不合格でも免許の有効期間中は運転可能 75歳以上の高齢ドライバーへの「技能検査」義務化が13日から 課題は?
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 今月13日から、一定の違反歴がある75歳以上のドライバーに、運転免許を更新する時の技能検査が義務化される。どんな検査が行われるのか、また課題などについて、テレビ朝日社会部・警視庁担当の藤原妃奈子記者が解説する。

【映像】警視庁による実車試験の説明の様子(5:52~)

Q.どんな人が対象になる?
 運転免許の更新時に75歳以上、かつ一定の違反歴がある人が対象となる。対象の違反の内容は、信号無視や速度違反、運転中の携帯電話の使用など、11の違反がある。これらの違反を、運転免許の有効期間が終了する日の直前の誕生日の160日前を起点として、その日から過去3年間にしていれば対象になる。

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 対象者には今月9日から随時、通知が始まっていて、通知を受け取った人は、自動車教習所や運転免許試験場に行って検査を受けることになる。警察庁によると、年間15万3000人が実車試験の対象となるという。

Q.どんな検査が行われる?
 時間は約10分間。試験場や教習所の1.2kmのコース内で、実際に車に乗って、一時停止はきちんとできているか、右折・左折時の安全確認ができているか、段差に乗り上げてしまった時に急停止できるか、などが試される。

 検査は「100点満点」でスタートし、できなかったことがあると減点されていく減点方式。「70点以上」で合格、下回ると不合格になる。信号無視や逆走などの重大な事故につながる恐れがある行為があれば「40点減点」で、一発で不合格。不合格になると免許は更新できず、そのまま失効ということになる。

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 ただ、一度不合格になっても、免許更新期限の6カ月前から失効するまでであれば、繰り返し受験することが可能(検査手数料は1回3550円)。あくまで免許の有効期間内に検査を受けるというもので、不合格のまま期限を迎えればそこで失効する。つまり、検査で不合格になっても、免許の有効期限までは運転することができる。

 ちなみに、この試験は警察庁が令和3年に調査研究をしている。高齢者218人に実際にテストを受けてもらったところ、22.9%が1回目で不合格だったということだ。先ほどお伝えしたように、年間15万3000人が対象となるので、この数字から試算すると、約3万5000人は1回目で不合格となることが予想されている。

Q.警察官が実車試験を実践するのを取材してきたということだが、試験内容についてはどう感じた?
 率直に言うと、想像よりは簡単だなと。すごく基本的な動作だし、普段から安全運転を心がけている人にとっては問題なくクリアできる課題だと感じた。それを取材で聞いたところ、「この試験そのものは高齢ドライバーから免許を取り上げることが目的ではない」と。「年を重ねることによって、どうしても認知や身体能力が下がってしまうことへの自覚を持ってもらって、安全運転を心がけてほしいという思いがある」ということだ。

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 そもそも、なぜこの法改正がなされたかというと、75歳以上の高齢ドライバーの免許人口当たりの死亡事故を起こす割合はほかの年齢層の2倍という数字がある。やはり認知機能の低下で、運転操作ミスが起こりやすくなるからだ。「自動車運転の年齢層別死亡事故の人的要因」(令和3年における交通事故の発生状況等について、警察庁)のグラフを見ると、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は去年、308件発生したが、75歳以上と75歳未満で大きく差が開いている項目が「操作不適」。これは車の運転そのものの操作の誤りを示したものだが、75歳以上の人は33.1%、75歳未満の人は11.9%と3倍の差がある。75歳以上の33.1%のうち、ハンドルの操作不適が15.3%、ブレーキとアクセルの踏み間違いは10.7%となっている。

Q.これまで違反歴がない人や、75歳以下の高齢者に対しても運転技能の確認は必要な気がするが。
 これについては、70歳以上のドライバーは、免許更新時に高齢者講習を受けることが義務付けられている。交通ルールなどに関する座学、運転の適性検査、実車による講習が行われる。この講習はテストではないので、違反などがあっても講習を受ければ免許更新ができる。

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 また、75歳以上のドライバーで違反がない人についても高齢者講習は必要で、認知機能検査を受けた上で、「記憶力や判断力が弱くなっている」という結果が出た場合、医師の診断を改めて受け、認知症であるという結果が出た場合は免許取り消しとなる。

Q.一方で、車がないと生活できないエリアに住んでいる人も。こうした課題について、関係者からはどんな声があがっている?
 普段取材している警視庁の幹部もそのあたりは十分理解していて、頭を抱えているが、そんな中で自治体も頑張っている。千葉・東金市では、免許返納者が300円で利用できる乗り合いタクシーの取り組みで、実際に免許を返納した85歳の利用者女性は「買い物などでかなり助かっている」と話していた。国交省によると、乗り合いタクシーは現在500以上の自治体で導入されているという。

 今回導入された技能検査に合格できなかった75歳以上の方や、それ以外にも不安を抱えている高齢ドライバーが、自分自身で車を運転しなくてもなるべくこれまで通りの生活を送れるように、自治体でサポートすることが重要だと思う。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)
 

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