身体と心を拘束、望まない妊娠を繰り返させる“多産DV”の実態…8年で4人の子どもを出産した当事者女性に聞く
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 「嫌なら断ることもできたのではないか、という意見はごもっともだと思う。でも年齢的に若かったし、結婚してすぐだったこともあったし、“夫婦というのはそれが当たり前なのだ”という思い込みから、断るという選択肢があることに気が付かなかった」。

 あやかさん(仮名、40)が長女を出産したのは19歳のときのこと。しかしわずか8カ月後、2人目の子どもを妊娠してしまう。原因は、夫による性行為の強要。いわゆる“多産DV”だ。

【映像】「今苦しんでる人が気付ければ...」妊娠と出産で支配下に 多産DV被害女性の想い

■基本的には、ほぼ毎日。妊娠中も止むことはなく…」

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 「基本的には、ほぼ毎日。妊娠中も止むことはなく、産後も病院から帰って“大丈夫だった?”と言うが、その日からまた始まる。避妊も一度もしてもらったことはないし、子どもの夜泣きで疲れてるんじゃないか、といったことも全く考慮してくれない」。

 機嫌が悪くなると怒鳴ったり、物を投げたりしたという夫。直接的な暴力もあったといい、その矛先が子どもに向くのではないかという恐れから、断ることはできなかった。「断れば何をされるか分からないし、“自分が受け入れておけば…”という部分があった」。

 その結果、8年間で4人の妊娠・出産を繰り返した。それだけではない。2人目となる長男を産んだ2年後に妊娠が発覚した際には、夫の反対で中絶を余儀なくされた。「育てるのが大変だからというような、ありきたりな話をされた。私は”頑張るから産ませてほしい”と、最後は土下座のような形で頼み込んだが、今回は諦めざるを得ないということになった」

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 実はこの時、夫の浮気相手の妊娠も発覚したが、それでも夫を繋ぎ止めるしかなかった。「“妊娠させておく”という言い方は良くないが、女性は妊娠してしまうと自由に身動きが取れなくなるし、出産後は子育てに手がかかるので、身体的にも時間的にも簡単に支配できるということだと思う。でも、“浮気相手がいて、自分が求められなくなってしまったら…”と思うと怖かった」。

 しかし浮気相手との関係が終わったのか、再び身体を求められる日々が始まり、中絶手術からわずか3カ月後、再び妊娠。3人目を出産し、さらに3年後に4人目が産まれることになる。経済的な懸念や知識不足から、避妊するのは難しかったのだという。

■「“おせっかい”のような介入が必要だ」

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 産婦人科医でNPO法人「ティーンズサポート」理事長も務める清水なほみ医師は「多産の方=DVであるというわけではないし、逆に子どもが2人だからDVはないはずだ、というわけでもない」とした上で、次のように話す。

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 「やはり“私が我慢しさえすれば”という状態になっていたり、支配-被支配の関係から洗脳状態のようになっていたりすると、おかしい関係であるということに気づけない。そういう場合、専門家がお声がけをしたり、避妊の方法についてご説明するなど、私が“おせっかい”と呼ぶような介入が必要になってくる。

 例えば診療の現場で“これは変だぞ”という意識を向けるポイントとしては、短い期間で何人も産んでいらっしゃる場合、あるいは妊娠と妊娠の間に中絶が入っている場合、“産む・産まないの選択はどこでされているのか”とか“避妊はどのようになさっているか”と伺う。そこで“コンドームを使ってもらえないんです”というような発言があった場合、さらにお話を伺ったり、サポートが必要ではないかと水を向けたりするようにしている」。

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 現場は、様々な課題に直面する。

 「経済的に弁護士さんには相談しにくいという場合は、無料で相談できるところにお繋ぎすることになる。また、子宮内避妊具は4〜5万円がかかるので負担感は大きいと思うが、ピルは避妊目的で服用なさる場合でも自己負担は月2000円~3000円だ。そこはピルに対する情報が普及しにくい問題もあると思う。ただ、お手伝いしますよと手を差し伸べても、ご本人がそれを希望しない場合はやはり難しい。

 それでも、“どうにかしたい”という場合は、まずは“DVがある”ということをちゃんと証拠として残しておいてくださいと伝えている。そして、これは“子ども連れ去り”ではなく、身を守るために必要な措置であることをちゃんと言えるように、とお伝えしている。また、必要があれば診断書を書くといったサポートをしている」。

■「同じような悩みを抱えている女性の力になれたら」

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 結婚後、友人・知人や実家との関係がほぼ絶たれていたというあやかさん。保育園でも他の保護者とのコミュニケーションを取ることができず、周囲や公的機関に相談したことが夫にバレたら…との思いから、逃れることに踏ん切りがつかずにいたという。ところが夫の暴言が子どもたちに向かうようになり、ある時、主婦仲間との会話から異常さに気づき行政に相談、30歳で離婚を決断する。

 「それまでにも少しずつ調べたり、保育園や小学校の先生にも相談したり、水面下でちょっとずつ準備をしたりしていたが、最終的には行政の力も借りて、夫が仕事に行っている間に、子どもたちと一緒に逃げ込めるシェルターのような施設に逃げ込んだ。そして調停などもせず、離婚した」。

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 “元夫から逃げていたら、この子たちに会えていなかったんだな”との思いも拭えない。それでも、離婚するまで「多産DV」という言葉を知らなかったこと、同じような悩みを抱えている女性の力になれたら…と、取材に応じた理由を明かした。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「児童相談所でも、家庭裁判所でも、“もう回りません”という場面があると思う。介入をする第三者のマンパワーを増やすことが大切だ」と指摘。

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 実業家のハヤカワ五味氏は「昔付き合っていた人が“DV気質”だったことがあるが、学校教育も含めて、“これってDVだよね”という知識が広まれば、“もしかしたら今の私はヤバい状況にいるのかも”と気づける人も増えるのかもしれない。実際、Twitter上で自分と同じような体験をしている人の投稿を見て、“私の旦那じゃん”と気付く人もいると思う。それがもっと社会の中で起きていけばと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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