。

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 その一方、20~30代を対象にした博報堂キャリジョの意識調査によれば、「管理職・マネージャーになりたい」「ややなりたい」と答えた女性は全体の32%と、男性に比べて20%以上低いという結果が出ている。理由として挙げられているのは私生活との両立、あるいはロールモデルの不足などだ。

■「“やっぱり感覚違うんだね”と言われた」

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 新卒時代は昇進も視野に仕事に打ち込んでいたというあんりさん(30)の場合も、職場の女性管理職の多くがプライベートより仕事を優先する働き方をしており、出産・育児と両立させている人がいなかったことから、「自分には無理だ」と思ったと振り返る。

 「独身で“仕事命”みたいな方か、もしくは子どもが生まれても1カ月で戻ってきてしまうぐらい“仕事好き”みたいな人しかいない。管理職になれば夜11時頃まで対応が入ってしまったり、家族で旅行に行っても、なんだかんだ作業をしていたり。そこまでしてなる意味はあるのかなと」。

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 遅い時間の勤務も多い学習塾業界で働くハルさん(39)の場合、一度は管理職のポジションに就いたものの、男性社員の多さや、ストレスを抱えたことから、「もう2度とやりたくないと思った」という。

 「“男社会”なので、ちょっと古い考えの方とかがいらっしゃって、“やっぱり感覚違うんだね”とか、“女がここまで上がってくるとこうなるんだな”みたいな感じのことを言われた。もともと“上に行きたい”という気持ちは無くて、現場で楽しく仕事ができればそれでいいと思っていたから…」。

■「“なりたい”と真っ直ぐに言える人はいないのかもしれない」

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 新卒で大手飲料メーカーに入社した白鳥舞さんの場合も、やはり出産・育児の経験を通じて「社内で偉くなるイメージが持てなかったり、自分には無理ではないかと思ってしまったりしてしまった」という。

 「リーダーになることに向けて…というお話が出てくるようになったのが30歳になる手前くらいだった。子どもが保育園に通っていた頃でもあり、やりがいを感じなくなったとか、やる気がなくなったことではなく、仕事に対する考え方、プライオリティが変わってきていた。

 一方、管理職の方々を見ると男性が多く、残業ありきの働き方になっていたし、女性の方も仕事に時間を割ける家庭環境だったり、めちゃめちゃ優秀で人間ができていたりということが多かった。すごいな、ステキだなと思う一方で、スーパーウーマンでないとなれないのかな、ちょっと自分には難しいかなと感じ、“身を引いた”という感覚だった」。

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 その後、大手人材会社に転職。すると、管理職を目指す気持ちが少しずつ出てきたのだという。
 
 「私自身、出世しようという欲があるというよりは、楽しいからとか、社会貢献できている感じがするとか、成長できる感じがするとか、そういうところにやりがいを感じる。それでも女性の管理職の方がたくさんいらっしゃるので、“あれ?できるんじゃない”とイメージが湧くようになったし、組織としても対応できる体制ができていたので、“ここならなれるかもしれない”と。

 やっぱり家庭のことは女性がやるのが当たり前、という社会だし、結果的に仕事に時間をかけられるから男性の方がアウトプットも出しやすく、評価されやすい。だから上に行きやすい。むしろ男性だったら“上がらないとおかしい”というか、そういうレールが出来上がっていると思う。一方、女性は頑張っても評価されづらいところがある。そういうことで悩んでいる人が多くて、“なりたい”と真っ直ぐに言える人はいないのかもしれない」。

■「みんなが管理職になりたいと考えること自体がおかしい」

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 白鳥さんのような女性に向けて、キャリアアップを支援する“メンターのマッチング事業”を展開しているのが、Mentor Forの池原真佐子代表だ。「もちろん社内のポジションが上がれば権限も責任も大きくなってお給料も上がることにはなるが、やはり適材適所で正当に評価をされる、かつ、教育の機会が男女差なくあることが大切だと思う。そこで私たちは社外のロールモデルを一つのヒントにしていただき、その方が社内でメンターになっていくような道筋を作っていきたいと考えた」と話す。

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 また、KADOKAWA社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「僕は管理職になりたくないという女性たちの感覚の方が普通なのではないかと思う。子育てや家庭にいる時間の方が会社にいる時間よりも大事だというのが、人間として当たり前の感覚ではないか。それを捨てて“会社のために!”と言っている男性の方が古いのであって、むしろそういう意識を改革した方がいいと思う」と問題提起。

 「今の日本社会では、例えば役員になれるのは40代後半以降なので、その世代の女性社員が少ないという問題もある。でも20代、30代になると共働き世帯も多いし、“男が背負うもの”なんて意識もない。もっと言えば、“管理職にならないとダメだ”みたいな感覚も、昭和の時代のものだ。うちの会社の場合、チームで勝負したい管理職のコースとは別に、個人の成果で勝負したい人向けのプロフェッショナル職コースを用意しているが、みんなが管理職になりたいと考えること自体がおかしい。上に行く能力があるかどうかの問題だ。

 そもそも会社や職種によっても違うが、うちの会社の場合、採用してみた結果、新入社員の7割が女性になった。さらにコロナ禍でリモートワークになったので、家でテキパキ仕事をした方が良いという雰囲気になって、逆に会社に長くいるおじさんが“単に仕事できないだけじゃんみたい”になっている。だからママをやりながら他社で編集者をやっている女性が中途面接を結構受けにくる。会社を変えよう、変な会社を辞めよう。そして転職しよう。同じ会社に一生いる事を前提に議論することをやめよう」。(『ABEMA Prime』より)

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