“世紀の一戦”は数字の上でも破格だった。

 6月19日、東京ドームで開催された『THE MATCH 2022』。長い間待ち望まれていた那須川天心武尊の対戦がついに実現するとあって、チケットは即完売となった。

 観衆は5万6399人。過去には7万を超える主催者発表の大会もあったが、今は「実数発表」が基本だけに「東京ドームの観客動員記録でしょう」と関係者は言う。最前列の値段が1席300万円というのも話題になった。ゲート収入(チケット売上)は20億円に達したそうだ。中継ゲストのケンドーコバヤシ曰く「もはや“経済効果”ですね」。

 大会間近の時期にフジテレビでの中継がなくなるという“事件”もあったが、それも話題性アップにつながったのかもしれない。ABEMAでのPPV(有料中継)は契約数が50万を突破したという。一夜明け会見で、サイバーエージェントの藤井琢倫執行役員が明かした数字だ。これも、日本でのPPV史上トップクラスだという。

「歴史的な1日になりました」
「50年、100年語り継がれる」
「地上波がなくなったことで一気に時代が動いた。ビジネススキームが変わりました」

 そう語ったのは、大会実行委員の榊原信行氏だ。PPVの大反響を受け、ABEMAは大会翌日となる20日に那須川vs武尊の無料放送を実施。これも新たな試みだった。

 試合は那須川が判定勝利。1ラウンドにダウンを奪い、そのまま優位に試合を進めた。だが武尊も苦戦しながら最後まで自分の闘いを貫いた。笑顔を見せながら前進し、パンチを振るう姿は鬼気迫るもの。観客、視聴者を満足させる闘いだったと言っていい。試合後の両者の涙も、見る者の心を動かした。

 内容的にも数字の面でも、素晴らしい興行だった。かつて格闘技は重量級がメインだというイメージが強かった。それを覆したのが魔裟斗であり、今回はさらに次の世代が記録を作った。天心vs武尊の契約体重は58kg。軽量級の選手たちが日本格闘技最高・最大のイベントを作り上げたのだ。あらゆる意味で歴史的、記録的な闘いだった。試合には決着がついたが、偉業を成し遂げたという意味では2人ともが勝者だった。

 さらに重要なのは、これを“終わり”にしないことだ。もちろん那須川天心と武尊のような人気と実力を併せ持つファイターが同時代に登場することは、今後そうあることではないだろう。それでも、団体の枠を超えて選手が闘いたい相手と闘える場所、ファンが見たいカードを実現させる場所は必要だ。試合後のリング上、那須川はこう語っている。

「これからもこうやって、いろんな団体が一つになって、そうすれば格闘技は凄いパワーを与えられると思います。団体のみなさん、これからも協力していただけたら。『THE MATCH 2』、やりましょう。絶対やったほうがいいよ。大人の事情なんて知らないよ。格闘技盛り上げましょう。俺、格闘技大好きなんです」

 那須川だから言える言葉であり、また切実な言葉でもあった。格闘技団体は離合集散の繰り返し。これまで“団体の壁”で実現できなかったカードもある。それを乗り越えたことに『THE MATCH』の大きな意味があった。

 この“団結”を格闘技界が続けること。それもまた『THE MATCH』の大きなレガシーになる。

文/橋本宗洋

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