ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻。激しさを増す攻撃によって町は破壊され、多くの市民が犠牲となり、ロシアに対する国際社会の批判の声は日を追うごとに高まっている。そんな中、ロシアの言語や文学、文化を研究する学術団体「日本ロシア文学会」は、大学生などに向けて『今の状況でロシアについて学ぶことの意味』を伝えるメッセージを発表した。
『ロシアの言葉・文学・文化を今、あるいはこれから学ぶ皆さんへ』という見出しから始まる約1300文字のメッセージ。そこに込められた思いについて、日本ロシア文学会・会長で京都大学の中村唯史教授はこう話す。
「大学生あるいは大学院生、それから今年大学一年生になる、これからその外国語を選択する人たちには『こんなことをする国の文学文化を学んでいいのか』という動揺があるんですね」
今回のロシアの軍事侵攻により、ロシアの言葉や文学を学ぶ、もしくは学ぼうとしている学生に広がる動揺や不安。ロシア文化に魅力を感じ、意欲を持って学んでいた学生が、遠ざかってしまうのではないだろうか。中村教授は「ロシアの文化を学ぶことは、ロシアの軍事侵攻を肯定することでは無い」と力強く訴え、こう続けた。
「ロシアの軍や政府がやっていることと、そのロシアの一般市民と、決して一緒にはしないでもらいたい。ロシアの文学や文化は、むしろ時代時代のその権力や体制が作り出してきた圧迫とか不条理に対して抗議の声を上げてきた伝統が強いんです。ですから、私たちの立場からすると、こういう状況が起きた時にこそ読んでもらいたいものであって、ロシアの文学や文化を今回の事態と一緒には見ないでもらいたい。むしろ、逆に考えてもらいたいんです」
日本ロシア文学会でも「あらゆる言語や文学や文化は、本来、国家から自律した営みです」とメッセージを発表。さらに中村教授は「このような状況下だからこそ、きちんとした知識と情報を持って考えることが重要であり、そこにロシアを学ぶ意味がある」と強調する。
「世界中で、ある意味ではロシアと言うものを“一括り”に排斥するような動きになっている気がします。ウクライナや地政学的にはロシアの圧迫を受けているという他の国々にも、ロシア人はたくさんいる。それから、ロシア人ではないものの、ロシア語を第一言語にしている人は沢山います」
「日本では、ロシアについての知識や情報が非常に欠如しています。ですから、今回のことをどのように評価するにせよ、それを現在進行形と捉えて、今起きていることを学んでほしい。そのために、ロシアの言語を直に学んで、ロシアの文学や文化について知っていただきたいです」(『ABEMAヒルズ』より)
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