先月、国際研究チームは太陽系がある天の川銀河の中心の「いて座Aスター」と呼ばれる巨大ブラックホールの撮影に、初めて成功したと発表した。この研究チームの一員として貢献したのが、岩手県奥州市にある国立天文台水沢VLBI観測所だ。
「実は、ブラックホールはアインシュタインが『一般相対性理論』の中で『こんな星があるはずだ』と予測した星。アインシュタイン自身『そうは言ったけど、実際そんなものはないだろう』と言っていたが、その後も『本当にありそうだ。いや、この星がもしかするとそうじゃないか』と研究がずっと続いていた」(国立天文台水沢VLBI観測所・小澤友彦特任専門員、以下同)
2019年に初めて姿が捉えられたブラックホール。今回で2例目となる撮影だが、そもそもその謎が解けることにどのような意味があるのだろうか。
「例えば、私たちの命に関わったり経済を良くしたりするという意味で影響することは、すぐには多分ない。宇宙空間の中でどういう関係性があって地球という存在があるのか、そういうことを把握するためには、いろいろなことを宇宙全体として認識していく必要がある。そのひとつがブラックホールである」
ブラックホールに星が引き寄せられて銀河系ができあがったのか、それとも星の集団が何らかの理由で引き寄せられて銀河ができた後からブラックホールが生まれたのか――。さまざまな仮説がある中、ブラックホールの研究が“地球誕生の謎を解く手がかりになる”可能性があるという。
歴史的な研究の一員として大きな役割を担っている日本。しかしいま、その研究の継続が危ぶまれる状況にある。
「正直な話、すごく苦しい。職員の数も少しずつ減ってきている。運用を効率化してきているが、なかなか大変なのは事実。新しいテーマや研究を始めるためには、先行する分野・プロジェクトで少しずつ予算を削減して素地を作る。我々が予算の削減を迫られてしまうという状況がどうしてもある」
そこで、国立天文台水沢VLBI観測所ではクラウドファンディングを開始した。研究を止めないために、「研究所自身も資金集めの面でチャレンジする必要がある」として支援を募っている。
「ちょっと自虐的になるが、“天文学なんて役に立たないんじゃないか”という考えもある中で、『みなさんからの反応はどれだけ得られるんだろう』という気持ちでクラウドファンディングに取り組み始めた。非常にたくさんの方から応援のメッセージをいただいて、ものすごく励みになっている。ぜひこの場を借りて、皆さんに感謝を申し上げたい」
この研究費の問題については、科学技術政策担当の小林大臣も言及している。ブラックホールの撮影成功に「ワクワクした」としたうえで、こう述べた。
「日本人の研究者に、引き続き大きな役割を担っていただくことを期待する。いま水沢の話もあったが、ここは研究費が不足していると伺っている。大学共同の利用機関であるため、文部科学省において必要な予算の獲得を含めて適切に対応されると認識している」
このニュースを受けて、俳優でサイエンスコミュニケーターの佐伯恵太氏は「水沢以外にも国立天文台の中で海外と共同研究されている施設はたくさんあるが、維持費だけで年間3500万円かかるところもある。エアコン代を節約したり、人員を削減したりするなどといった苦しい状況に陥っているのは水沢だけではない」と説明した。
研究者も予算をもらうだけではなく、クラウドファンディングなどで主体的に「資金調達」を行っていく時代なのだろうか。佐伯氏は水沢VLBI観測所の取り組みについて「僕も支援しているが、クラウドファンディングはすごく良い取り組みだと思う。支援者はいろいろなものがリターンとしてもらえるので、応援するモチベーションが上がる。また研究者は社会や世間と接する機会が少ないそうなので、クラウドファンディングが社会の人に注目されるきっかけになれば意味がある」と肯定している。(『ABEMAヒルズ』より)