「結局、新しいことをやらないと今のメディアでトップライン(売上高)が伸びないのもわかっていたし、資金調達ができないとなかなかスケールできないというのもわかっていたので、何か新しいことにチャレンジする時期だよねというのは、周りの意見としてもあって、プロダクトやりたかったからそこを早めにチャレンジしようというフェーズだったので」
バッチバチのビジネス用語全開で過去を振り返るのは、美容業界で成長を続けるディネット株式会社の尾崎美紀代表。会社を立ち上げたのは、2017年、大学4年生のときだった。
美容に特化したメディアを運営し、2019年に立ち上げた独自のコスメブランドPHOEBE BEAUTY UPでヒット作が飛び出すなど、年商は17億円弱と右肩上がりだ。
「もともとプロダクト作りたかったのですが、いきなり大学生で起業して例えばリップとかいきなり作ったところで売れないというのは明確に分かっていたので、売れるコミュニティを作ろうと思っていました。それで自分の美容が好きで、あと何ができるだろうとなったときに、別に特別なスキルもない中で、例えばSNS運用だったらできそうというところから美容のメディアを立ち上げようと思って、そのメディアのエンゲージを高めることでファンのコミュニティが出来て、お客様の声を拾うことで、例えばプロダクト作る際にお客様の声を拾ってどういう商品が欲しいかとか、アンケート調査できるなというところで美容のメディアからスタートしています」
女性のライフスタイル全体を応援する会社を目指し、まず取り組んだのが美容メディア。SNSを中心に、ブランドのコミュニティを広げることが、自社の商品を発表した際に良い効果をもたらすという確かな狙いがあったという。
先を見据えた作戦は見事成功し、2019年に独自ブランドのまつ毛美容液を発売すると、これが大ヒット。大手のブランドではない生まれたてのベンチャー企業が美容業界で一躍脚光を浴びることになったのだ。
「まつ毛美容液というすごいニッチな市場から入っていますが、それを選んだ理由もベンチャーが数%取れれば数億シェアをとれるようなところしか狙わないというのを最初の方針で決めていて、そこである程度名前だったり、知名度を徐々に上げていくことでマスに挑戦できると思っていたので、そこの方針は初期から変わっていないです。銀行から融資がたまたま3000万円おりて、それを全部PBU(PHOEBE BEAUTY UP)に突っ込んでそれが無理だったらもうどうしようかなぐらいのレベルの時期だったので、これを当たらせるぞという気持ちでやっていました」
何事もリスクを気にせず、タイミングが合えばとにかくチャレンジするタイプだという尾崎さん。今年3月、第三者割当増資と融資による総額8億円の資金調達を実施したと発表し、更なる成長を目指す。
しかし、大きな目標を見据えたチャレンジに、ネット上では「偉い男性と寝たんでしょうねぇ」「パトロンのおかげでしょ」という反応が相次いだ。「若い女性経営者の成功には何か裏がある」という古い価値観に基づいた偏見と嫉妬。
「『起業するというのはこんなことだったの?』と思うぐらい経営1年目はオフィスとかなく、家を登記にしていましたので、携帯見ながらアプリで自分のメイクしている動画撮影して、編集して投稿するみたいな。ひたすらフォロワーを伸ばしていくっていうことをやり続けていて、その時期を知っている人からすると、考えられないようなコメントがたくさんあって、そこは本当に考え方がまだまだアップデートされていない人が多いなっていうところはすごい残念でした」
地道なSNS戦略から始まった、ディネット。「自分は東大・京大卒のようなエリートではない」と自負する尾崎さんは、何もないところからスタートする学生起業からの成長を体現しているのだ。
それでも、会社を経営する中で、女性経営者であることの壁を感じることが度々あったという。そんな社会の現状を打破すべく掲げている目標が「女性最年少社長での、新規株式公開=IPO」だ。
「例えば29歳で最年少IPO狙うっていうことが、当たり前になったとしたらわざわざそんな題名をつけなくても、みんなが『この人頑張ってるね』で終わるではないですか。そういう意味でも自分とか周りの女性経営者がもっと活躍をして、女性が成功するということに対して当たり前の社会を作るというところができるようになる方法は、私たちが頑張るしかないと思いました」
(『ABEMAヒルズ』より)
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