4月に新年度が始まり、ほっと一息つくタイミングのゴールデンウィーク。そんな大型連休が明けたこの時期に毎年危惧されるのが、環境の変化から来る「5月病」だ。
特に今年から働き始めた新入社員は、続々と配属先が決まり、いよいよ本格的に社会人としての生活が始まる時期でもある。しかし最近では、新人教育の改善などにより、若い世代では5月病の傾向が減ってきていると、新人・若手育成の手法に詳しいリクルートマネジメントソリューションズの桑原正義さんは分析する。
「昔ながらのいわゆる不条理な指示・命令、厳しい体験をいきなり経験させるのは、難しいと企業は学んできている。いわゆるミレニアル世代、Z世代の人たちがしっかりと適応していくための接し方のトレーニングを受けるなど、企業側が比較的育成を学習してきているというのが最近の特徴です」
さらに、コロナ禍でリモートでの仕事も増え、対面で発生する厳しい指導が減っていることも要因の1つとして挙げられるという。少子化が進む中、大切に育てられてきた印象も強いZ世代だが、かつての5月病のような新たな環境への戸惑いや、厳しい指導による心身の不調が起きにくい職場が増えてきている。その代わり、Z世代特有の“新たな5月病”的存在が確認されていると桑原さんは指摘する。
「新たに増えてきているのが、“配属ギャップ”。以前に比べて、Z世代の人たちは『自分自身がやりたいことは大切にしたい』という自分の中に考えをしっかりともって、社会に出てくるように変わってきている。一方で、企業はそういったやりたいことや、希望を全面的に受け入れて配属を決めるかというと決してそうではないと思う。以前に比べて、希望じゃない配属になったときのショックが、比較にならないくらい大きくなっているのは、私自身も自社で一緒に新人育成を人事とやっている中でもすごく感じている」
また、Z世代の特徴として、協調性や助け合いに長けている反面、自発性や自律性にやや不得意な傾向があるという。そんなZ世代の新人と社会人の先輩たちはどう接するべきなのだろうか。
「“安心空間”を作るというのが一つ。自発性は、本人たちは苦手意識を持っているが一人ひとり、1対1で聞いたり話していくと、ものすごいいろんな意見とか感想とかアイディアを持っている。ただ、『どういう反応をされるだろうか』と表に出すことにすごく抵抗感が出てきている。なので、そういったものを『気にしなくていいんだ』『表に出してもダメと思われはしないんだ』という空間を作ることが大事」
会社が求める正解を押し付けるのではなく、一人ひとりの自分らしさを認める“個の尊重”が若手の成長、ひいては企業の成長として大切なポイントになってくる。一方で、新入社員側も上司が考えていることを理解しようとするお互いの歩み寄りが大切だと桑原さんは話す。
「当然、今でも新しく出てきた新社会人は、まだまだビジネスとして足りないものがあるので、しっかり育てていきましょうと。一方、今は、世代の方が上司世代は持っていないプラス面をたくさん持っている世代。逆にZ世代から学ぶということも可能になってきている。よりフラットに協力し合うとすごく良いことが起こる関係になってきている。そういうような関係に変わってきていると思うので、フラットな感じで付き合っていくとどの世代ともいい協力関係が作れる」
日本企業が少しでも成長していくためには、現場の先輩や上司はこれまでの何を変え、何を残していくといいのだろうか。番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターでニュース解説YouTuberの石田健氏は、「5月病が減ってきているのは良いことだ」と述べつつ、「メンタルヘルスの問題に関してはまだまだ十分に科学されていないのでは」と話す。
「最近、コーチングの話をよく聞くようになったが、コーチングとカウンセリングの違いをまだわかっていない人が多い。全然違った意味だけど『なんとなく人のやる気を高めるものでしょ』といった理解かなと。なので、どうやってマネジメントしてやる気を上げさせるかという話と、それが切れてしまったときにどうやってケアしていくのか。それらは実は両軸でやらないといけないので改善の余地がある」
ではどうすればいいのだろうか。石田氏は「個人的には大きく3つある」と次のように見解を述べた。
「1つ目は、世代で価値観の違いがあるので、職務や期待することをしっかりと明確にすること。2つ目は、文章や動画などを使い、上司側の説明能力を高める。最後に3つ目は、ウェットなコミュニケーションを頑張る。上司と同僚という縦横の関係ではなく、斜めの関係を作り、コミュニケーションをとれるようにする。単純に価値観が違うからとか、5月病だからと理解するのではなく、問題が出たときにしっかり科学してあげていくことで、有耶無耶になっていたところが再現性高く問題解決できるのではないかと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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