プロレスリング・ノアは4月29&30日の両国国技館2連戦を前に、今後に向けての新戦略として①音楽レーベル/マネジメント事業を手掛ける株式会社A-Sketchとの業務提携②メキシコ『闘龍門CASA』への選手派遣③拳王のYouTubeチャンネル開設を発表した。

 今回、業務提携した株式会社A-Sketchは、大手芸能プロダクション、アミューズグループのレコード会社及びアーティストのマネジメント業務会社。会見に出席した相馬信之代表取締役社長は過去にサザンオールスターズのチーフマネージャーを務め、2016年1月に新日本プロレスとアミューズが業務提携した時には同社の常務取締役だった人物だ。

 ノアの武田有弘取締役が「プロレス業界1位、プロレス団体国内1位を目指していく中で、団体としての知名度もレスラーの知名度も圧倒的に足りていない。LIVE配信しているABEMA、WRESTLE UNIVERSEも目標数字に達していないので」と、相馬社長に相談したことから今回の業務提携に至ったという。

 ノアの選手が芸能関係のテレビ番組に出演するなど、他のジャンルで活躍するイメージは、創始者・三沢光晴の時代からなかった。しかし、プロレス業界のトップを走る新日本は、老舗というブランド力はもちろんのこと、常に対世間を意識して、メディアミックスによって世間一般に浸透したのは揺るぎない事実。「新日本に追いつけ、追い越せ!」で業界トップを目指すノアにしても、今回の芸能関係との業務提携で新しいプロレスの在り方を模索していくことになる。

 この会見に出席したのが25歳の新時代のエース、清宮海斗だったこともポイントだ。プロレスには昔からのコアなファンが多いが、この先を考えると若いファンを取り込んでいくことが重要。まだ世間一般では名前が浸透しているとは言い難い清宮らの若い選手が様々なジャンルでキャラクターを発揮してノアにファンを呼び込んでいくことが未来につながる。清宮自身「自分が先頭に立って、日本一有名なレスラーになります」と意欲的だ。

 相馬社長は「無理に芸能活動に押し込んだり、彼らに不釣り合いなことをやらせるのではなく、選手それぞれの魅力、個性をよりよい形で広め、高めていくサポートをしたい」とコメント。新日本での経験があるだけに、そこは心配ないだろう。

 そして、この業務提携でもうひとつ大きいポイントは、A-sketchを通じて各地のコンサート・プロモーターのサポートを受けて地方大会を強化できることだ。会場の手配、その土地での人脈及び地元メディアとのつながり、大会に向けてのプロモーションのノウハウなど、コンサート・プロモーターのバックアップは大きな力になる。

 もちろん一番大切なのは、選手たちが魅力的であること。「俺が一番に売れるっていう気概が凄く大事。それをメッセージとして会場、リング…その外に向けて発信するエネルギーがまだまだ足りないのではないか。清宮選手を中心に、その辺のメッセージとエネルギーをさらにパワーアップさせていただいて、発信していっていただきたい」と相馬社長。新たな戦略を展開するに際して、選手たちの意識改革も重要になってくる。

 2つ目の『闘龍門CASA』だが、これは1997年春にメキシコ・ナウカルパンでプロレスラー養成学校『闘龍門』を開校して多くの一流選手を輩出したウルティモ・ドラゴンがドラゴンゲートとノアの若手選手の海外修行の拠点として提供するもの。CASA(カーサ)とはスペイン語で「家」を意味し、この『闘龍門CASA』はウルティモが『闘龍門』の合宿所を2団体に貸し出す。ドラゴンゲートとノアというカラーが違う選手がメキシコの地で同じ釜の飯を食べるというシチュエーションも新鮮だ。

 あくまでも2団体の選手の海外修行のための拠点であり、ウルティモは「現時点では、自分が直接指導することは多分ないと思います」と言うが、その一方では「あとはタイミング。“もし、こいつは”って思った選手がいればそうするかもしれないし、そういう選手が現れれば、自分の遠征先に連れて行ったりとか、そういうことが起こるんじゃないかな」とも言う。元々、ウルティモは手取り足取り教えるのではなく、基本を教えたら「あとは実戦で覚えろ」というタイプで、1期生のCIMA、マグナムTOKYO、ドン・フジイ、ノア・ジュニアで活躍したSUWAは入門1ヵ月でデビューさせられている。

『闘龍門CASA』はプロレスラー養成学校ではなく、すでにデビューしている選手が派遣されるので、あとはウルティモの人脈で世界に進出するチャンスを掴めるかは本人次第。新日本でIWGP世界ヘビー級王者に君臨するオカダ・カズチカはウルティモのパートナーとしてカナダに同行し、そこで獣神サンダー・ライガーの目に留まったことが新日本行きのきっかけになった。現在はノアの金剛に所属する大原はじめは。ウルティモとヨーロッパをサーキットしながら職人肌の技術を身に付けている。第1弾として誰が『闘龍門CASA』に派遣されるか注目だ。

 そして最後は拳王のYouTubeチャンネルの開設。リング上、試合後のコメントブース、各媒体でのインタビュー、週刊プロレスの連載『拳王のクソヤローども俺について来い!!』で舌鋒鋭く話題を提供し、発信力に定評のある拳王。だが、本人は「様々な取材をされて、フタを開けてみると、大人の事情でモミ消されていることがあるんだよ。そういうのを俺の言葉でクソヤローどもに届けたい」と言う。「暴露系ユーチューバーになるのか?」という質問には「そういうカテゴリーに入れるんじゃねぇよ。『拳王チャンネル』は俺がルールだ。俺がすべてだ」と否定したが、歯に衣着せぬ激しい内容になるのは間違いない。
拳王が打倒を目指しているのは登録者数2340万人のインターネットセレブリティであり、ボクシングで世界5階級制覇のフロイド・メイウェザー・ジュニアとエキシビションマッチで対戦を実現させたボクサーでもあるローガン・ポールだとか。初回は4月15日の18時から。心して観ようではないか!

文/小佐野景浩