約4万人の日本人が暮らす中国・上海市では、ロックダウンの影響で、食料に加え飲料水やおむつ、トイレットペーパーといった日用品が手に入りにくい状況が続いている。
ロックダウンから2週間が経過した14日に、「たまったもんじゃない」と当時の状況を説明したANN上海支局の高橋大作支局長。そこからさらに1週間が経ち、上海はどのような状況になっているのか。高橋氏が「#上海のいま」というハッシュタグとともにSNSで集めた声を、現地から伝えた。
Q.前回の中継から1週間が経ち、現在の状況は?
私の地域でロックダウンが始まってから22日目(22日時点)になる。先週は本当に食料が底をつきかけて、実際に体重が落ちた時期もあった。今はかなり状況が改善して、私が住むマンションではお肉などが手に入るようになっている。
今日、3週間ぶりにマンション敷地内の屋上のようなスペースに行くことが許された。封鎖状態は続いているが、マンションの方が「住人の健康状態も考えて、ここの移動は許可してほしい」と政府と掛け合ってくれた。私も午前中、お昼過ぎ、夕方にそれぞれ1時間、時間を区切るかたちで陽の光を浴びることができた。太陽の光を浴びることが、こんなに心あたたまることなんだと心底感じて、周りを見ると涙ぐんでいる方もいらっしゃった。
上海市内には、食料がある人とない人、隔離が終わった人の一方で今日から始まった人など、本当にいろいろな状況の方がいる。自宅から基本出られない中、取材をしたいということで、18日からSNSで「#上海のいま」とつけて状況を伝えてほしいと呼びかけた。短期間ではあるが150件近くの書き込みが寄せられ、今日はそれを元に上海の現状をお伝えしたい。
Q.実際に「#上海のいま」で寄せられた声とは?
『ふりだしに戻りました』、これは近隣で陽性者が出たということだと思う。私自身も今週、冷凍食品のお肉が手に入ったので「よかった」というツイートをしてみたところ、逆に『今日私の冷蔵庫はなくなってしまいました』という方もいた。ネットスーパーでは、朝6時、7時、8時と、決まった時間に買えるタイミングがあって、その時間に買い物競争が行われている。映像では外で配給の品を奪い合うような激しいシーンが伝えられるが、オンライン上でもそういったことが行われている。
1つ紹介したいのが、『(羊)。。。(涙)』という絵文字2つのツイート。上海の方はすぐにピンとくるが、「羊」と同じ発音をする中国語に「ヨウ(こざとへんに日)」という漢字がある。このヨウは陽性の「陽」のことで、陽性という単語を使うことがちょっと怖いということで、「羊」の絵文字や字で陽性者が出たことを表している。つまり、先ほどのツイートは「近隣で陽性者が出てしまい、また1日目から隔離がスタートする」ということを意味している。
食料の手に入れ方としては、先週もお伝えしたが「団体購入」という方法がある。同じマンション、住宅区の住人と一緒に団体で購入するものだが、それを取りまとめる「団長」というのがすごい。あらゆる能力が必要で、住民たちが何を欲しいかという「リサーチ」、その「告知」、販売店との「交渉」、SNS上での「集金」、届いた商品の「配送」。さらには、「アフターフォロー」も課されていて、例えば届いた商品が傷んでいた時、住人のクレームを受けて販売店と交渉したり、多めに買っておいて交換したりする団長もいる。団長を務めた人のSNS上の声として、『履歴書に書けるんじゃないか。それぐらいの経験をしているよ』というのもあった。
今も明日のために、あるいは来週のために団体購入に乗っておかないと、「もしかしたら冷蔵庫が空になるかもしれない」という恐怖を皆さん抱えている。私にDMを送ってくれた女性の方がいて、『私の家は配給もない地区で、住民も少ないので団体購入が成立しません』と。『本当に食料を手に入れることができないんです。皆さんの「あまらせている」という書き込みを見るのもつらくて。でも、こういう人もいるっていうことを伝えてほしい』と送ってくれた。両者が共存している状況だということを伝えたい。
Q.そのほか、「#上海のいま」に寄せられた声は?
常備薬がなくなってしまったという方がいる。『今1粒を半分に割って、毎日半分ずつ飲んでいます』という声もあった。そのツイートに返信するかたちで、『外出許可を取るために、領事館に電話したら政府と掛け合ってくれるよ』とか、『ここだったらお薬を手に入れることができるよ』という声も寄せられている。
先月にお子さんが生まれたばかりの日本人の女性の方からは、『子どものパスポートがまだ取れていない』と。パスポートがないとどうなるかというと、外国人が病院に行く時に敬遠されたりする自治体がある。また、検診も予防接種も受けられず、心配しているという話をうかがった。上海にある日本領事館を取材したところ、その女性を紹介してほしいということで、領事館の方が「こういう手続きをしてほしい」「このタクシーなら動いてくれる」ということを教え、女性は今ほっと胸をなでおろしている状況。ネット上では「日本の領事館はちゃんとしているのか」という声も渦巻いているが、個別の相談に対応できるように日夜全員体制で臨んでいるということだ。
日本から見ている上海と、上海で暮らしている人が見ている今の状況にはズレがある。喜劇王と呼ばれたチャップリンはかつて、「人生とは、近くで見れば悲劇であり、遠くから見れば喜劇である」という言葉を残した。あまりにも現実離れしたロックダウンで、遠くから見ると滑稽に見えるかもしれないが、こちらでは3週間以上も閉じ込められ、まさに悲劇的な生活を送っている方も大勢いる。そこに想像力を働かせた上で思いを馳せていただくか、「これをしてください」ということは私からは言えないが、できることを何らか考えた上で行動に移していただけたらと思う。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)