「地方紙などが実態をきちんと伝えていない」「これは市民に対する問題提起でもある」“議員定数半減”を提案した石丸伸二・安芸高田市長の狙いとは
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 「副市長を半減させるなら議員も半減させるべきだ」。安芸高田市の石丸伸二市長(39)の提案が波紋を広げている。

【映像】「議員を半減」案! 元銀行マンの安芸高田市長(39)の挑戦

 空席だった2人目の副市長に自らが選んだ人物を据える案をたびたび市議会に提出してきた石丸市長。しかしその人事案はことごとく否決され、逆に今年3月には議会が提出した、財政難などを理由に副市長の定数を2から1にする条例が可決・成立してしまう。

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 これに対し石丸市長は5月24日の会見で「感情は一切入っていない。むしろ機械的に対応している。議会が是としたロジック、それをそっくりそのまま運用すべきだ。y=1/2xの関数だ」として、市議会議員の定数を16から8にする案を明らかにしたのだ。

 5月31日の『ABEMA Prime』では、石丸市長をスタジオに招き、提案の意図を尋ねた。

■副市長の年収は議員報酬の倍以上でも「投資に見合うだけの成果はある」

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 石丸市長は議員定数の半減について、会見で「抜本的な財政健全化を進める必要性、これに加えて市民の議員に対する評価を踏まえて判断をしている」と説明している。しかし、それで捻出されるのは年間5000万円ほどだ。

 「福祉や公共インフラに莫大なお金がかかるので、この5000万円もすぐに溶けてなくなるくらい、お金は常に足りない状況だ。ちょっとでも節約すべきだ。確かに議員報酬が約500万円なのに対し副市長は約1200万円と2人分を超える額だが、投資に見合うだけの成果はあると考えている。2人の枠をフルに使い、“攻め”と“守り”の形で進めていくのが良いという判断だ。この話を理解してくださる議員も6、7名はいるし、実際、副市長人事が否決された時には1人差だった」。

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 また、市議会の宍戸邦夫議長は「議員定数は民主主義や自治の根幹だ。議員で定数削減の話はしてきたが、市長からの提案というのは聞いたことがない。副市長と市議会議員では次元が違い理解できない」と疑問を呈している。

 しかし石丸市長は「理解ができないというのは非常に残念だというしかないし、ツッコミどころしかない。財政難を理由に副市長の定数を削減したならば、“では議会はどうなんだ”という議論を始めないといけないはずだ」と反論した。

■「地方紙など、ローカルのメディアが実態をきちんと伝えていない」

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 京都大学経済学部を卒業後、三菱UFJ銀行に入行した石丸市長。2019年の参院選をめぐる買収事件で現金授受に関わったとして児玉浩市長が翌年7月に辞職、翌月の市長選の立候補者が竹本峰昭副市長のみだったことから“一騎打ち”に出た。

 「ニューヨーク駐在中に仕事でアルゼンチンに行った時に、“ずいぶん遠くまで来た”という感じがして、無性に故郷に帰りたくなった。そして地元に戻って仕事をしているうちに、前市長が河井夫妻による選挙違反事件が起きた。もともと抱いていた、地方政治、地方議会がおかしいのではないかという問題意識が高まるとともに、立候補者が当時の副市長のみだったので無投票で決まりそうなのを止めたかった」。

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 それから約2年。選挙戦で一番に掲げた“政治再建”について「今も1mmもブレていないと思う」とし、今回の提案も、そのための問題提起だと説明する。

 「狙いとしてはいろいろあるが、最も大きなものは、議会の機能不全を正すこと、これに尽きる。議員定数を減らすだけで議会の機能不全が正せるとは思ってはいないし、急ぐ必要もないと思う。ただ、議会がやったことをそっくりそのまま反転させてみた時に、認められるのだろうかという問題提起をしたい。もちろん議会が賛成・反対のいずれであっても口を出す話ではないし、私は認める。しかし、その理由が矛盾を孕んでいると問い続けて1年が経った結果、副市長の定数削減という形で議論を封殺してしまった。

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 だから今回の対応は、単なる報復に見えるかもしれない。市民の反応も賛否両論で、私の政治スタイルが気に入らないという方もいれば、逆に“全面支持だ、どんどんいけ”という方もいる。“気持ちは分かるが、やり方をもうちょっと何とかしてくれないか”という方が多いかもしれないが、そこは覚悟ないといけないと判断した。また、副市長の問題が大して話題にならなかったことについては、“おい、メディア!”と思った。地方政治の緩みの原因はマスメディアにもあるが、地方紙など、ローカルのメディアが実態をきちんと伝えていないところにあるのではないかとも思っている」。

■「“これが本当に皆さんの選んだ議会の姿か“という問題提起でもある」

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 一方、前回の市議選では定数16に対し立候補者は18人と、他の自治体と同様、議員の担い手不足は明白だ。定数を削減したところで、政治改革は実現するのだろうか。また、番組には元市民を名乗る視聴者から「こんなことを言ってはなんだが、定数以前に市議会は必要なのだろうか」とのコメントも寄せられた。

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 石丸市長は「二元代表制はよくできたシステムだ。アクセルを踏む立場の市長は暴走しやすいので、どこの自治体かは言わないが、議会を抱え込んで与党を形成し、よく分からない道路や箱物を作ったり、立派な役所を建てたりと、思うがままだ。だからそのブレーキ役としての議会は必要だ。一方で、有権者に対しても緊張感を持ってほしいと思っている。

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 市長や議員を選ぶとき、こうしたことをどこまで意識しているのか怪しいと思うからだ。その意味では、“これが本当に皆さんの選んだ議会の姿か“という問題提起でもある。次の選挙ではしっかり考えて選んでもらいたいと思っているし、議員のなり手を確保するための市民の意識改革も必要だ。仮に定数が8になったとしても、ITも進化しているので市民の声を拾うことは可能だと思う。スマホが使えないという方には無理だろうが、それはむしろ今の時代の議員としてどうなんだろうか?ということで問うていかないといけない。そして定数が16のままになったとしても、立候補者が30人、40人、50人と増えれば選び放題になるということだ」。(『ABEMA Prime』より)

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