デビュー2年目の新鋭が、トップ棋士が揃う団体戦に挑戦だ。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」のエントリーチームを決めるトーナメントの模様が4月9日に放送され、関西ブロックでは冨田誠也四段(26)が勝ち抜き、本大会出場を決めた。2020年10月に四段昇段、まだプロになって2年足らずの若手だけに「自分が一番驚いています」と望外の結果にびっくり。同じ関西勢の2人とチームを結成し、一気にその名を広く将棋界に知らしめる時が来た。
昨年度いっぱいで引退となった師匠・小林健二九段(65)にも届くような朗報だ。関西将棋会館での対局に3連勝し、東京のスタジオで行われる準決勝に進んできた冨田四段。今まで見る側だった場所での対局に笑顔もこぼれていたが、対局では指し手が輝いた。準決勝では、大橋貴洸六段(29)と対戦。相手が居飛車で来るところ、後手番から得意の四間飛車で対抗形の将棋とした。大橋六段が工夫を見せた序盤にしたことで「あまりやられたことのない将棋だった」と困惑したが、ひるまず積極的に指したことで状況が好転した。「最初は無理気味だったと思ったんですけど、勢い重視で行きました」と振り返る内容で、120手で勝利を収めた。
続いて行われた決勝の相手は村田顕弘六段(35)。ここでも先手番から四間飛車を選ぶと、後手の村田六段から急戦を仕掛けられた。それでもこの一局でも慌てずに徐々にペースを掴むと、終盤に入ったところでは一気の寄せ。切れ味抜群の内容で、本大会の出場権を掴み取った。対局後には「自分が一番驚いています。実力的にも、自分が抜けるのは一番可能性としては低いかなと思っていました。そういう気持ちで上を見過ぎず、一つ一つやっていたのが、今回はうまくいきました」と語ると、フィッシャールールの練習を関西の先輩・糸谷哲郎八段(33)としてもらったことを明かし「今日も出る前に『最後まで絶対に諦めたらアカン』と言われていたので、ありがとうございましたと連絡したいです」と目尻を下げた。
本大会では予選Eリーグに入り、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)、渡辺明名人(棋王、37)といった将棋界の頂点にいる超一流棋士たちと戦う可能性も出てきた。未体験の超トップクラスの世界を体感し、さらに勝ち抜いて糸谷八段とは本戦で恩返し。これが冨田四段の次なる目標だ。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)