アメリカ国内に“ゼレンスキー疲れ”も…長期化するロシアの侵攻、ウクライナ支援はどこまで?
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 アメリカのバイデン大統領は日本時間16日、ロシアの攻撃に抵抗を続けるウクライナに対し新たに1340億円規模の軍事支援を行うと表明した。

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 ホワイトハウスによると、バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談、追加の軍事支援を行う意向を伝えたという。ロシア軍が攻撃を激化させている東部ドンバス地方で抵抗を続けるウクライナ軍の防衛力強化を念頭に、ロケット弾やりゅう弾砲の弾丸などの提供が想定されている。

 これに対してゼレンスキー大統領は新たに公開した動画の中で、「アメリカの支援はドンバス地方での防衛にとって特に重要なものだ。
バイデン大統領のリーダーシップにも感謝する」と述べている。

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 ロシアによる侵攻開始からおよそ3カ月半。軍幹部が「ロシアに対抗するために必要な支援のうち10%程度しか受け取っていない」と説明、ゼレンスキー大統領も連日のようにNATOやアメリカなど国際社会に武器の提供や支援を呼び掛けてきたウクライナ。

 一方、先月にはウクライナ支援として5兆円規模の予算を可決したアメリカは急激なインフレの中にあり、戦略家のハル・ブランズ氏はブルームバーグへの寄稿の中で「資金や銃の要求に欧米の指導者がうんざりする“ゼレンスキー疲れ”の危険性がある」とも指摘している。

■“重荷”のように捉えられはじめているのではないか

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 15日の『ABEMA Prime』には戦略コンサルタント(防衛・安保)での勤務経験を持ち、ジョージタウン大学修士課程に在籍する佐々木れな氏が出演。次のように話す。

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 「現在はウクライナ東部のベロドネツクとリシャンスクの間を流れる川を挟んで両軍が対峙していて、その狭い範囲での消耗戦となっている。ただ、ここにアメリカがウクライナに武器を送れば良いかと言えば、必ずしもそうではない。

 まず弾薬が不足していること、そして整備・修理上の課題だ。例えばウクライナではメートルを使っているが、アメリカではインチが使われているので、工具が使えないといわれている。加えて官僚制度がオペレーションの改善を阻んでいる。たとえばアメリカ国防総省の組織内で決裁が下りるのに時間がかかっているという話もある。

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 しかもアメリカでは中間選挙が近づいているので、国内問題に目が向きやすい時期になってきている。8.6%という40年来の驚異的なインフレ率で、私が住むワシントンD.C.でも卵1パックが日本円で1000円ほどになっている。しかも多くは車での移動なので、ガソリン価格の上昇にも不満が高まっている。最近では銃乱射事件も起きているし、バイデン政権としても票を集める上で国民が何を考えているのか、目に見えやすい政策は何かを考えざるを得ない。

 ゼレンスキーとしては西側諸国に支援を訴え続けているし、逆に言えばそれしかできない。これに対し、イギリスやドイツなどのG7、あるいは自由民主主義営は一定の支援を続けている。それでも自国の経済が弱体化する中、アメリカ国民の間ではいつまでウクライナ、ゼレンスキーは我々に武器や資金の援助を要求してくるんだと、いわば重荷のように捉えられはじめている部分もあると思う。実際、要求してくる武器のレベルは上がっていて、当初はジャベリン(対戦車ミサイル)だったのが、最近ではHIMARS(高機動ロケット砲システム)になってきている。こうした装備が鹵獲されることで、軍事技術をロシアに取られてしまうのは嫌だな、という気持ちもあるだろう」。

 長期化がウクライナに優勢をもたらすとの分析もあったが、佐々木氏によると、今や優勢なのはロシアだという。

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 「“食料の武器化”と呼ばれる、ロシアによるウクライナ産小麦の輸出ブロックや友好的な国だけに輸出するといった措置によって、世界の供給と価格に影響が及んでいる。国連ではこれによって最大5000万人近くが飢饉ないし飢饉に近い状態になるのではないかと予測している。

 ウクライナ疲れ、ゼレンスキー疲れのようなものが進み、西側の援助が減っていく一方、ロシアは耐え続けている。課題があるとすれば兵員不足、特に歩兵の不足だ。ロシア軍は冷戦後に規模を縮小、平時のレベルでは大規模な通常紛争能力に欠けることが明らかになっている。これから新たにリクルーティングした兵員の投入を加速すると思うし、補給に関してもキーウ方面よりもロシアに近い東部の方が容易だ。

 ロシアとしては先ほど紹介したセベロドネツクを占領してしまえば“ルハンスク州を確保した”といった宣言ができると思うし、東部2州を押さえれば、彼らの言葉でいう“解放した”という説明が国内向けにできることになる。最終的にどこまで取りたいかは分からないが、少し期間をおいて南部を、ということはあり得ると思う。

■「ロシアにとって、NATOの脅威はかえって高まるのではないか」

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 アメリカ出身のパックンは「第二次大戦の経験から消極的になるなど、NATOの国々がまとまらない中、単独で行動できるだけの軍事力を持っているアメリカが疲れてしまうというのはゼレンスキーのピンチにつながる。ロシアとしてもウクライナの軍事能力も含めインテリジェンスを把握できているから、こういう戦い方を続けているんだと思うし、バイデン政権が本気でロシアに対抗するというなら、ウクライナを全面支援してロシア軍を押し返すという努力を見せて、向こうに“勝てるぞ”と思わせないようにしなければ。

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 ただし皆さんに知っておいていただきたいのは、アメリカは去年8月まで戦争中だったということ。そしてインフレや銃乱射に加えて、去年1月の議事堂乱入事件の聴聞会も始まっている。センセーショナルなニュースが次から次へと起きていて、ウクライナ問題が優先されるような状況ではない。一方、ロシアがウクライナの東部2州を奪った場合、国境沿いに配備されるNATOの軍事力は強化されることになるのではないか。フィンランドの加盟の話もあるし、ロシアにとっては解消を目指してきたNATOの脅威はかえって高まるのではないか。それで本当に目的達成と言えるのか疑問が残る」とコメント。

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 近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「もちろんバイデン大統領はトップマネジメントとして世論を気にしながらやっているだろうが、ウクライナ支援は国民に支持されている話なので、インフレや選挙によって無くなるというほど単純ではないと思う。問題はアメリカが考える“着地点”だ。もともとウクライナ東部にはロシア系住民が住んでいたわけだが、ゼレンスキーはクリミアも含めて全て取り返さない限り戦争は終わらないと言っている。そこまでアメリカやNATOが、そこまで支援ができるだろうか」と疑問を呈した。

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 日本でもウクライナ侵攻に関する報道が減る中、14日の自民党外交関係部会では、現状に即したウクライナ支援を行う上で、岸田総理にキーウ訪問を求める声が浮上している。16日にはフランス、ドイツ、イタリアの首相がキーウを電撃訪問した。

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 佐々木氏は「岸田総理がキーウを訪問し、自由民主主義陣営と連携をアピールすることで、日本は国際秩序にコミットメントしているということを世界に示せる。日本は中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた大変な場所に位置している。もしウクライナと同じような状況になって他国に支援を求めた場合、“あの時、キーウに行ってなかったですよね。武器も渡さなかったですね”と言われて支援を受けられなくなるかもしれない。

 さらに言えば、私たちもロシアとの領土問題を有しているし、脅威だ。北海道周辺におけるロシアの軍事的な威圧に対して屈しないぞというメッセージを送ることもできる」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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