この春、学習指導要領の変更で高校1年生からの歴史授業が変わった。新しくできた「歴史総合」は、これまで学んできた日本史と世界史が合わさったもの。学ぶ範囲は、ペリー来航以降の近代史が中心になる一方、縄文時代や戦国時代といった古い時代は「日本史探求」という選択教科へ追いやられる結果に。
【映像】聖徳太子ではなく厩戸王に…? 教科書の表記が変わった事例(9:10ごろ)
大きく変わりだした歴史教育に、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は自身のYouTubeチャンネルで「“いい国(1192年)作ろう鎌倉幕府”はもう最近“いい国”じゃないんでしょ? 覚えたことがズレる学問とかやっても絶対無駄だよね」「生きているうえで“日本史とか世界史が実用的”だった人ってほとんどいないと思う」と発言。
歴史を学ぶ意味は何なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家とともに考えた。
新しくできた「歴史総合」を専門家はどのように受け止めているか。歴史コメンテーターで、全国約1100校舎で授業が放映されるカリスマ日本史講師の金谷俊一郎氏は「先ほど日本史は選択教科に追いやられたとあったが、元々世界史が必修で、日本史が選択教科だった」と話す。
金谷氏は「世界史だけをやる弊害に対して『それなら日本の歴史も知っておいた方がいい』ということで、日本史の要素を入れた。『歴史総合』はどちらかというとそういう認識のものではないかと思う」とした上で「そういう意味では、追いやられたというよりは日本と世界を総合的に学ぼうということだし、(大学入試も)共通テストに変わった。これによって、年号の暗記は一切必要なくなってきている。たとえば、源為義と為朝の違いとは分からなくてもいい。源氏か平家か足利か、これが分かっているかどうか。つまり現象面を分かっているかどうか。つまり、暗記教育は間違っていたのでは、直さなくてはいけないのではという動きから共通テストや歴史総合という動きが起きていると私は考える。現場でちゃんと実現できれば、いい方向ではあると思う」と見解を述べる。
一方で、歴史学者で東京大学史科編纂所教授の本郷和人氏は「子どもたちに『歴史好き?』と聞くと、みんな『嫌い』と言う。『なんで?』と聞くと『暗記だから』という。勘弁してくれと、それをどうにかしようと思って30年が経っちゃった」と話す。
本郷氏は「僕はあくまで研究の現場にいるので、教育の現場は知らない立場だ」とした上で「今、歴史を専門に研究しようとする子どもたちは学力がどんどん低くなっている。東大で言うと進振り制度があって、文3(※文科三類)に入った学生は自分の手持ちの点数でだいたいどこの学科に行くかが決まる。高い点数の人から社会学に行きたい、教育学に行きたい、心理学に行きたいというふうに決まる。どこにも行けない子が日本史に来る。だから本当にどうしていいのか分からない」と訴え。
ひろゆき氏が「中学校の日本史で割と十分で、高校からは地理や政治経済などは好きなものを選んでやればいいのではないか」と話すと、金谷氏は「私はもっと小学校中学校で日本の歴史をやるべきだと思う」と発言。
「自分の国の歴史が独立した教科で、義務教育ではないのは世界で珍しい。小学校は社会科の中の一部だ。中学校は社会の中で、ちょっと世界史もやる。あまりにもやらなさすぎだ。もうちょっとしっかり、年号ではなく、ドラマやストーリーをしっかりと分かってから高校で『歴史総合』をやる。これで完璧だと思う。あまりちゃんとやっていないと言ったら失礼だが、あまり勉強させていない状態で『歴史総合』といって、それでみんなが『えー』となっているのが、今の状況だと思う」
本郷氏は「第2次世界大戦のことであっても、結局どこに光を当てるかで見えるものが全然違ってくる」と指摘。
「今回のロシアとウクライナの戦争でも、切り取り方によって全てが正しいどうかは分からない。それと同じことで、戦国時代もそうだし、今、大河ドラマで人気になっている鎌倉時代もそうだ。見方によって変わってくる。そういう意味で一つの史実がある。テストに馴染まないところでも、それを上から見るか下から見るか横から見るかで、変わってきてしまう。そこがすごく面倒くさいけど、歴史の面白いところだ」
ひろゆき氏は「なぜ学校の先生が“鎌倉幕府はいい国作ろう”の1192年にしていたかという話になってしまうが、文科省が『年号を教えろ』『暗記させろ』と言わなくても、楽なテストをして、先生が楽をしようとするときは数字を入れさせてマルかバツか、はっきりしている」と指摘。「たぶんテストの傾向は相変わらず年号などを知っているかに落ち着いちゃうんじゃないかなと思う。文字列や数字にならないテストが主流になる可能性は、金谷先生はあると思うか?」と質問した。
金谷氏は「それを今、大学入試センターなどが一生懸命やろうとしているが、かなり難しいのが事実だ」と回答。「マルバツ式や選択式でそれをやろうとするとかなり難しい。でも、今は本当に共通テストをすごく頑張って作っているから、文字列や数字にならないテストが主流になっていってほしい」と答えた。
ひろゆき氏が続けて「共通テストでやっている限り、結局4択、5択の問題にならざるを得ない。そうすると歴史の流れを知って、人はこういうふうに考えるんだと、人の組織はこう動くんだみたいなことは、やっぱり覚えてもしょうがないよねとなってしまわないだろうか」と質問すると、金谷氏は「4択や5択問題の中で増えてきているのは、要するに正誤反対問題だ」とコメント。「つまり、いわゆる流れの部分を並べて『どの流れが正しいですか?』みたいな、そういう問題で答えさせようとしている。だから、だんだん変わってはきている。最終的にはそっちの方になってくるのかなとは思っている」と傾向を語った。(「ABEMA Prime」より)
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