10日、外国人観光客の入国手続きがおよそ2年ぶりに再開された。 受け入れの対象となるのは感染リスクの低いアメリカや中国、韓国など98の国と地域だ。一方で、個人旅行は見送られ、添乗員が同行し、マスク着用などガイドラインを守るパッケージツアーに限るという条件付きだ。
【映像】約2年ぶり 訪日観光客受け入れ再開 初日の成田空港の様子
また、今月1日、 1日当たりの入国者数の上限が1万人から2万人に緩和され、観光地では受け入れの準備が進められている。
外国人観光客に膨らむ期待。今、日本は急速な円安に陥っている。9日の東京外国為替市場では一時、1ドル134円50銭まで値下がりし、およそ20年ぶりの円安水準となった。これに岸田総理大臣は「インバウンド、外国から観光客が来れば、円安は追い風になる」と述べている。
しかし、緩和されたとはいえ、入国者数の上限は2万人。その数は世界的に見て決して多くはない。はたして日本が提示する条件は世界基準に見合っているのか。そして、円安はどこまで続くのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、コロナ対策分科会のメンバーと共に考えた。
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「日本に入国するとき、日本独自仕様のフォーマットでPCR検査の報告書を作らなくてはいけない。それがどこで作れるのか、日本大使館のサイトで紹介されている場合もあるが、普通の外国人は分からない。設計が間違っていて、日本の偉い人や官僚の人がそれを分かっていないから、なかなか厳しいだろうなと思う」とコメント。
慶応義塾大学経済学部教授で新型コロナ対策分科会のメンバーを務める経済学者・小林慶一郎氏は「予想外に早く収まってきていると思う。ゴールデンウィークがあけてから急激に増えるのではないかと心配していたが、ならなかった。不思議だ。第5波でも急激に下がったが、それと同じように、理由はよく分からないが何らかのメカニズムでタイミングが合うと下がっていくことが、こういう感染症にはあるのかなと思う」と述べる。
海外を見るとイギリス、韓国など、もはや入国制限なしの国、またアメリカ、フランスのようにワクチン接種者は制限せずということになっている。小林氏は、今の日本の状態について「他の国に比べると、感染者が死亡することに非常に敏感になっている。あるいは、医療に対する負荷がかかることに非常に慎重だ」と話す。
小林氏によると、新型コロナ分科会はゴールデンウィークの前に開かれたのが最後で、その後は開かれてないという。ひろゆき氏は「今、夏の外出時にマスクをつけた方がいいか、つけない方がいいか、みたいな議論をやっている。あれこそ人の行動としてどうするか決めるべきことなのに、分科会が開かれてないということは、政府は専門家の知恵を集める気がないのか?」と小林氏に質問。
小林氏は「今行われている厚生労働省のアドバイザリーボードには、私たち経済学者が入ってない。感染症の専門家だけの、そういう専門家集団だ」と答える。その上で「アドバイザリーボードで『マスクはどうすべきか』は先週に提言が出た。だから、夏の屋外ではやらなくていいといった意見が専門家から出されている。分科会の位置づけがやや曖昧になってきていて、『アドバイザリーボードがあれば十分じゃないか』みたいになっているのかもしれない」と述べた。
続けて、ひろゆき氏は「そうすると、経済的な話をする人がいない状態で進む。経済的なことは後回しだと、これがある種、政府の意思なのか」と質問。小林氏は「それか、あるいは感染症の専門家の意見を聞いて、経済を考えた官僚が政策を決めるのかだ」と話した。
外国からの観光客には円安が追い風になる。今こそインバウンドに乗って観光客に来てもらうといった考え方もあるが、小林氏はどう見ているか。
小林氏は「1日2万人というのはちょっと遅すぎる」とした上で「政府の中でももちろん経済重視派がいて、どうしても慎重な政策が選ばれる。ここはなぜなのか私は分からないが、今はなかなか(慎重な政策以外の)声が通らない。『今感染症で失敗できない』ということなのかもしれない」と見解を述べる。
ひろゆき氏は「日本人は1億2000万人の人口に対して、4000万人ぐらいが年金をもらっている。そうすると、失業してどうこうというのは所詮100万〜200万人のぐらいの話で、年金をもらっている人は別に観光ビジネスとかはどうでもいい。もうそっち側に(政策を)振っているってことなのか」と投げかけ。小林氏は「どこを見て政治をやっているのか。そういうシルバー民主主義ということがあるのかもしれない」と答えた。
外国人観光客を受け入れる条件が厳しい日本。せっかく日本旅行を検討してくれた外国人に「日本に行くのは面倒だ」ということになりかねないが、小林氏はどのように見ているのだろうか。
「個人旅行を含めてもっと緩和をすべきだと思う。円安が進んでいるので、今は観光業にとって非常に大きなチャンス。製造業が構造的にもう何十年も弱ってきているので、日本のリーディングインダストリーとして、観光業は非常にポテンシャルが高い。だから、観光業を日本の主力産業にしていくつもりでちゃんと盛り上げなきゃいけない」
その上で、小林氏は「過去2年間のコロナ禍で、観光業の会社はみんな借金漬けになっている」と指摘。
「観光業の会社の借金をどのように減免、軽減するかということも、本当は政府が考えないといけないのに、まだあまりその話には踏み込んでいない。 借金の負担を減らして、そして前向きな投資ができるような環境にして、外国人の観光客たちをちゃんとおもてなしできるような体制を作る。これが日本の観光業にとって今一番重要な課題だ」
いよいよ始まった入国制限の緩和。はたしてインバウンド効果で日本の経済は良くなっていくのだろうか。(「ABEMA Prime」より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側