「戦争の前と後」という文字とともに、SNSにアップされた映像で、活気に満ちていたオフィスが、破壊され、瓦礫と化してしまったことがわかる。
「みなさん、この扉の向こうにはほんの少し前まで、人々の日常の仕事がありました。しかし、残念ながらロシア軍の侵攻により、今はこのような悲しい場所に変わってしまいました」
崩れ落ちた工場でそう語るのは、ウクライナ人のイゴールさん。木製の世界地図を販売するウクライナ発のブランド「enjoy the wood」の社長だ。
日本を含め約120カ国で 木の温もり溢れる壁掛け型の『世界地図』を10万セット以上販売してきたが、ロシアの攻撃で建物の9割以上が破壊され、亡くなった従業員もいる。
「オフィスは、砲撃や占領されたイルピン市に位置し、1つの工場は多数の死者が出たブチャ市にありました。工場に入ったとき遺体を見ました。主要な工場はボロディアンカにありますが、こちらも完全に破壊されました」
会社があったのは首都キーウ近郊。ロシア軍に占領され、民間人が虐殺された地域に集中していたのだ。
破壊される前の工場では、たくさんの木材や加工用の機械が並ぶ生産の拠点として、200人以上の従業員が働いていたが、そのほとんどが焼き尽くされてしまった。街を占拠していたロシア軍が撤退する際に工場を破壊したという。
一方、オフィスがあったのは、首都キーウの隣町「イルピン」では、川や湖に囲まれ、緑豊かな住宅街が広がっていたが、大量のミサイル攻撃や砲撃にさらされ、辺り一帯、建物の屋根が吹き飛んでしまったことがわかる。オフィスが入っていたビルも壁が崩れ、中が丸見えに……。
ロシア軍の占領から解放されたものの、残されたのは瓦礫の山。イゴールさんは悲しみに暮れる代わりに祖国を救うため、ある決断をした。ウクライナの経済を回すために、ウクライナ国内に工場を復元することに決定した。
「我が国の繁栄のために最善を尽くして行きます。たくさんの人がウクライナ西部に避難し、職を失ったので、我々はできるだけ早く工場を再開して、人々が職に就けるよう頑張っています」
直接武器をとって戦うのではなく、ウクライナ国民の雇用を守るために事業を再建しようというのだ。
新たな工場とオフィスの拠点に選んだのは、スロバキアと国境を接する、ウクライナ西部の町「ウジホロド」。周囲の支えもあり、順調に工場用地を借りることができたが、事業の再建には危険も伴う。
再建のため、ロシア軍の攻撃を免れた『倉庫』へ資材や機械の運搬に向かった。トラップはなく、機械や木材、商品の在庫は無事に残っていた。しかし、安全だと思って工場に運んだものの中には、知らないうちに不発弾が紛れ込んでいることもあった。幸い、爆発することもなく、国の爆弾処理班に引き渡され、工場には再び多くの木材や機械が戻ってきた。
3月の終わりに焼け落ちてしまった工場は、場所を変え、わずか1カ月足らずで再建を果たしたのだ。同様に、ミサイル攻撃を受け、瓦礫の山と化していたオフィスも新たな建物に移転し、活気を取り戻しつつある。
「私たちはより良い未来を信じ、決してあきらめずに、目標に向かって努力します。このプロジェクトを支援いただければ、会社は前進し、生産は復活しそして社員の雇用は維持されます。私たちの製品はあなたの家を飾るだけではなく、私たちの家や未来を再建できるのです。enjoy the woodを支えてください。ウクライナを支えてください」
(『ABEMAヒルズ』より)
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