渡邉恒雄氏は取締役会出席“2年間でゼロ”でも再任へ……日本企業のガバナンスに数々の問題点、“株主はもっと怒るべき”?
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 今春から「東証プライム市場」に新編された「東証一部市場」。その上場基準として求められているのが、社内の利害関係に囚われない立ち位置である「社外取締役」の人数を取締役会の3分の1以上にすることだ。

 ガバナンス改革や経営の“見える化”などを目指して社外取締役を増員する企業も出ている一方、女性比率を高める観点からスポーツ選手や俳優、アナウンサーなどが選ばれて話題になることもある。

【映像】プライム市場上場企業の社外取締役、業務の実態は?

■田端信太郎氏「メディア企業は互いの問題を取り上げようとしない」

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 オンラインサロン『田端大学』の田端信太郎塾長は、投資家としての立場から「日本の社外取締役のあり方には多くの問題がある」と指摘する。

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 「そもそも会社とは株主のものであって、取締役も代表取締役や社長の部下というよりも、株主の利益を代弁して取締役会に出席する存在のはずだ。僕はLINEの執行役員として取締役会に出て議案をかけたことがあるが、どんなにすごい方でも月に1回来るだけで企業を監視するのは現実的に無理だと感じた。

 また、僕は前澤さんの時代のZOZOしか知らないが、あのように株をたっぷり持っている創業社長がいる場合、ガバナンスが効きづらくなってしまう。それでも小野光治さんという社外取締役は“部活の顧問”のように“前澤”と呼び捨てにして発言をしていて、重みもあった。最後は本当に人間関係なんだなと感じた。

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 そして放送局や新聞社といったメディア企業は、お互いのガバナンスの問題をあまり取り上げようとしない。それは“ブーメラン”になるからだろう。ただ、例えば日本テレビホールディングスの取締役に再任議案が出ている渡邉恒雄さんは、取締役会への出席回数が2年連続でゼロだ。そういう問題を互いに記事にして、喧々諤々の議論をしたほうがいい。

 すでに東証は社外取締役ではなく“独立取締役”と呼んでいるし、アリバイ作りのための“お飾り”のように扱われているのはやはりおかしい。より良い意思決定をして企業の業績を伸ばすための存在なのに、とりあえず女性比率の基準を満たせばいいだろうと選任するのも、目的と手段が逆転していると思う」。

 さらに田端氏は訴える。

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 「ただ、株主総会での社外取締役の選任議案は最高裁判所裁判官の国民審査と似ていて、事実上、否決されることはほとんどあり得ない。だからと言ってはなんだが、僕は役員報酬だけもらって持ち株がゼロの社外取締役の選任議案にはバツを付けている(笑)。それは株価が下がったとしても何の痛みも感じないからだ。

 逆に言えば、個人投資家は株主総会に出て資質に関する質問をしたらいいと思うし、株を買い集めて“俺を社外取締役にしろ”と提案する個人投資家が出てきても良い」。

■岩瀬香奈子氏「引き受けた以上は猛勉強しているはずだ」

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 幸楽苑ホールディングスなど、東証プライム企業2社の社外取締役を務める岩瀬香奈子氏(アルーシャ代表取締役)は、仕事の3割を社外取締役としての業務に振り分けているという。

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 「幸楽苑の場合、信頼できるエージェントからのお話があったので引き受けた。それは私にとっても勉強になるからだ。やはり時価総額が数百億というのは自分が経営する会社と比較して規模がまったく異なる。そこのボードメンバーに入れるというのは素晴らしいチャンスだ。ただし株主の方のために力を発揮しないといけないし、タレントや元アナウンサーの方々であっても引き受けた以上は猛勉強されていると思う。そうでなければ、会社側に不祥事があった際には責任追及されることになるからだ。

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 私の場合、月に一度、1〜2時間の取締役会、そして年に一度の株主総会に出席することになるが、新規事業のアイデアなどの資料、経営会議の議事録などが頻繁に届くし、こちらから質問すれば回答ももらえるので、内部の状況については頻繁に把握できるようになっている。それに対して、“煙たがられるかもしれない”といったことは気にせず、株主の方と一般社員の方側に立った意見、社内の役員が言いづらい意見を申し上げるようにしている。結局、私たちのゴールは会社が成長していくことなので、“これはどう考えてもダメだ”という話については反対票を入れている」。

 そんな岩瀬氏だが、やはり日本企業の社外取締役の選任のプロセスには問題があると話す。

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 「ファイナンスとかアカウンティング、あるいは配当性向などの知識が最低限あればいいと思う。会社の規模にもよるが、プライム企業であれば簿記2級もいい。それでも企業にとって候補者を選ぶのは非常に難しいと思うし、人材が足りないという課題がある。ただ、コロナ禍ではオンライン取締役も開催されるようになったし、(渡邉恒雄氏が)それすら出席していないというのは問題だと思う。株主さんたちが黙っているのも問題だが、それ以上にメディアが叩かないのは問題だ。

 また、最近では“スキルマトリックス”や“スキルセット”と言って、多様な人材がボードメンバーにいるかどうかを開示しなければならなくなった。企業としては業界の人だけを集めてもダイバーシティにはならないし、女性だから良いのかといえば、そういうことでもない。私の場合も、自分の経営する会社で難民や児童養護施設の支援をしてことから“SDGs”の項目にマルが付けられるが、それでいいのか、という思いもある」。

■山田俊浩氏「7、8社やっているような“お友達”取締役も増えている」

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 東洋経済新報社の山田俊浩・会社四季報センター長は「ソフトバンクの場合、日本マクドナルドの藤田田さん、光通信の重田康光さん、コンサルタントの大前研一さんといった方々を社外役員にしてきた。孫正義社長に聞いてみると、“藤田さんはファンだし、重田さんのビジネスは面白い。大前さんはちょっとしゃべり過ぎるけど楽しい(笑)”と言っていた。“制度だから”ではなく、“自分の経営に活かすため”だと感じた。

 一方、マイクロソフトのようなシリコンバレーが経営と執行の分離を目指してきたのに対し、日本は、自動車が通産省、金融が大蔵省が社外取締役的なガバナンスの役割を果たす“護送船団方式”が90年代まで続き、社内の取締役はサラリーマンが目指す“出世のゴール”のようなポジションになっていた。そこは今も変わっていないと思う」と指摘。

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 また、「渡邉恒雄さんのことについては『週刊東洋経済』が記事しているが、読売新聞社や日本テレビホールディングスに問合せると、“欠席はしているが資料を見ながらやっているし、出席以上のことをやっている”といった回答がくる」と苦笑。「一方で、機関投資家が数字を機械的に見るようになってしまった結果、あまりうるさいことを言わず、うまく同調してくる人を集めてこようという雰囲気にもなっている。結果として、7、8社やっているような“お友達”社外取締役も増えていると思う。孫さんなら、そういう人は据えないだろうし、むしろ厳しいことを言ってくれる人を選ぶはずだ」と訴えていた。(『ABEMA Prime』より)

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