日本企業は自社の“社内政治”に特化した管理職を養成しがち? 仕事と調整能力を考える
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 日本経済新聞が配信した記事『社内政治は「悪」なのか』。京都大学大学院の若林直樹教授(ネットワーク組織論)による連載コラムで、どのような人が“社内政治”に強く、また、“社内政治”による方針決定にはどのようなデメリットがあるのか分析。その一方、海外の事例から、うまく活用することで対立を解消し、業績を伸ばすチャンスにつながるとも指摘している。

【映像】社内政治は"悪"?仕事と調整能力を考える 地位と給料の乖離も 必要な能力は?

 入社から3週間が経った新社会人にとっては気になる“社内政治”について、改めて『ABEMA Prime』が話を聞いた。

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 “社内政治”について若林教授は「どうしても個人の被害に焦点があたりがちだが、組織の中においてそれぞれが自分の利益、やりたいことを通したいとなると、残念ながらコンフリクトや“権力ゲーム”は起きてくる。それが世の中で言われる“社内政治”だが、やはり管理職は物事を調整して上手くまとめ、社内に世論を作っていく能力が必要だ。だから我々のビジネススクールでも、組織の運営の仕方について教えている」と話す。

 その一方、「地位が上がればそうした政治力が強くなるということも確かだが、それはあまり事業に変化のない古いビジネスをしている組織の話だとも言える。権力の源泉はそれだけではない。カリスマ的な能力や、難しい状況の中で機敏に対応する能力も必要だ。新たな技術開発、新たな分野へのチャレンジが必要な組織であれば、単に社内政治による“椅子取りゲーム”だけで終わるわけではないだろう。

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 やはり調整能力ばかりの人は地位が高くなっても、実は給料は高くならないということが:国際的な研究でも明らかになってきている。先日もある半導体企業の研修で話をしたのだが、“自分には調整能力がないから…”とおっしゃっていた管理職の方もいた。しかし、今の立場があるのは事業を引っ張ってきたからだし、実は調整能力は後からついてくると思った方がいいのではないかと答えた。非常に大企業はともかく、むしろ調整能力だけでは正直言って仕事にはならないかなという気がしている」。

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 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「日本で“政治”というと、なんだかドロドロした良くないものだというイメージがあるが、みんなドラマの見すぎではないか(笑)。確かに、カルロス・ゴーンさんの話などは、検察まで巻き込んだ日産の社内政治の結果で、完全に悪い意味の“政治”だ。ただ、英語で“Politics”というとそんなに悪い意味ではないし、現実に対処する一つの技というか、合理的な動きというニュアンスが強い」と指摘。

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 若林教授も「社内政治の議論というのは、やはり弊害の話から始まっている。派閥があって、どこに付くのかというのは社員にとってはすごく大きな問題だろうし、やはり嫌なもの、ストレスが溜まるものだからだ。しかし現実の経営状況としては、イノベーションを生み出し、新しい事業を作らなければいけない。そのためには、社員にアントレプレナーシップが要求されている。

 テレビ朝日がそうだとは言わないが、古い会社であれば事業の再構築、主力事業の変更といったことも必要になってくる。そうなれば、やはり社内の対立やコンフリクトが当たり前のように起きてくる。人間社会の話だから、いがみ合いも起きてくる。そういう中で、まさに、自分が10取ってしまうと向こうが怒る、だから8:2とか7:3になるように調整をした方がいいのではないか、という感覚を持っていた方がいい、ということだと思う」。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「僕がいた頃の新聞社の派閥争いは壮絶だった。それが2000年代になって昔の上司に聞いてみたところ、“佐々木君、あの頃みたいな派閥争いはもうないよ”と言われた。つまり、上向きの会社ほど、そういうことも起きるのだと思う。そして、野球のプレーヤーとマネージャー(監督)の構造と似ていると感じた。日本企業はジェネラリストの社員を育成したがるので、専門職よりも、管理職をやらせてしまう。最近の30代、40代の中には、それが嫌で転職する人もいると思う。

 そう考えると、マネージャーや管理職として部下の育成や人間関係の調整を行う職種と、それ以外の職種というふうに分けて、育成をするようにすれば、気持ちよく仕事ができる人も増えるのではないか。ただし、あまりにも社内調整に特化して能力を高めてしまうと、その会社にしか適合できない人になってしまう可能性がある。つまり、“あの常務に言う時にはその前にこっちの専務に言っておかないと…”みたいな社内の人間関係にばかり詳しくなり、頭の中がそれで構成されてしまうということだ。いかにシステマティックに管理職になりうる人材を養成するか、という問題も出てくると思う」。(『ABEMA Prime』より)

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