22日に公示日を迎えた参議院選挙。来月10日の投開票に向け、物価高対策としての賃上げをいかに実現するのか、論争がスタートしている。
コロナ禍で多くの業界が業績悪化に苦しむ中、デジタル化による“追い風”に期待が高まるのがIT業界だ。アプリケーション開発会社の元代表で、現在はIT企業の採用コンサルティングなどを行う堀口セイト氏は「業界全体で売上が上がっていることは確実だ。賃上げができる会社も少なくないと思う」と話す。
「業界は大きく“3極化”していると思う。まず、自分たちでは製品・サービスを持っておらず、お客さんのために頑張って開発をしている受託開発系の企業、次に自分たちの製品・サービスを持っている自社開発系の企業、そして自社開発ではあるが、創業間もないようなスタートアップ系の企業だ。このうち賃金が上がりやすいのが受託開発系の中でも上流の企業と、自社開発系の中でも業績が好調な企業、スタートアップ系の中でも資金調達が上手くいっている企業ということになる。
やはり賃上げに繋がらない背景に日本の終身雇用制度があると言われているが、IT業界の場合は7〜8割が3年以内に辞めるというデータもある。また、他の業界と違って退職金を出していないところも多いので、“一生かかる固定費”という考え方が薄い。語弊があるかもしれないが、“賃上げしても3年くらいで辞めるんだったら、そこまで負担はない”ということで気軽に上げやすいということはあると思う」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「企業に対して“内部留保を吐き出せ”といっても、その必要性を感じなければやらないだろう。結局のところ、給料が上がるかどうかは雇用の需給バランスだ。だから企業に内部留保を吐き出させるとか、経団連に賃上げしてと頼みに行くとか、そんなことをしても意味はない。そうではなく、エンジニアを取り巻く現状のように、“人手不足”の構造を生み出さない限り、賃上げは実現しないのではないか」と指摘する。
「もともと日本企業は“SIer”と呼ばれる受託開発の企業に発注して自社のシステムを作らせるケースが多かった。ここで問題なのが、それを孫請け企業、3次請け企業…と発注していく多重構造があるために、非常に安い給料で働かされる人たちがいたということだ。だから“ITXX”と、放送禁止用語のような形で呼ばれるくらい、給料が安いのがIT業界、というイメージもあった。
それがここ数年の“DX”(デジタル・トランスフォーメーション)の流れの中で、自社でエンジニアを雇って内製しないダメだということになってきた。典型的なのがコロナで来店者が少なくなったアパレル業界で、自社でECサイトを作ってそちらに切り替えようという動きが出てきている。
そういう中で出てきているのが、エンジニアの取り合いだ。 リモートワークをやめてフル出社にした途端にエンジニアが辞めてしまうとか、より条件の良いところにどんどん移っていく。先日もビックカメラが社内の給与体系のままでは人材が獲得できない、そこで別に給与体系の高い子会社を作ってそちらで雇う、という方針を打ち出した」。
東洋経済新報社の編集者やユーザベース社でのNewsPicks立ち上げを経て、現在はPIVOT社のCEOを務める佐々木紀彦氏は「私も10年ほど前に東洋経済オンラインの編集長をさせてもらったが、デジタルという波は絶対に来ているし、波が来ているところは長期的に給料が上がる。特にエンジニアは賃金交渉が出来るくらい立場が強くなっているし、年収1000万円も珍しくはない。
そしてスタートアップの特徴は報酬だけでなく、ストックオプションの付与も期待できる。例えば『にじさんじ』を運営するANYCOLORの従業員は、上場によって時価総額で数千万円分になったストックオプションを手にしている」と話した。
テレビ朝日の田中萌アナウンサーは「放送業界にいると、私が60歳になったときには今60歳の人たちと同じ給料はもらえないだろうな、ということをひしひしと感じる。給与水準の低い子会社に入社させて、ということもよくある話なので、先輩方と我々の給料の差は確実に出ていると思う。テレビ朝日も新しい拠点を作る計画があったりするし、30年後、40年後もしっかり生き残っていかないといけないと思う」とコメント。
“先輩アナ”の平石直之アナウンサーは「私がテレビ朝日に入社した23年前には、ABEMAに出て、その動画がYouTubeに並んでいて…というような状況になるとは想像もしていなかった。箱を作ってエンタメ事業をやったり、本業と近いところでリアルに拡大していくことも大事だと思うし、広げたり畳んだり、いろんなことにチャレンジしていくしか無い」と応じていた。(『ABEMA Prime』より)
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