“ロシア擁護”を展開するインフルエンサーも出現? 日本語のSNSのアカウントにも迫る“制脳権”争い
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 ロシアによるウクライナ侵攻で注目を集める、陸、海、空、宇宙、サイバーに続く“第6の戦場”こと「制脳権」をめぐる争い。日本で早くから「制脳権」に着目してきた京都先端科学大学の土屋貴裕准教授は次のように説明する。

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 「フェイクニュースや陰謀論、プロパガンダによる“情報戦”は古くから存在していたが、それを爆発的に拡散できるインターネット、SNSというツールが2000年代後半〜2010年代にかけて普及した。近年、AIによってユーザー思考パターンの分析も可能になってきているので、それぞれに合った情報を積極的に提供することもできるようになっている。

 すでにアフガニスタンのタリバンも戦闘と情報選を織り交ぜた、いわゆる“ハイブリッド戦”を展開している。それによって相手軍事・安全保障のみならず、政治・経済を混乱させるということだ。こうした状況を受け、中国で2014年頃から使われるようになったのが“制脳権”という言葉だ。

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 しかし私が2016年に執筆した論文で“第6の空間”になると申し上げたところ、研究者からは人間の脳というのは当たらないのではないかという批判も寄せられた。それでも脳神経系科学分野の研究は非常に進んでおり、人の認知領域に直接働きかけ、潜在意識も含めてコントロールするということが可能になりつつある。

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 すでに中国では人間の脳波でラットを動かすというところまで来ているというし、究極的にはテレパシーのように意思疎通ができるようになってくるのではないかとまでいわれている。こうした技術を安全保障に積極的に利用しようという国も当然出てくるだろうが、戦後の平和に慣れきってしまっているせいか、日本においてはかなりの抵抗感があるし、リテラシーも高いとはいえない」。

 そんな中、防衛省には「グローバル戦略情報官」というポストが新設された。

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 土屋氏は「中国ではAIを活用した効率化や、ドローンやロボットなどの自律型の兵器に注目が集まっていて、そうしたインテリジェント化した戦いを“智能化戦争”と銘打っている。日本にとっても安全保障上、情報空間や認知領域を守り、相手国に優勢を取られないようにすることが大切になってきている」と説明。

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 「一方で、日本は民主主義の国である以上、自由で開かれた情報発信を尊重する。そういう中で民間レベルではリテラシーを高めるのと同時に、国としても何が重要なのかを特定し、効果的に防いでいく必要がある。まさにグローバル戦略情報官もその一つで、各国から意図的に発信されるフェイクニュースや宣伝工作のようなものを分析する組織だ」とした。
 

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 とはいえ、サイバー攻撃やダークウェブなどの監視を行う株式会社ソラコム(仙台市)の高橋洋人代表取締役会長は、ロシアが数万人規模のフォロワーを抱える日本人のSNSアカウントを通じて世論形成を試みている可能性があると指摘する。

 「これは“カリスマ起業家”によるビジネス交流のような使われ方をしていたアカウントだったが、ウクライナ侵攻後はロシア擁護の投稿ばかりになってきた。様々な状況証拠から考えて、この方は日本国内にはおらず、依頼を受け“仕事”としてこうした投稿を続けている可能性がある。恐ろしい話だが、投稿しているのが本人ではない可能性も十分にある」(高橋氏)。

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 土屋氏は「情報が大量に溢れる状況の中、何が本当に正しいものなのかを見極めるのは非常に難しい。ウクライナ情勢に関しても、偽の情報が非常に多いし、共感を与えるような情報発信も行われているので、そこに共鳴してしまう人々、国々が出てきてしまうことになる。

 人気のアカウントが急に政治的な発言をしたり、ステルスマーケティングのような刷り込みをしたりすることに対しては十分に警戒をしなくてはならない。どんなに嘘の情報だと分かっていても、一定程度は影響を受ける人たちが出てきてしまうが、それが民主主義でもある。まずはワンステップ、発信の意図が何なのか考えてみることが非常に重要になってくると思う」。(『ABEMA Prime』より)

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