TVアニメ「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」(以下、「かぐや様」)のエンディング映像が話題を呼んでいる。学園ラブコメという作品でありながら本格SFを彷彿とさせる内容で、その意外性や緻密な描写、ストーリー性の高さなどが、ファンの間でも議論や考察を巻き起こしているのだ。
【動画】「かぐや様は告らせたい」3期ED映像(23分30秒ごろ~)
「かぐや様」は、名家の子息などのエリートが通う偏差値77の名門高校・秀知院学園を舞台に、生徒会に所属する会長・白銀御行と副会長・四宮かぐやの恋愛模様をコミカルに描いたラブコメディ。「週刊ヤングジャンプ」で赤坂アカ先生が連載中の同名漫画が原作で、TVアニメは第3期が放送中、実写映画化も二度行われている人気作だ。
今回の記事では、そのTVアニメ第3期EDの内容に切り込むインタビューを実施。制作デスクの杉本俊輔さんと、EDアニメーション絵コンテ・演出・原画担当の大野仁愛さんのお2人に、ED映像に込められたテーマ性や、制作に至った経緯などを語っていただいた。
――まさかのSF仕立てというところからも話題となっているTVアニメ「かぐや様」第3期ED映像ですが、どんなテーマを持って制作に臨まれたのかを教えてください。
杉本俊輔さん(以下、杉本):最初は大野さんに「竹取物語」をベースに作りませんか? とお話ししました。「かぐや様」というタイトルからも、この作品の根底には「竹取物語」があると思っていましたが、今までのOPEDではあまり題材として扱ってこなかったので、テーマとしては良いかなと。日本人がなじみ深い物語でもありますし……。
大野仁愛さん(以下、大野):子供のころから「竹取物語」はSFものだと思っていたので、杉本さんの提案を受けて「月世界旅行」のようなものはどうかと提案しました。すると反応が良くて、早い段階からSFものでいこうと方針が決まりました。
また個人的な思いとして、第1期EDの感想・考察・二次創作・各種航空機の解説などを発信してくださったファンの方々や、それらを拡散し応援してくださったファンの方々への恩返しになるようなものにできれば嬉しいなという思いがありました。そういったこともあって、1人のファンとしての自分の勘を信じて「自分が一番見たいと思う、原作では描かれない場面」を描こうと決めていました。
――第3期ED映像は、ED主題歌「ハートはお手上げ」をお聴きになってから制作に入られたのですか? それとも映像制作のほうが先に始まったのでしょうか?
大野:実は映像のほうが先行して作業に入っていたんです。当初はEDらしいしんみりとした映像にしようと考えていたので、曲を聴いて「お手上げです。どうあがいても大作になります」と杉本さんに電話しました……。
――「ハートはお手上げ」だけに(笑)。
大野:ちなみに大作というのは、私と杉本さんの中では「死ぬほど大変なことになる」を意味する隠語なんです……(苦笑)。
杉本:映像の方向性をすでに決めており、アクションやSFの要素を入れることが分かっていたので、僕もマッチするか心配でした(苦笑)。
――ED主題歌「ハートはお手上げ」を初めて聴いたときの印象は?
杉本:鈴木愛理さんの歌唱が本当に素晴らしくて驚きました。普段OPEDのデモ段階は、作曲者さんやそのアシスタントさんが歌ったり、中間素材の状態で入ってきたりすることが多いんですが、今回の「ハートはお手上げ」は最初からご本人のとてもお上手な仮歌が収録されていてびっくりしました。
――この曲に映像をつけるに当たって、気を付けた点はどこでしたか?
大野:映像を付ける上で気を付けたのは“テンポ感”と“古さ”です。“テンポ感”はダンスなどとも似ていると思うんですが、見ていて「動きと音が合っていて、なんか気持ち良いな」というポイントがあると思うんです。そういったところをなるべく逃さないように気を付けました。個人的にそういう映像って音楽だけを聴いているときでも自然と脳裏に映像が思い起こされてきて好きなんです。
もう一方の“古さ”というのは、懐かしさを感じさせる印象の楽曲でしたので、良い意味で「あ~なんか一昔前っぽいな」と思わせる映像にしたいと思い、昔のアニメによくある歌詞と映像が微妙にリンクしている、という演出を取り入れました。
例えば、「信号赤のまま時間よ止まって」のところで赤いランプが緑に切り替わっちゃうとか、「スローモーション」のところで何となく映像をスローにするとか、「ぎゅっと」のところでリボンを握るとか……。あとは、極めつけの「境界線を飛び越えるよ」で本当に境界線を飛び越えさせるとか……。1人で「ふふふ」と思いながらやっていました。
第3期EDアニメーションの絵コンテ・演出・原画を手掛けた大野さんは、歌詞と映像のリンクなど、かなり細かい点にまでこだわってED映像を仕上げたことを明かしてくれた。ファンはこれらの点に注意して、もう一度第3期ED映像を見返してみてはどうだろうか? きっと、新たな発見に驚くことになるだろう。
(C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会