ラブストーリーに必要不可欠で、もっとも盛り上がるクライマックスと言えば、恋する男女の告白シーン。2022年の春アニメで、その告白シーンの描き方から好評を博したのが、４月から放送されていたTVアニメシリーズの第３期となる「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」（以下「かぐや様」）です。
「かぐや様」は、エリートが集う秀知院学園の生徒会長・白銀御行（しろがね みゆき）と副会長の四宮かぐや（しのみや かぐや）の恋愛模様を描いた学園ラブコメディ。その最大の特色は、いかにして相手から告白させるかに知恵を絞る「恋愛頭脳戦」にありました。TVアニメ第１期および第２期では、互いに相手に告らせようと、火花散るやり取りが繰り広げられていたのです。
ところが、この「相手に告らせる」という目的が「自分から告る」にシフトしたのがTVアニメ第３期。白銀がアメリカ留学を決め、卒業が早まって時間が無くなったことに焦る白銀とかぐやの心境が丁寧に描写されていました。告白の成功で幕を閉じたTVアニメ第３期は、作品の転換点に当たる重要なエピソードだったのです。
そのことを裏付けるかのように、第３期後半には「文化祭と二つの告白」編というサブタイトルがついていました。ですが、この「文化祭と二つの告白」編の「二つ」とは、いったい何を指しているのでしょうか――？
「そんなもの、白銀の告白とかぐやの告白に決まっているじゃないか」と即答する視聴者の方は多いかもしれません。確かに、白銀は文化祭でかぐやが告ってこなければ自分から告ると決意を固めて、学園中からハートの飾りを盗むという大掛かりな、そして正気に戻った後で悶絶しそうな告白「ウルトラロマンティック作戦」を仕掛けて、非常に目立っていました。
対するかぐやも「今日、会長に好きだって言う！」と覚悟を決めて白銀と対峙し、好きだとこそ言わなかったものの、大胆な行動でクライマックスシーンを締めくくっています。これら主人公２人の行動に注目が集まるのは当然ですが、その陰に隠れて別の告白も進行していました。その立役者となったのが、白銀たちの後輩で生徒会の会計を務める石上優（いしがみ ゆう）です。
石上は、TVアニメ第3期第10話で、先輩の子安つばめ（こやす つばめ）にハート形の巨大クッキーを贈っています。秀知院学園には、文化祭でハート形のものをプレゼントすると永遠の愛がもたらされるという、生徒の９割が知っている有名な言い伝えがあるのです。よって、公衆の面前でハート形のクッキーを贈った石上の無自覚な行動は、公開告白としてつばめ（および周囲の人々）に受け取られたのでした。
それと同時に石上は、TVアニメ第3期最終話で、犬猿の仲である生徒会会計監査・伊井野ミコ（いいの みこ）にもハートのキーホルダーを手渡しています。これは単に風紀委員でもあるミコに落とし物を届けただけなのですが、秀知院学園の文化祭ではハート形のものを渡しただけで告白となってしまいます。石上はその言い伝えを知らなかったため、無自覚につばめとミコに告白したことになってしまったのです。
そもそも石上は、女子どころか他人との接点がほとんどない陰キャであり、告白などという行動とは縁遠い人物として登場しました。しかし、TVアニメ第２期の後半で描かれた、体育祭で忌み嫌っていた陽キャたちに揉まれ、過去のトラウマと向き合い、それを乗り越えるなどの著しい成長を見せました。そんな彼が、TVアニメ第３期の文化祭編では異性を好きになり、その人のために行動したのです。
つまり、「文化祭と二つの告白」編の「二つ」には、白銀とかぐやの恋愛模様だけではなく、物語の裏主人公に位置付けられている石上の二度の無自覚な告白も含まれていた、というわけです。さらに言えば、意識的な告白と、無自覚な告白という２通りの告白の対比にもなっています。原作者である赤坂アカ（あかさか あか）先生の見事な構成力に感心した人も多いのではないでしょうか？
しかし、告白シーンが大団円を迎えたからと言って、これで「かぐや様」の物語が終わったわけではありません。庶民の白銀と上流階級のかぐやが結ばれるためには、乗り越えていかねばならないハードルがまだまだ数多く存在します。さらに、無自覚だろうと何だろうと、ほぼ同時に２人に告白するという陽キャも真っ青な暴挙を仕出かした石上の恋模様は、今後の物語の火種となっていくのは間違いないでしょう。
はたして、白銀とかぐやは本当に結ばれるのか？ そして、石上のつばめ＆ミコとの関係性はどう変化するのか――？ 物語はさらなる波乱の予兆を見せていますが、これらが新作アニメーションでどう描かれるか、今から楽しみですね！
(C)赤坂アカ／集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会
テキスト／リューヤ
「かぐや様は告らせたい」原作漫画
