まさかの奇襲を受けても跳ね返す強運を持っていた。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」のドラフト会議が4月2日に放送され、リーダーの一人・永瀬拓矢王座(29)は1巡目に増田康宏六段(24)を重複抽選の末に指名、2巡目には佐々木勇気七段(27)の重複抽選には敗れたが、斎藤明日斗五段(23)を指名した。過去2大会続けて選んでいた増田六段については、佐藤天彦九段(34)が奪いに来るという作戦を用いてきたが、くじでなんとか確保したことに「天彦さんに何か恨みを買ったかな」と大笑いすることになった。
団体戦となったABEMAトーナメントも今年で3回目。各リーダー棋士も、それぞれ独自の作戦を練り上げてきたが、永瀬王座には佐藤九段が指名をかぶせてくるという奇襲が待っていた。「かぶったらひと睨みきかせようと思ったんですが、今回の天彦さんの作戦が、自分のチームを分断しようというものだったとは。何か恨みでも買ったのかな。目立たないように暮らしているつもりではあるのですが(笑)」。過去に増田六段と佐藤九段は、同大会で何度も戦っており、永瀬王座にすればエース、佐藤九段にすれば天敵。それを引き抜こうとしたことに、楽しさから笑いがこらえきれなかった。
想定外の危機を、自分のくじ運で回避すると、今度は長い付き合いの佐々木七段を取りに行った。「形式上、行かないとよくないかなと」と、ここでもジョークを飛ばしたが、1巡目で取られてもおかしくない実力者が残っていたところ、獲得したかったのも本音。「くじで初めて負けたんですが、まあそんなもんですね」と、2連続でのくじを楽しんだ様子だった。
改めて2巡目で指名したのは斎藤五段。第3回大会にも出場した勢いのある若手だ。棋士仲間でもかわいがられるキャラクターではあるが、「うちのチームに入ってもらった以上は、遊びは禁止で。レーティングを100点上げてもらえるように。後輩なので、厳しく言わないといけないですね」と、早くも尻を叩いた。
このドラフト会議、永瀬王座はかなりレーティングを重要視していた。非公式ながら、現在の棋士の力を評価するレーティングは、棋士も参考にしている。各チームが出揃ったところで、レーティングの合計を計算したところ、「斎藤慎太郎さんのチームは、木村一基九段と佐々木勇気七段が入って最強かなと思ったんですが、うちと70点しか変わらなかったんですよ。だから明日斗君が100点上げれば逆転する」。優勝候補と目されるチーム斎藤と同程度になれば、永瀬王座として2度目の優勝にも、本格的に気合が入る。
第3回大会は優勝、第4回大会はベスト4。「今回は決勝まで行ければいいですね」と、目標は常に高い。頼りになる増田六段と、鍛えがいのある斎藤五段。全員20代で揃えたチーム永瀬は、今年も手強そうだ。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)