SNS時代、自分の子どものプライバシーを「コンテンツ化」したり、子どものアカウントを「ウォッチ」したりする親の問題がクローズアップされている。
■あくまでも子どものプライバシー。バランスを考えて
20日の『ABEMA Prime』に出演したryuchell(りゅうちぇる)は、3歳の男の子の父親でもある立場から「最近、TikTokなどでも子どもがメインになっているアカウントもある。でも、それで子どもが楽しいと感じたり、自己肯定が上がったりするためには、やっぱりバランスだと思う」と話す。
「あくまでもプライバシーは守ってあげないと、続かないと思う。そして、“やめたいと言われたときにやめたらいいじゃん”ではない。ネット上に出れば残ってしまっているので。例えば高校生くらいのカップルが“チュープリ”といってキスしている写真や動画を載せているが、それくらいであれば大人になったときに“黒歴史だわ”“勉強になったわ”で済むかも知れないが、子どもの場合はトラウマになってしまうかもしれない。
僕も“理想のパパ”のようなランキングに載ることがあるが、実は複雑だ。親としてバラエティ番組に出演して“子どものこういうことについて悩んでいる”と話題にすることがあったとして、子どもにとっては言ってほしくないこと、大人になったときに見返したくないと思うこともあると思う。やっぱりプライベートに関することでもあるし、成長段階のことでもあるので、子どものことでSNSの“いいね”を取るのは嫌だ。そして人生、生活の中に子どもがいるという意識は大事かなと思っていて、“案件”に子どもを出すことはしていない。芸能人の子どもっていう時点で普通じゃないかもしれないが、家族で話し合って慎重に発信したいし、できる限りプライバシーは守るようにしてあげたいと思っている。
仮に本人が“顔出しもいい”とか、“自分も芸能人になりたい”と言い出したとしても、まだ5、6歳なら“ちょっと待ってよ”と。時間をかけて話し合って、中学1年くらいになっても考えが変わらないなら、やってみるかと言うかもしれない。その都度コミュニケーションとりながら考えていかなきゃいけないと思う。逆に僕たちの言動によっては息子が後ろ指を指されるようなことも起きてしまう。そこも本当に気を遣う」。
早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介医師(精神科)は「人前に出ることが全く気にならない子もいれば、ちょっとでも見られるのが嫌だという子もいる。そもそも親子だったとしても性格は違うので、そこでトラブルになっていることはある。やはりプライバシーに対する理解が深くない親やビジネス化することへの抵抗感がない親、あるいは周りからの目を気にしないとか、批判への耐性が強い人とか、目立ちたがり屋の親に多い。そして専門的な言い方ではあるが、子どもを代理とした承認欲求だ。つまり“いいね”は子どもではなく投稿した親に対して付くので、そこで承認欲求を満たしているのかな、と考えられる」と話す。
一方、元経産官僚の宇佐美典也氏は「僕の場合、子どもが生まれてからはメディアに出るのを控え目にしようかなとか、あまりフォロワーが増えないほうがいいなというマインドになった」と話す。
また、アメリカに留学している18歳の息子がいるジャーナリストの堀潤氏は「僕のインスタに“いいね”が付いていたり、ストーリーズを見た形跡が残っていたりするので、パパは今こういうことに関心があるんだよという話をしたことがある。息子から指導されたのは、“ストーリーズの文字が大きすぎる。こんなでかいのじゃダメだ”と」苦笑。「だいぶ大きくなったからと思って、“インスタに一緒に出る?と聞いてみたら、“は?何言ってるの?”と言われた(笑)。子どもにとってはすごくセンシティブな話だし、親とSNSに出るというのは不快なことなんじゃないかということにも気づかされた」。
■親が子どものSNSを見る上で大事なのは“関係性”だと思う
一方で、子どものSNSを監視したり過剰に干渉をする親もいる。保育士のさくらさん(仮名)は、元々不仲だった母親が、実は自分のSNSを2年にわたってチェックしていたことを知った。
「彼氏と行った場所とか、SNSを見ていなければ知り得ない話をしてきたので気になった。良くないことだったと思いながらも、母がトイレに立ったときに携帯を確認したところ、ブックマークに私のInstagramとTwitterが登録されていて、すごく怖かった」。
「ウツワ」代表のハヤカワ氏は「私の場合、パートナーの親にYouTubeやSNSを見られている。それは息子のことを気にしているからだろうと思うし、そのこと自体は問題ない。でも、そこまでの関係性もないのに“これはこうなんじゃない?”と批判してくるのはマジでキモい」と憤る。
また、実家にいる家族とはLINEグループでコミュニケーションを取っているというテレビ朝日の田中萌アナウンサーは「放送は見てくれているのはすごくありがたいなと思いながらも、SNSはちょっと恥ずかしい。公式のInstagramでも、やっぱり親に見せるのとはちょっと違う姿だから、見なくても大丈夫だよ、という気持ちがある。公式でさえそうなので、友達とかだけに見せている顔を見られたら(笑)」と苦笑した。
ryuchellは「親としては心配な気持ちで見てしまうんだと思うが、それこそ関係性だと思う。心配だからと言われても、子どもとしては“今まで親らしいことをしてくれた?今さら何?”という複雑な気持ちになってしまうのは当たり前なんじゃないかなと思ってしまう。僕の場合、InstagramにもTwitterにも親からのコメントが付くし、最近ではTikTokも(笑)。マネージャーや友達から、“またヒガミノルからコメント来てるよ”と。そう言われるのが恥ずかしいとか思いながらも、ちょっと嬉しい気持ちもある。これはやっぱり関係性が良いからだと思う。
でも、親が子どものアカウントにログインしようとしたり、誰をフォローしているのか、どんなタグ付けをしているのかを見ようとしたりするのは行き過ぎたパターンだ。子ども時代、学生時代にSNSを経験していない上の世代からしたら、自分の子どもがSNSを使うことに不安はあるだろう。もちろんトラブルもあると思うけど、気付きや経験からSNSの良い使い方を学んで大人になっていくという部分もある」と指摘。
堀氏は「やっぱり親としては“自分の知らない世界でどんなふうに活躍しているのかな”、逆に“心配なことは起きていないかな”とか思ってしまうもの。親は全く見てはいけないとなるのも残念な感じがするが、これは互いにフェアな関係があった上での話だ。一方的に子どもが辛いと感じてしまったり、干渉されていると感じてしまったりするのは良くない」、宇佐美氏も「僕は母親から“あんた炎上してるわね”と言われる。嫌なんだけど、親が見ていると思うからこそ“しっかりしなきゃ”と思えている部分もある。ただ、子どもに対して自分がどう接するだろうかとなると難しい」と話した。
益田医師は「自分の子どもが高校の文化祭でアホなことをしているのを知っていても、親は何も言わないものだ。それが大事だと思う。ストーカー、依存症のようになってしまうケースもあるけれど、現実的には子どものSNSを“全く見ない”ということの方がネグレクトに近いとも言える。
一口にSNSと言っても、若い子たちは小さくクローズドなサービス、例えばDiscordのグループに匿名で投稿していたりもするが、少なくともYouTubeやTikTok、Twitterは本当にオープンな場所なので、週1、月1くらいは見てあげないと子どもは何をするかわからないし、性的な暴力の被害に遭うケースもある」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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