就任後、初の来日となったバイデン大統領。岸田総理との首脳会談後の会見で、「台湾を防衛するために直接関わるか?」と記者に問われ「YES」と踏み込んだ回答をしたことが話題となっている。24日の『ABEMA Prime』に出演した東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授はこう話す。
「バイデン大統領が“軍事的に関与する”という発言をするのはこれが初めてではない。過去にもホワイトハウスが“台湾政策はこれまでと変わらない”と一生懸命火消しをしていて、今回もすぐにホワイトハウスやオースティン国防長官が“我々は政策を変えていない”と打ち消した。もちろんアメリカ軍の最高司令官であるバイデン大統領がそのように考えているというのは大事なことだし、個人的な思いもあるのだろうが、簡単に変わるというものではない。
その一方、アメリカはこれまで台湾を助けるのかどうかをはっきり言わない“あいまい戦略”を採ってきた。バイデンさんが“助ける”と言い、ホワイトハウスは“今までと変わらない“と言う。つまり“介入してくるかもしれない”と中国に思わせ、侵攻のためのプランをいくつも立てさせ、思いとどまらせる。そういう効果を狙ったものだ。その意味では、一連の発言は“わざと”の可能性もなくはない。リスクのある、高度な技だと思う。
私自身は、今の状態であれば介入の可能性はあると思う。ロシアによってウクライナで非常に悲惨な戦争が行われているが、やはりアメリカが介入しなかったが故に多くの人が死に、多くの難民が生まれている。アメリカ国内では“本当にそれでいいのか、助けなければいけないのではないか”、“もし台湾が中国から攻撃を受けた場合には立ち上がるべきだ”と考えている人が多く、世論調査によってはそれが60%以上というものもある。場合によっては、“舐められてはまずい”と派兵するかもしれない。
加えて、“軍事的な関与”という言葉の意味の問題もある。台湾関係法では“武器の提供ができる”と書いてあるので、“その範囲であれば今までとは変わらない”という説明もあったが、やや取って付けたような印象がある」。
24日には日本とアメリカにオーストラリアとインドを加えた、海洋進出を強める対中国を意識した協力の枠組み「クアッド(Quad)」の首脳会合も行われ、“力による一方的な現状変更をインド太平洋地域でも許してはならない”という認識で一致している。鈴木教授は次のように話す。
「国連の集団安全保障機能にはどうしても限界はある。やはり大国同士の戦いには関与できないので、別の枠組みを考えていくしかない。日本としては日米同盟を基軸にしつつ、海の問題であればクアッド、技術の問題であればオーカス(AUKUS)という具合に、目的ごとに最適な仲間を作ることがベストなシナリオだと思う。一方、同盟というのは仲間が増えるのと同時に、仲間が抱える問題を抱えることにもなる。クアッドについて言えばロシアとの関係が良いインドが入っているので、必ずしも一枚岩で行動できない関係があるし、日本としても海での協力はできても、中印国境問題のような陸の問題については関心を持たない。
それでも枠組みが重層化していくことでアメリカを同盟関係の中にきちんと位置付け、逃げ出さないようにすることが大切だ。今のアメリカは中国をライバル視し、東アジアの安全保障にコミットしている状態なので、日米関係も非常に重要で、はっきりとした輪郭を持っているだろう。まさにバイデンさんが来日し、こうした枠組みの中心に日本がいるという状況になっている。地理的にもアメリカと中国の間にあるし、韓国では大統領、オーストラリアでも首相が変わった。そういう中で日本は一貫した姿勢を取り続けることによって、継続性や安心感を提供している。そういうポジションにいると思う」。(『ABEMA Prime』より)
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