政府は21日、物価・賃金・生活総合対策本部の初会合を開催。岸田総理「今年度の最低賃金について、早期に全国平均1000円以上とすることを目指し、物価が上昇する中で官民が連携して、しっかりとした引き上げが行われるよう議論を進めていく」として、“継続的な賃上げ”を目指すことを明らかにした。
約30年にわたって平均賃金の横ばいが続く日本。政府は昨年も給与を前年度より増やした企業に対する法人税の控除率を引き上げる制度を導入するなどの対策を打ってきたが、東京商工会議所の調査によれば、今年度の賃上げを予定している企業は半数以下で、そのうちの7割が“業績の改善は見られないものの賃上げに踏み切る”と回答しており、厳しい状況を伺わせる。
PIVOT社の佐々木紀彦CEOは「(促進税制では)あまり意味がないと思う。給料を上げるためには企業、経済が成長するのが大前提だ」と指摘、北欧で導入されている「フレキシキュリティ」の考え方を取り入れるべきだと訴える。
「これはフレキシブルとセキュリティを組み合わせた造語で、デンマークで“黄金の三角形”といわれるモデルでは、解雇規制を緩和するだけでは不安なので、同時に失業給付を行う。例えば退職前の最大9割を4年間保障する、ただしその条件としてリスキリングのプログラムを受けることにする。そうすれば不安なく次の仕事のための勉強、たとえばデジタルの知識を吸収するために時間を使える。この“成功法則”はオランダなどにも広まり、今ではフランスやイタリアといった解雇の難しい社会でも変わってきた。
会社員たちに話を聞いてみると、勤務先が嫌いだという人はいっぱいいる。だけど怖くて辞められない。でもこの制度があれば安心して辞められて、しかも勉強ができて、転職したら給料が上がるかもしれない。転職する人の数が増えたとはいえ、まだまだ少ない。転職するのが当たり前の社会になっていけば、“私はこれだけ価値があるので、もっと給料上げてくれ”と交渉もしやすくなる。日本で解雇規制の話をすると炎上するので政治家も言論人も言わなくなってしまったが、これを手厚い失業給付と教育プログラムとセットで実行する以外に日本復活の道はないと思う」。
一方、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「それをやり過ぎると今度は新自由主義的になってきてしまうという問題がある。例えば大学生の子ども2人を抱えた50代の人が“DXをやれ”といきなり言われてできるだろうか、という問題もある。徐々にやっていくことが大事だと思う。また、賃上げはマインドによる部分も大きい。企業の内部留保が400兆円も積みあがっているので、それを吐き出させようという議論もあるが、増やしてしまった人件費は簡単にはカットできないので、また景気が悪くなったときに経営を圧迫するかもしれないと恐れている。
その背景にあるのが、日本のデフレマインドだ。消費者が物をバンバン買えば景気は良くなるが、来年には景気が悪くなって職を失うかもしれないと思ったら、お金は使わないでおこうと思うわけだ。そして収益が減った会社は給料を上げない。また消費者が物を買わなくなる。30年間、この繰り返しだったわけだ。
そうではなく、物価が上がっていて、今日1000円でも明日にはまた値上がりすると思えば、みんな今日のうちに買っておこうというマインドになる。それなのにメディアはちょっと上がったくらいで“庶民の生活を直撃”と大騒ぎする。確かに今の物価高にはエネルギー高騰などのコストプッシュの問題はあるし、ミクロにみれば個人の生活に影響はある。ただマクロに見れば物価が上がらない限り、賃上げもなければ経済成長もない。そこの認識のずれが相変わらずあると思う」と指摘していた。(『ABEMA Prime』より)
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