使用の可能性が急浮上する化学兵器、ロシア軍を思いとどまらせることは可能か
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 戦闘が続くウクライナ南東部の都市マリウポリで、ロシア軍が化学兵器を使う可能性が再び浮上している。

【ノーカット映像】プーチン大統領の演説(軍事パレードの様子)

 近年ではシリア内戦でアサド政権が有毒ガスを使用、市民に多大な犠牲が出たとされ問題視されている化学兵器は193の国と地域が批准する「化学兵器禁止条約」で生産や保有、使用などが禁じられており、批准国にはロシアも名を連ねている。

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 11日の『ABEMA Prime』に出演した防衛省防衛研究所の山添博史・主任研究官は「400年にわたるヨーロッパの戦争の歴史の中で出てきた、“政治には戦いがつき物だが、必要以上に被害を大きくすべきではない”、“捕虜は適切に扱い、交換をする”など、グロティウス以来の国際法の思想が積み重ねられてきた。その中に、制限をすべきものとしてクラスター弾や地雷、そして化学兵器があるということだ」と説明する。

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 「化学兵器禁止条約は1992年に国連軍縮会議で採択されて各国が履行してきたもので、ロシアも公式には守っているということになっている。2017年には視察を受け入れ、旧ソ連時代から持っていたとされるものは廃棄したので、他国も使わないでくれと、戦略核兵器と同様の制約を受け入れてきた。ただ、これはルールを守る気があるというよりも、アメリカなどを縛りたいからだ。また、2018年にイギリスで用いられたノビチョクという神経剤については禁止対象になっていなかったということもあり、その後も生産・保有しているとみられている。

■地下施設だけの使用であれば、証拠になりにくい?

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 一方、すでにロシア軍がアゾフスタリ製鉄所に対し化学兵器を使ったとの疑惑も浮上している。4月上旬、製鉄所を守るアゾフ大隊が被害を主張。欧米諸国の首脳らが一斉に非難や懸念を表明している。

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 「私にも知識がなかったが、第二次世界大戦の独ソ戦での非常に厳しい戦いの経験から、冷戦期にNATOが攻めてきても耐えられるような核シェルターなど、避難のための施設をあちこちに建設したようだ。アゾフスタリ製鉄所の地下施設にも居住空間や畑があり、立て籠もることができる構造になっているということだ。

 そういうこともあって、多くの都市を制圧しているのに、ここだけが落ちない。だから“制圧した”と言ってからも爆撃を続けている。そのくらい攻めあぐねている彼らが次に考えることは何か、となれば、化学兵器の使用という可能性があるということだ。実際、化学兵器の防護部隊の準備に関する内部情報がウクライナ側に漏れていて、それを根拠にした話なのかもしれない。

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 また、化学兵器には種類があって、大規模に拡散していくので使う側も離れた場所にいなければならないものもあるが、4月11日に使用が報じられたものについては、警告的な意味合い、どういうふうに反応するのかと試した可能性はあると思う。逆に言うと、これは使われたという痕跡は残りにくいので、証拠にもなりにくい。

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 一方で、これからは都市に広がるようなものを使って広範囲に脅威を与える可能性がある。しかし、その報復、あるいは他国が別の戦争で使い出したとしたら、今まで成り立っていた条約がおかしくなってしまう。ロシア軍もそのことを踏まえ、アゾフスタリ製鉄所の地下施設だけに使うということなのかもしれない。そうなると、やはり“使ったのではないか”ということが曖昧になりやすい」。

■西側のサポートが化学兵器使用の抑止にもつながる?

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 こうした状況に対し、近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「化学兵器の使用を抑止しているのは何か、ということに興味がある」と話す。

 「携帯電話の通信網は既に破壊されていると思うので、アゾフスタリの部隊が外部とコミュニケーション出来ているのは、イーロン・マスクが提供しているスターリンクのおかげかもしれない。ただし、スターリンクは軍事システムではなく、アメリカの民間企業のサービスだ。経済力が低下するロシアは従来のまま国力、政府のお金で整備した軍事力で戦う一方、経済力を高めたアメリカは民間の衛星などが参加、これが抑止力に繋がっているとしたら、これこそが21世紀の戦争の怖さだし、抑止力そのものの再定義が必要になってくるのではないかと思うし、ロシアの“読み違い”もそこにあるのではないか」。

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 山添氏は「仮説だが、化学兵器の使用に関するロシア側の計画をウクライナが入手できたのは、アメリカやイギリスの協力があったのかもしれないし、その情報を公にすることで、ロシアが“このタイミングでやめておこう”と引くことがあるとしたら、それは抑止といえるかもしれない。そう考えると、やはり“総合力”が物事を動かしているとみるべきかもしれない。

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 今回、対戦車砲のジャベリンが有名になったが、ウクライナに対する軍事支援は増えてきている。もともとウクライナ軍は旧ソ連の中でもエリートの軍隊なので、戦車や戦闘機などの使用には長けていたはずだ。そこにアメリカから榴弾砲が入ってきているという情報もあるし、ハードウェアとして西側のものがウクライナの戦力になってきているということだ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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