岸田総理大臣は8日間にわたって東南アジアとヨーロッパを歴訪し、各国首脳とウクライナ問題などの協議を行った。
【映像】一度に8隻も…沖縄本島を通過した中国の空母「遼寧」(1:50ごろ〜)
ロシアの力による現状変更を強く非難し、ウクライナ情勢を踏まえた台湾有事、中国による台湾侵攻に対して危機感を示した岸田総理。近年、台湾海峡周辺における中国の動きが活発化、ゴールデンウィーク中も空母「遼寧」を中心とする8隻の艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過し、太平洋に入った。
そんな中、関心が高まっているのは国境防衛の最前線、沖縄だ。近年、自衛隊は台湾有事などの懸念から、沖縄南西部の防衛力を強化。台湾までおよそ100kmの位置にある日本最西端の与那国島に駐屯地を開設するなど、警戒を強めている。
もう1つの大きな存在が米軍基地だ。ベトナム戦争や湾岸戦争では、沖縄が米軍の補給や中継基地として使われ、近年は北朝鮮や中国などを見据えたインド太平洋地域防衛の重要な拠点になっている。
一方で、現地では米軍基地に対する反対運動も根強い。日本にある米軍基地は、およそ7割が沖縄に集中。沖縄の主要メディアが基地反対の立場を示す中、石垣市を拠点とする『八重山日報』は近年の情勢を踏まえ、基地反対一辺倒に意義を唱えている。
台湾有事がささやかれる今、ニュース番組『ABEMA Prime』では、沖縄の米軍基地が果たす役割とリスクについて『八重山日報』の編集主幹・仲新城誠氏と共に考えた。
■ 米軍基地は必要? リスク? 『八重山日報』編集主幹・仲新城誠氏「台湾有事は“尖閣有事”だ」
米軍基地の必要性を説く声がある中、基地の存在によって攻撃対象になるリスクを指摘する声もある。これについて、仲新城氏は「沖縄はもともと軍事的、地理的な要衝(※軍事や通商などにおける大事な地点)になっている。米軍や自衛隊があろうがなかろうが、狙われるときは狙われる。現に自衛隊や米軍があることによって、直接的に攻撃されずに済んでいる面はあると思う」とコメント。
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は、冒頭にあった岸田総理の発言に「いつも通り、岸田総理は言うだけで何もしない。有事だ、緊張しているとか、注視しなきゃと言っているだけで相変わらず何もしない」と苦言を呈した。その上で、仲新城氏に「『基地があるから沖縄が狙われる』と言っている人たちは『基地がなかったら狙われない』という根拠はどこにあるのか」と質問した。
仲新城氏は「そう言っている人たちがどのように考えているか、私もよく分からない」と回答。「ただ“基地がない沖縄”は、ずっと昔から1つのスローガンとして語り継がれている。『基地がないほうが平和』という考え方が根強く存在する」と明かした。
これにひろゆき氏は「そう考えたいのは分かる。ただ、ウクライナは別にロシアを攻撃するための基地などは作っていなかった。けれど、いきなりロシアに殴り込まれた。『基地がなかったらウクライナは攻撃されていなかったのか?』と考えると、分かると思う」と意見。「中国は(沖縄に)基地があれば攻撃しないのか。かかっているのは人の命だ。命をかけて中国人を信じられるのか。その根拠が知りたい」と詰め寄った。
仲新城氏は「命をかけて中国を信じているとか、そういうことではない。沖縄戦の悲惨な経験から、1つの理想主義というか『非武装であることが平和』という理想主義の伝統が沖縄には長いことある」とコメント。
防衛省は陸上自衛隊を沖縄の八重山諸島に配備する方針を固めており、今は防衛関連の施設が作られている最中だ。仲新城氏は「石垣には米軍基地がないので、沖縄本島ほど反基地活動は盛んではない。沖縄本島と石垣との間で温度差はあると思う」とした上で「自衛隊の駐屯地を受け入れるかどうか、石垣市長選や市議会の選挙が今まで何度も繰り返されてきて、全て基地受け入れの方が勝っている。石垣島の人たちは基本的には自衛隊を受け入れている」と話す。
「今の国際情勢、台湾有事の可能性もいろいろ言われている。その中で有事に備えて、自衛隊の施設を作っていくことは、政府としては当然のやるべきことをやっているのではないか」との見方を示した仲新城氏。一方で、台湾有事の際に「台湾より先にその周辺にある沖縄の島が攻撃対象になってしまうのではないか?」という指摘があることに対して、仲新城氏はどのように考えているのか。
「石垣島にも与那国島にも空港や港湾という基本的なインフラがすべて揃っている。台湾を攻めるのであれば、逆に中国が(八重島諸島を)狙ってこない方が不思議だ。基地がなくても、狙われるのは間違いない。尖閣諸島は石垣市の行政区域だが、中国は『尖閣諸島は台湾の一部』と言い張っている。もし、台湾有事があれば、そのまま必然的に“尖閣有事”になる。尖閣有事は必然的に日本の有事になると思う」
ここでひろゆき氏が「尖閣(中国)と日本で、領土争いが必然的に発生するということか? ロシアのウクライナ侵攻のような対岸の火事ではなく、台湾に中国が攻めてきた時点で、日本と中国の領土争いが物理的に発生するということか?」と質問。仲新城氏は「そうなってもおかしくない状況だ」と答える。
仲新城氏は「自衛隊に関しては石垣島への配備をしっかりと進めてほしい」と訴えた上で「沖縄本島に関しては、また事情が違って、米軍基地の過重負担がずっと言われている。米軍基地の整理・縮小と、中国に対する備えのバランスをどのようにうまく取っていくのかが非常に悩ましい問題だ」と話す。
仲新城氏が記者になった約20年前は「中国の脅威に言及するだけでも右翼だと思われるくらい、中国に対する親近感が沖縄全体で強かった」という。続けて「ただ、今から10年前に尖閣諸島の国有化をきっかけにして中国は連日のように船を派遣してくるようになった。今では中国の船が尖閣周辺にいない日がないくらいの状況になっている。何度も侵入も繰り返されている中で、沖縄県民の中国に対する考え方は変わってきている」と述べた。
ひろゆき氏は「嘉手納基地も日本の自衛隊と米軍が共用で使う形になれば、米軍基地に対する“アレルギー”は減るということか?」と投げかけ。仲新城氏は「米軍がどうして嫌われているかというと、米軍の事件・事故が沖縄で起きているからだ。日米地位協定などによって、日本側が手を出せないことが多々ある。自衛隊は日本の組織なので、日本の法律の下にあって透明性がある。自衛隊の拡大は、沖縄県民もある程度理解している」という。
また『八重山日報』でも、沖縄におけるアメリカ軍基地の負担について言及されているが「米軍による事件・事故といった問題を減らし、自分の国は自分で守る」というスタンスを重要視しているのだろうか。
仲新城氏は「ある程度、沖縄を守る軍事力はどうしても必要だと思う。自衛隊が『自分の国は自分で守る』と。米軍はあくまでも補助的な役割に留まることが、今の沖縄にとっては望ましい」と話す。その上で「(米軍基地に)甘えてきた部分もあると思う。自分たちの国の安全保障をどのように考えるかに関して、真剣な論理を妨げてきた部分があるのではないか」と疑問を呈した。
ロシア軍のウクライナ侵攻によって、アメリカ軍に対する沖縄県民の思いに何か変化があったのだろうか。
仲新城氏は「ウクライナの侵攻があったからといって、米軍に対する好感度が沖縄県民の間で上がったとか、そういうことは特にないと思う。基本的に他国の軍隊が駐留していて、事件・事故が起き続けている状況が沖縄県民の間ではどうしても違和感を拭えない」と答える。
ひろゆき氏が「事件、事故を起こした人(米兵)が結局、裁判にならないでアメリカに帰っちゃって無罪みたいな状況になっている。これも、揉める原因の1つだ。別に日本人だろうとアメリカ人だろうと悪さをする人は必ずいる。何か事件が起こるのはしょうがないと思うが、納得できる形で裁判なり刑務所なりに(加害者が)行けば、多少その“アレルギー”は減るのではないか?」と質問すると、仲新城氏は「戦後、沖縄はアメリカ軍の統治下に長いことあり、苦しめられてきたという歴史もある。そう簡単に制度が変わったら米軍がウェルカムとなるかというと、そうではない」と話す。
ここでプロデューサー・慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏が「基地の補償、基地があることでお金をもらえているような地域に行くと、人によっては『この基地のおかげで生活が潤っている』という人もいる。ただ、そういった補償も、誰にどう補償するのかすごく難しく決められていて、恩恵を受ける人に偏りがあったりする。一方で、恩恵はないけどリスクだけある人がいたり。そのあたりの補償、手当、リスク回避みたいな取り決めがちゃんと見直されることで、不満も変わるのではないか」と投げかけ。仲新城氏は「基本的にはお金の問題だけではないと思う。他国の軍隊が自分たちの故郷に居座っていて、なおかつ、これだけの膨大な面積を占めていることに対する違和感は、どうしても拭えない」と答えた。
ウクライナ情勢を受け、懸念されている台湾有事。米軍基地の必要性とリスクについて、改めて考えていく必要がありそうだ。(『ABEMA Prime』より)
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