ウクライナの避難民支援のため、PKO法に基づき自衛隊輸送機を派遣する方向で最終調整に入っている日本。13日には改正自衛隊法が成立し、緊急時に自衛隊機で外国人だけの海外輸送も可能になるなど、柔軟な運用ができるようになった。
【映像】イラク特措法をめぐって“もみくちゃ”に…肩に乗って暴れる女性も(動画あり)※2:34ごろ〜
しかし15日、岸田総理大臣は国会で「現時点で自衛隊機の派遣について具体的に決まったことはない」「お答えできる段階にはないことは、ご理解いただきたいと思う」と発言。
2003年のイラク戦争では、イラク国民への人道支援を目的として、アメリカは日本に自衛隊派遣を要請。政府はイラク特措法を整備したが、当時「本当に戦闘の危険はないのか。確証がない」と野党が猛反対。最終的に強行採決となり、活動は非戦闘地域を限定に行われた。
たびたび議論になる自衛隊の活動内容。海外派遣とその役割は今後どこまで拡大するのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、元航空自衛隊の専門家と共に議論を行った。
■ 日本政府、ウクライナ避難民支援のため自衛隊輸送機を派遣へ
政府関係者によると、自衛隊機はポーランドをはじめとしたウクライナ周辺国に毛布や医薬品などを輸送するため、今月末にも出発する見通しだという。専門家はこの動きをどのように見ているのだろうか。
元航空自衛隊でアゴラ研究所フェロー・潮匡人氏は「輸送機の派遣はとりあえず、今できる選択肢の有力候補だと思う」と述べる。
一方で、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「単なるパフォーマンスじゃないのか」と発言。
「日本仕様の防弾チョッキやテントをいきなりウクライナに送ったとして『これどうやって使うの?』となるのでは。それなら最初からウクライナに送金すれば、こんなに法律をどうこうとやる必要がない。ウクライナ軍が採用している工場に日本がお金を払って、ウクライナに送ってもらえばいい。日本人に『自衛隊はこんなことをしていますよ』といったパフォーマンスを見せるためにやっていると僕は思う。時間がかかる云々言わずに、早くやりたいならさっさとお金を送ればいい」
潮氏は「パフォーマンスのような政治的側面がゼロだとはもちろん思わない。お金だけ送れば良いという意見は従来から根強くある」とした上で、湾岸戦争で日本が多国籍軍に送った約130億ドルの支援に言及する。
「実際の是非はさておき、日本は湾岸戦争で130億ドルを超える貢献をしたにも関わらず、感謝されることもなく終わった。日本の当時の対応はまさに英語で『Too little, too late.(少なすぎて遅すぎる)』と批判されたわけだ。これが日本政府のトラウマになって、その後の法整備をするきっかけの1つにもなった。日本政府は湾岸戦争のトラウマを繰り返したくない」
潮氏の説明に、ひろゆき氏は「今、日本がやっていることは、“折り鶴”を送ることに近い」と話す。
「効率性を考えるとマイナスではないか。助けたい、早くしたいのであれば金を送れよという話。毛布だったり食料なんて、フランスの方がよっぽど近いし、スーパーなんていくらでも開いているし、ポーランドも開いているので、そこで買って持っていけば、わざわざ日本から持っていく必要はない。防弾チョッキもテントもそうだ。実際、ウクライナの現場で本当にテントや防弾チョッキが必要なのか分からない。だから、お金を渡して『現地で必要なものを調達してください、これは日本がやりましたよ』と。自衛隊は、海外で本当に兵隊が欲しいときに送れるようにする法整備は必要だと思う。でも現段階は、そのパフォーマンスをやる必要はない。だって“折り鶴”だから。『なんとか自衛隊を行かせたい』が目的化してしまっているので、日本のやり方はパフォーマンスと“折り鶴”だと思う」
ひろゆき氏の指摘に潮氏は「一応自衛隊と呼ばれているが、国際的には事実上の軍隊だ。軍用機の受け入れをそんな簡単に決められる国は世界中で多くない。想定されている輸送機では、どこかで降りて給油できる場所などを作ったりする必要がある。整備が必要だ」とコメント。
ひろゆき氏が「だからそんなことをやる必要はない。お金を送って、現地のウクライナの人に買ってもらえばいい。軍用機で行かないで『必要なものはこのお金で買ってください』で済む。軍用機を送るパフォーマンスが目的だから、こうなってしまうのではないか」というと、潮氏は「だからそれはお金を払って終わらせるということだ。それを湾岸戦争でやってどうなったか。思い出していただきたい」と語気を強めた。
ここで元経産官僚の宇佐美典也氏が「湾岸戦争でどうなったか思い出してくれというのは、まさに日本の都合だ」と発言。「湾岸戦争ではお金を送って感謝されなかった。今回は感謝されたいから(物資を)送ろうと言っているだけだ」と述べた。
宇佐美氏の意見に潮氏は「感謝されたいよりも、日本や周辺の安全保障を考える上で、この態度を今後も国際社会の中で貫くのか。それが一番の問題だ」とコメント。宇佐美氏は「ちゃんと『日本のために送る』と言わなくてはダメだと思う。世界に対して、ウクライナ支援に参加したというパフォーマンスが日本にとって必要だからやると言ってくれれば、納得できる。ただ『ウクライナのために』と言われると、それはひろゆきさんのおっしゃる通りだ」と話した。
その後の議論を振り返るコーナーでは、宇佐美氏は「岸田総理の策略にはまっている感じがする」とした上で「日本の制度として国民の代表が議論するのは国会だ。国会で議論すべきなのに、それをしないで裏でネゴ(交渉)で決める流れになってしまっている。それに興味を示さなくてもよくなっているのが日本なので、だからじわじわと裏で物事が進んでいる」と危機感を示した。
一方で、ひろゆき氏は「みんなでこういう番組で『自衛隊派遣していいのではないか』という結論になると、わりと他のメディアも『自衛隊派遣できるようにしましょうよ』と増えてくる。すると、それを見た人や政治家が『じゃあ自衛隊派遣の法案を作っても大丈夫なんじゃない?』と、空気づくりになっていくようになると思う」と述べた。
2015年の平和安全法制の整備では、日本の武力攻撃以外でも外国同士の紛争や武力衝突に対し出動が可能になるなど、活動内容と範囲が強化された自衛隊。今回のウクライナ支援で、どのような活動を行うのか、引き続き議論が求められている。(「ABEMA Prime」より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側