将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)は6月22日、初参戦した順位戦A級1回戦で佐藤康光九段(52)に101手で勝利した。夕食休憩明けから攻勢に出た藤井竜王が佐藤九段との大熱戦を制し、自身初参加のA級初戦と地元・愛知県に新設された名古屋将棋対局場のこけら落とし対局を白星で飾った。
手に汗を握る激戦を藤井竜王が勝ち切った。先手番の藤井竜王が居飛車、後手の佐藤九段は最近では出現率の低い向かい飛車の戦型となった。藤井竜王はトーチカに、佐藤九段は穴熊と互いにしっかりと玉を固めて陣形を整備。中盤戦まではじっくりとした進行で均衡を保っていた。局面が大きく動いたのは夕食休憩明け。いよいよ戦いへ、と佐藤九段が飛車先の歩を突いて先手に攻めを催促。藤井竜王も応じて攻撃を開始し主導権を握った。佐藤九段は勝負とばかりに9筋に香車を打ち込むなど、互いにアクセルは全開。佐藤九段の猛攻を振りほどくことができないまま最終盤へもつれ込んだ。最後は桂馬で迫って長く際どい終盤戦を勝ち切り、藤井竜王が嬉しいリーグ戦白星発進を切った。
終局後に取材に応じた藤井竜王は、「(駒が)組み上がった後も動き方がわからなくて夕食休憩のあたりはうまくいっていないのかなと思っていた。最後、玉が詰むかというのが際どくてわかっていなかった。中盤でいくつか誤算が重なってしまったのでそこは反省点」と話した。また、地元の常設対局場開設を最高の結果で飾り「地元で対局ができるのがとても嬉しく思う。すごく快適に対局することができた」と振り返った。一方、大熱戦の末に黒星発進となった佐藤九段は「予想とは違う展開になったので、よくわからない中で対局していた。もうちょっと粘っこく指せるような展開にしたかった」と肩を落とした。
将棋界の最高峰タイトル名人獲得を目指す藤井竜王が、A級初戦でつかんだ大きな一勝。今期のA級は全員がタイトル戦の大舞台を経験している猛者揃いとあり、今後の対局もすべて熱戦になることは必至だ。第1期を除いてA級初参戦で挑戦権を獲得した棋士は9人で、そのうち名人奪取を果たしたのは谷川浩司十七世名人(60)、羽生善治九段(51)、佐藤天彦九段(34)のわずか3人。藤井竜王はこの仲間入りを果たし、谷川十七世名人が保持する21歳2か月の最年少記録を更新することができるか、大記録への歩みにも期待が寄せられている。次局以降に向けて「2局目以降も一局一局を大事に戦って、挑戦を目指せれば」と目標を語った。
次戦のA級2回戦では、平成生まれ初のタイトルホルダーで王位経験者の菅井竜也八段(30)と激突。現在、藤井竜王は棋聖防衛戦の真っただ中にあるが、6月28日にはもうひとつの防衛戦の王位戦七番勝負が開幕。今年も“熱く”過酷な夏本番が待ち構えている。
(ABEMA/将棋チャンネルより)