死別、勘当…親子関係につきまとう“後悔”に夏野剛氏「お互いにカチンと来ることを言ってしまうのが家族。いつかは分かる時が来る」
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 5月8日の母の日。渋谷駅前には赤ではなく、白のカーネーションを配る人たちがいた。亡くなった母親への手紙を募り、匿名で公開するオンライン展示会『死んだ母の日展』運営メンバーの学生たちだ。

【映像】近すぎる故の衝突も 様々な家族の後悔、絶縁・勘当の経験者と考える

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 中心メンバーの中澤希公さん(20)自身も、中学3年生の時に母親を乳がんで喪った。「母を亡くしてから、街で赤いカーネーションが売られたり、友達がSNSに“お母さんありがとう”と書いていたりするのを見ると、羨ましいなと思ったり、しんどさを感じたりしていた」。

 中澤さんたちの呼びかけに集まった、600通を超える手紙。中でも多かったのは、“後悔”の言葉だったという。弱っていく母親と向き合う辛さに悩んだ中澤さんもまた、「もっと一緒に写真を撮りたかったな」と話す。

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 闘病中の写真で唯一残るのは、母親が終末期にあった頃の写真だ。「フィルターをかけたら、抗がん剤でむくんでいるのが分かりにくくなるねと言いながら撮った」。

 死別から5年。「“引きずる後悔”ではなくて、母にしてあげられなかったことを他の人にしてあげたいなという、“次につながる後悔”として、今の私の生き方に反映できているのではないかと思う」と語った。

■息子を勘当…「初めての反抗だったかもしれない」

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 一方、母親の立場から後悔の念を口にするのは、息子を“勘当”してしまった経験を持つみぃさん(50代)だ。公務員専門学校にも通い、晴れて警察採用試験に合格した達也さん(30)だったが、突如として「ホストの道に進みたい」と告げられる。

 「こちらの言うことを聞き入れなかったので感情的になって“出ていけ、二度と戻ってくるな”と言ってしまった。小さい頃から、そんなに反抗することはなかったので、初めての反抗だったかもしれない」。

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 時間が経ち、冷静になるほどに「戻ってきてほしい」という気持ちが強くなっていく。それでも「言った手前、引くに引けない。毎日悩んでいた。お正月やお盆に帰ってきてくれたが、それでも門前払いしてしまった。でも、話したほうがいいんじゃないかなと思って、家に入れた」。

 この時のことを達也さんは「帰れないのは辛かった。仕事の相談とかもしたかったので。だから家に入った時は、ホストの大変さ、やり甲斐、楽しさを真剣にぶつけた。あれがなかったら、今も勘当されたままなのかなと思う」と振り返る。

 勘当から5年、今や売れっ子ホストとなった達也さんについて、みぃさんは「やっぱり世間的に、ホストという職業に良くないイメージがあったので。でも誤解だったんだなと思う。今は応援している」と話した。

■「血縁があるからと言って、本当に帰りたい場所だと思えるわけではない」

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 杉本朋哉さん(24)の場合は、2人とは少し違った道を選んだ。進路をめぐる意見の相違から家出、紆余曲折を経て1年前、父親に「縁を切れ」と迫られた、それを受け入れた。「父親は本意ではなかったかもしれない」と考えているが、自らの選択に後悔はないという。

 そんな杉本さんは、父親との対立のきっかけとなった大学中退・起業の道を貫き、「田舎ホームステイ」を提供するFamilyinn社を立ち上げた。地域との交流もできる家族の家に1週間からの中長期滞在ができる居場所を作り、新しい家族の形を提案している。

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 「血縁があるからと言って、本当に帰りたい場所だと思えるわけではないし、絶対的に味方になってくれる存在という訳ではないと思う」

■堀潤氏「“正しくあらねばならないんだ”という呪縛から解き放たれるべき」

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 3人の話を聞き、スタジオからLINEをしたと照れ笑いを浮かべたのはジャーナリストの堀潤氏。「自戒した。照れくさいし、今度会いに行った時でいいやと思ってしまう。でも後悔はしたくないし、一言でも色んな思いが伝えられれば喜んでくれるだろうなと想像しながら送った」。

 一方、海外留学中の息子(18)がいる立場からは「社会として“親なるものが絶対的な価値である”と考えるのはやめた方が良いし、親の側も“正しくあらねばならないんだ”という呪縛から解き放たれた方がいいと思う。僕は大した父親じゃない代わりに、たくさんの仲間がいるので、“俺は全然ダメだけど、困ったときには友達を紹介するから、話を聞いてきて”と言っている。このスタジオにも見学しに来てくれたが、大人たちが見守ってくれた。親だからこうしなきゃいけないぞ、正しい道に導かないといけないぞ、と背負う必要はないと伝えたい」。

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 祖父らが南アフリカにいるモデル・デザイナーの長谷川ミラは「私の父は南アフリカの家族と10年以上も絶縁中だ。だから父と同じく日本人と結婚した伯父の家族は南アフリカに毎年のように帰って家族写真を撮っているのに、うちの家族だけがそこに写っていない。今年は祖父が90歳になるので、“どうか父を置いてでも来てくれ”と言われている。もちろん、父は行ってきていいと言うだろうが、祖父母と過ごしてきた時間よりも父との時間の方が長いし、親子関係を考えると難しい」と明かす。

■夏野剛氏「いつかは仲直りの機会が来る。可能性ゼロだと思う必要はない」

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 半年前に父親を亡くしたという近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「中澤さんは20歳ということだったが、結婚して家族ができると一層忙しくなるし、その前から実家を出ていたとしても両親との距離はさらに広がると思う。それなのに、お互いにカチンとくる余計な一言を言っちゃうものだ」と話す。

 「それは“家族だから言える”みたいな感覚があるからだし、大抵は心当たりがあることを指摘されるからだが、逆に自分も親として良いことを言っているつもりなのに、子どもからは“なんでそんなうるさいことを言うの”みたいなことを言われることがある。そんな時、自分がこの年齢だったとき、親父は今の俺の歳だよな、みたいなことを考えると、分かってくるものがある。

 だからいつかは仲直りの機会が来ると思うし、可能性ゼロだと思う必要はないと思う。しかも今はLINEなどが出てきたので、一回一回は長くなくても、実際に会わなかったとしても“繋がっている感”を持つことはできると思う。それは多くの家族にとって追い風なのではないか」。(『ABEMA Prime』より)

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