「ラジオを聴いたことがない小学生の娘と一緒に放送を聴いてみました。感想は『何を言っているのか聴きとれない』とのこと」
警視庁警備部災害対策課のTwitterアカウントが投稿した、小学生の娘がラジオから流れてくる話が聞きとれないというエピソード。同時に、「災害時に重要な情報源になるラジオが防災対策の一つになるのでは」とつぶやいている。
投稿では視覚からの情報が多い今、耳からの情報には慣れが必要なのかという疑問も……。ラジオと“聞く力”の関係性について、メディア論を専門とし、ラジオに関する研究を行う大正大学の北郷裕美教授に話を聞いた。
「少なくともゼミ生は、メディアのゼミということで関心のある学生が多いので、それでもいわゆるヘビーリスナー。ラジオをほぼ毎日聞いているみたいな学生は、1割にも満たない感じですね」
YouTubeやTikTok、サブスクリプション型の動画配信サービスにユーザーが集中する今、ラジオに触れる機会は減少――。その影響について北郷教授は、2006年に出版された「ラジオは脳にきく」という本で書かれた内容について触れた。
「人間の脳にとって一番悪いのは、1日中何も考えずに画面を見続けていることだということなんですね。2006年に書かれた本ということは、今ほどYouTubeやSNSとかが、これほどではなかったときなので、多分テレビというものを対象にしてると思うんですけど、それが割と今はもう、動画視聴が当たり前になってきていますので。ですから、ラジオを聞くことで音声以外の画像情報を脳が補おうとすることは、まさに脳を鍛えることになると思います」
ラジオでしか聞けない本音が聞ける、パーソナリティーとの距離感や、頭で映像を補うラジオドラマの奥深さなど、ラジオにはまだまだ魅力が溢れているという北郷教授。若者との相性は決して悪くないと話す。
「まさに音声情報だけのものを、頭の中でどう描いて想像していくかという、その能力というのが割と課題かなという気がしています。ただ、今の学生がいわゆる接触機会が減っていということで、決してラジオを聞きたくないとか、苦手にしているというところまで極端ではないと思うんですね」
若者に向け、インターネットで聞けるサービスがどんどん拡大しているラジオ。その一方で、緊急時に備えて古き良きラジオの聞き方も知っておいてほしいと北郷教授は訴える。
「携帯電話の基地局がだめになってダウンしてしまっても、ラジオはちょっと言い方稚拙ですけど、電波が上から降ってきますので、ラジオ受信機さえあればどんな場所でも普通に聞ける。一番災害時には武器になるのではないかなとは思いますね。普段から周波数帯とか、チャンネルを知らないと、災害時にだけ急にというのは難しいと思うので、普段からラジオというものを番組を聞いていただけたらと思っております」
警視庁警部災害対策課のツイートを受けて、ニュース番組『ABEMAヒルズ』にコメンテーターとして出演した、ラジオパーソナリティのキニマンス塚本ニキ氏は、「(ラジオは)聞き慣れていないと、YouTubeなどの動画視聴とは違う脳の部分を使うと思う」と話す。
また、ラジオが聞き取りにくいというコメントに対しては「ラジオの良いところとして距離が近いとよく言われるのだが、それは言い方を変えれば“内輪ノリが強い”ということもあると思う。だから、初めて参加した内輪の会についていけないというのと同じ感覚ではないか」と持論を述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
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