「沖縄じゃ、聖火じゃなくて米軍のヘリが燃え上がっとるばい!」タブーを笑いに…“自らが生み出す矛盾”に芸人「それが沖縄の全体像」
【映像】「いつまでも米軍基地があればいい」沖縄の複雑なリアル
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 5月13日、民放労連沖縄支部で「沖縄返還50周年を考えるシンポジウム」が開催された。歴史学者や大学教授が名を連ねる中、一人の男性に注目が集まった。

「僕は学者でもないし、先生でもない。詳しいデータとか法律とか、よくわからないんですけど…」

 そのように話すのは“まーちゃん”こと小波津正光さん。沖縄で活躍するお笑い芸人だ。なぜ、小波津さんがシンポジウムに呼ばれたのか。その理由について、民放労連沖縄地連の後藤政司書記長は「基地問題をいかに身近に考えていくかという中で、テーマとして合致していた」と説明する。

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 さらに沖縄国際大学大学院経済学部教授の前泊博盛さんは「沖縄のものを、私のようなものが真剣に言ってしまったら、みんなが辛くて。かえって悶々としてしまう。それを笑い飛ばすような力で語ってくれると心にも残るし、頼もしい」と続ける。

「沖縄じゃ、聖火じゃなくて米軍のヘリが燃え上がっとるばい!」タブーを笑いに…“自らが生み出す矛盾”に芸人「それが沖縄の全体像」
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 専門家がそのように話す小波津さんは、沖縄の米軍基地問題を笑いで表現する「お笑い米軍基地」を主宰する。2004年の旗揚げ以来、地元では満員御礼が続く人気集団だ。

 そんな小波津さんは1974年、沖縄県那覇市に生まれた。沖縄で芸人活動を始めた小波津さんはその後、東京に進出。ライブハウスで下積みを送っていたが30歳で帰郷する。そのきっかけとなったのが、2004年8月13日に起こった米軍ヘリの墜落事件だ。

2004年、沖縄国際大学にアメリカ軍のヘリコプターが墜落。奇跡的に死傷者は出なかったが、このニュースを東京で聞いた小波津さんは、ニュースの扱われ方に衝撃を受けたという。奇しくも、その日はアテネ五輪の開幕日と同じだった。

「沖縄の新聞の一面には『米軍ヘリ墜落』とあって、一方、全国紙を見比べてみると『平和の祭典開幕』って。選手の皆さんが聖火をバックにしてにこやかに手を振っている写真が載っていた。それをみて『何だこりゃ?』と」

 その2日後、小波津さんはお笑いライブで新聞を片手にネタを披露。「沖縄じゃ、聖火じゃなくて米軍のヘリが燃え上がっとるばい!」と新聞を高々と掲げると、ドカンと笑いが起こった。

「僕としては複雑だった」

 そのように当時を振り返る小波津さん。しかし、タブーと思われていた沖縄のリアルを笑いに変えたことで、“笑わざるを得ない”怒りと本音があることに気づかされたという。

「沖縄の人間、沖縄の芸人っていうんだったら、これをネタにしてみろと言われている感じがした」

 事故が起きた日は30歳の誕生日。小波津さんは、沖縄が抱える本音や不条理を笑いに変えて発信しようと思い立った。

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 小波津さんは車を走らせ、興味深い場所に案内してくれた。米軍基地を沖縄の間を走るその道路をよく見ると、米軍基地側には立派なガードレールや歩道があるが、沖縄側にはそれがない。「これ、誰を守るの?って話」と小波津さんは苦笑いを浮かべる。

 また米軍基地と沖縄を分かつフェンス越しに立った小波津さんは「小さい頃は米軍基地の芝生に憧れた。どこまでも綺麗な(整備された)芝生が広がっている。意外と基地の中への憧れとか、そういうのももちろんある。『米軍基地反対』と言いながら、米軍基地の中で働くことに憧れる。そこが実は本土の人とか、全国の人には分かりにくいところ。『矛盾してない?』と言われるが、僕らの中では矛盾ではない。それが沖縄の現実」と話した。

 そのうえで「僕のやっていることは沖縄の基地問題をコントにして、表現している。それで皆さんが笑うということは、たぶん沖縄で起こっていること自体がコメディーだと思う」と皮肉めいた私見を述べた。 

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 前出の民放労連・後藤書記長は「基地に反対しながらも、日本との併合を望んだ世代。それが当たり前になってきた世代。そういった歴史を統括して、『あれ、でもこれちょっと変じゃない?』ということに気づいてきた世代が、今の20代くらいの若者ではないか」と述べ、沖縄の世代間における歴史認識の変化について語る。

「米軍基地だから特別とか、難しいとかっていうことではなくて、美味しい料理も含めて沖縄。それらが組み合わさって本当の沖縄の全体像。『沖縄のことを何か調べてみよう』というきっかけになればいい」

 小波津さんは、自らの活動の意義について。そのように語る。その一方、“自らが生み出す矛盾”についても、次のように本音を明かしてくれた。

「僕はお笑い米軍基地という舞台をやってて、それをやるとお客さんもいつも満員。チケットも売れるからいつまでも続けたい。だから、いつまでも米軍基地があればいいと思っている。芸人としては…。一方、沖縄の人間としては、早くこの舞台ができなくなればいいと思ってて、相反する自分がいて。でも、そういうのが人間らしい。それが良いとか悪いとかじゃない」

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