妊娠を理由に退学を余儀なくされる女子高校生たち…“安心して学び続けられる社会に”経験者が訴え
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 妊娠した女子高校生の学びの機会をいかに保障するのか。11日の『ABEMA Prime』では、2人の当事者を通じて考えた。

【映像】自主退学or中絶の2択だけ?妊娠した高校生の現実

■諦めるという選択はしたくなかったので、自主退学した

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 キョウコさん(20)は私立高校2年生の秋、交際していた1学年上の男子生徒の子を妊娠したことを知った。しかし、母親に伝えたのは7カ月に入ってからのことだったという。

 「母とは友達感覚で話すくらい仲が良かったが、叱られたり、出産は諦めるべきだと言われたりするのではないかと思うと、怖くて言い出せなかった」。

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 気持ちは学校に対しても同じだった。「友達は応援してくれたし、最終学年になっていたので、子育てと両立できれば一番良かったと思う。でも、相談したら退学にさせられてしまう気がして、妊娠とは別の理由で自主退学することにした。出産を諦めるという選択はしたくなかったので、この方法しかなかったと思う」。

 いまは育児に励むキョウコさん。一方、父親になるはずだった男性は「産むなら責任を取って結婚するし、産まないなら親と話して対処しよう」と言ってくれたものの、双方の両方の親を交えて話し合った後は親同士が連絡を取り合うだけで、直接のコミュニケーションは無くなってしまった。

■経済面、進学面を考えると、出産に踏み切ることができず…

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 新橋みゆさん(21、大学4年生)は、高校3年生の春に妊娠が発覚した。交際1年ほどだった相手の男性は、コンドームを見せて「避妊してほしい」との懇願に応じることはなかったという。

 「親には“そんなことがあり得るのか”というような反応をされ、呆れられてしまった。そして通っていた学校が私立の中高一貫校だったので、産むにしろ産まないにしろ、退学処分になっていただろうと思う。だから伝えずに中絶を選んだ」。

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 キョウコさん同様、新橋さんにも“産みたい”という気持ちはあったというが、経済面、進学面を考えると、出産に踏み切ることはできなかった。

 「学校が受け入れてくれて、大学受験も含めて未来を見通せる状態であれば産んだと思う。でも、退学になってしまえば中卒。生活が安定しなくなるのではないかという懸念が強かった」。

■選択を迫られるのが女子生徒だけなのか?

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 妊娠した生徒が通学を続けたことがある公立高校の関係者は取材に対し、「在校生の親から“妊娠している子だけ特別扱いするのはダメだ”だとか“妊娠を推奨しているのと同じだ”といったクレームが多く寄せられた。もちろんこれからも妊娠した生徒のフォローはしていく。しかし表立って、というのは難しい」と明かす。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は「妊娠を理由に退学を促すということが常態化していたため、文科省では平成30年にわざわざ通達を出している。むしろ、そういう生徒こそサポートし、生きるための術を教えるのが学校教育ではないか」と話す。

 「経済的に安定していない、あるいはしっかり子育てができる状態にないような母親を“特定妊婦”と呼ぶが、その目的は子どもの保護だ。しかし母親が未成年だった場合、同時にそちらもフォローすることが求められる。産むにしても他の人に育ててもらうという選択肢があるし、その先には特別養子縁組といった制度も用意されている。そこの判断で求められる知識を学校がサポートしてあげられるのなら、“産みたい気持ちはある、でも育てられないかもしれない”と悩む生徒への介入ができるはずだ」。

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 また、近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「海外留学するのと同じだと考えれば留年したって何の問題もないし、先生が出産・育児で休んだりしながら勤められるのなら、生徒だってサポートを受けながら通い続けられるのではないか。一方で日本の学校は同調圧力が強く、“あの子は…”みたいなプレッシャーが本人はもちろん、親に対してもかかってしまうと思う。そして不思議に思うのは、選択を迫られるのは女子生徒だけなのか、ということだ。学校として、パートナーである男子生徒のことも一緒に考えなければならないのではないか」と問題提起した。

■妊娠=ネガティブなものではない、という認識が広まれば…

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 議論を受け、キョウコさんは「妊娠しても通える制度があったら有り難かった。ただ、仕組みがあることで、かえって出産や子育てを軽く考えちゃう高校生が増えちゃうかもしれないとも思う。難しい問題だ」とコメント。

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 国会議員へ提言を行った経験もある新橋さんは「特別な対応というのは、教育現場では行われていると思う」と指摘。「妊娠した生徒が安心して学べるよう、つわりで登校できない生徒のためのオンライン授業やオンデマンド授業、体育の授業への対応など、行政に予算を付けてもらうところも大事かなと思う。そして、どれだけ避妊をしていても、妊娠は避けられないものだと捉え、包括的な性教育を広めていく必要もあると思う。妊娠=ネガティブなものではない、という認識が広まれば、そうした対応へのハードルも低くなるのではないか」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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