沖縄県出身、お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリ。来月15日に50周年を迎える沖縄の本土復帰記念日を前に自身初の小説を発売した。
戦後の沖縄を描いた、児童向け小説「海ヤカラ」。50年前、まだアメリカの統治下だった沖縄を舞台に主人公・ヤカラと仲間たちが、時代に翻弄されながら強く、たくましく生きる、青春の日々を描いた一冊だ。
「宙ぶらりんだった沖縄の時代があったというのを知ってもらうと同時に、沖縄の人がどうたくましく生きたかとか。楽しい物語とともに学んでくれたり、考えてくれたりしてくれたらいいなと思って書きました」
1972年5月22日、本土復帰から1週間後に生まれたゴリ。沖縄では、この年に生まれた人は「復帰っ子」と呼ばれている。沖縄出身者で作る舞台のプロデュースや映画の制作など、当時を経験していない「復帰っ子」にしかできないことがあると沖縄の魅力や歴史の発信を行ってきた。
軍人だけでなく、数万人もの市民の命を奪った沖縄戦。そして戦後、27年間に及んだアメリカによる統治。ゴリは、ふるさとが歩んできた歴史に触れながら約2年の年月を費やし、物語を完成させた。
「沖縄はこんなに大変でしたとか、こんなに辛い思いしましたというのだけを載せると、子どもは重すぎて読んでくれないと思うので、基本的に主人公の4人たちの青春であったり、甘い恋心であったり、エンターテインメントとして物語を作りました。そういう部分では、お笑いという世界にぼくも20数年入っているので、人の興味を惹きつける、楽しませるエンターテインメント性の培ってきたものは入れられたのかな、それが役立ったのかなと思います」
物語では、戦後の沖縄が抱えた”葛藤”も描かれている。その象徴が、日本とアメリカにルーツを持つ少年・マギイ。アメリカにルーツを持つという理由だけで、大人に罵声を浴びせられたり、暴力を受けるという場面も……。当時の沖縄では、彼のような子が、少なからず存在したという。
「ハーフの子どもは、別に何にも罪はないわけです。でも虐げられている反発心から、ハーフの子どもに対して、心無い言葉を浴びせる人も結構いたといいます。そういう部分の葛藤も描きたかったので、不公平な統治のされ方に反発心を抱く沖縄県民と統治する側のアメリカ、その間に挟まれたのがまさにマギイです」
そして、ゴリには本を通じてどうしても伝えたい思いがあった。それは、物語の中で主人公、ヤカラが放った「暴力だけではなにも解決しない」という一言。
「戦争とは、終戦したら全部が終わりではなくて、そのあと何十年もいろんな問題を残したりとか、戦争で親を亡くした人ももちろん生きている限り苦しみますし、戦争で逆に人を殺めてしまった人も、人を殺してしまったあの手の感触がいまだに残っているといって。その人たちの戦争は、終わらないのです。この本を読んだこれからの未来を作る子供たちが、暴力や殺し合いではなく、世界でうまい具合に仲良くやっていける方法が、何かないのかを考えてもらえたらと思います」
「争いのない世界にー。」物語に込められた島人の思い。未来を担う子どもたちが、本を読み、平和について考えるきっかけになれたらと期待を寄せる。
「全国の子どもに読んでもらって、沖縄のことは日本の問題でもありますし、日本の問題は沖縄も参加しなくてはいけない。考えるポイントになってくれたらと思います」
(『ABEMAヒルズ』より)
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