将棋のヒューリック杯棋聖戦五番勝負の第1局が6月3日に行われ、挑戦者の永瀬拓矢王座(29)が藤井聡太棋聖(竜王、王位、叡王、王将、19)に114手で勝利、初の棋聖位獲得に向けて、幸先のいいスタートを切った。タイトル戦としては20年ぶりとなる2度の千日手もあった中、都合3局目となる一局でも序盤から豊富な研究がうかがえる指し回し。過去の対戦成績では3勝7敗と負け越していた藤井棋聖から、大きな1勝をもぎ取る形となった。
【中継】ヒューリック杯棋聖戦 五番勝負 第一局 藤井聡太棋聖 対 永瀬拓矢王座
藤井棋聖がプロデビューして間もないころから研究パートナーとなった両者による初のタイトル戦は波乱の幕開けになった。藤井棋聖の先手番で始まった一局は相掛かりになったが、中盤を迎えた66手目で千日手が成立、指し直しとなった。30分間の休憩を置いてから永瀬王座の先手で指し直し局が始まったが、序盤の53手目で2度目の千日手に。開幕局から3局も指すことになった。再度、藤井棋聖の先手で始まった一局は角換わりからのスタートになったが、両者間でも何度も研究を重ねただろう戦型でもあり、お互い1時間程度の持ち時間でも淀みなく指し続け、中盤、さらには終盤へと進行。じりじりと持ち時間でリードし始めた永瀬王座が局面でもポイントを稼ぎ出し、最終盤でも絶対に勝機を逃さないような手堅い指し回しで勝ち切った。
終局後、永瀬王座は「1日3局指すというのはレアケースだと思います。とことん教えていただいた一日でした。(第2局は)しっかり準備して、先手番を活かせるように準備したいです」と語った。
タイトル戦で1日に2度の千日手が成立したのは、2002年に行われた第15期の竜王戦七番勝負の第1局、羽生善治竜王-阿部隆七段(当時)以来、20年ぶりとなる異例のこと。ただ永瀬王座は勝負に徹し、千日手や持将棋を辞さない姿勢で知られている棋士で、タイトル戦では叡王戦七番勝負で豊島将之竜王(当時)と持将棋2局、千日手1局で、さらにフルセットまでもつれこみ都合10局指したこともある。また2011年のNHK杯テレビ将棋トーナメントでも、佐藤康光九段を相手に2度の千日手を成立させたことがあった。
永瀬王座としては、念願でもあった藤井棋聖とのタイトルをかけた番勝負。将棋にかける譲れない思いと共感する部分が、2度の千日手という結果になって現れたが、開幕局から思う存分戦っただけに、この後のシリーズも内容だけでなく、何局かけて決着がつくかまるで想像がつかない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)