魚介類とともに体の中に入ってしまうと、胃や腸の壁に食いつき、アレルギー反応によって強烈な腹痛を巻き起こすアニサキス。そんな厄介者を役に立てようという研究が進んでいた。
「アニサキスの表面にがんを殺すような物質をくっつける(搭載する)方法を開発した」
大阪大学の境慎司教授が発表したのが、アニサキスをがんの発見や治療に将来的に繋げられるかもしれないという技術。「アニサキス」などの線虫の表面を生きたまま、厚さ0.01ミリメートルほどの柔軟性のある膜でコーティングするというもの。
「ネガティブなイメージを持たれてはいますが、体の中で生きられるということと、がんを検知して、そちらに対して動くという性質はなかなか他にはないことですので」
がんのにおいに反応できるとされているアニサキス。ヒトの胃液にさらされても生き延びられるアニサキスの厄介な性質が、体内でのがん治療にとっては強い武器となる可能性があるという。
実験では、紫外線への耐性を向上させる機能や、がん細胞を死滅させる機能などを線虫に付与することに成功。がんのにおいに誘われたアニサキスが移動して付着し、がん細胞を攻撃するという新しいがん治療法につながることが期待されている。ただ、激しい痛みなど乗り越えなければならない課題も見つかった。
「実際に使うことを考えると、アニサキスが体の中に入った場合に生じているような問題をどうやって解決するのかということが先に来ますので、その方法を我々自身も考えつつ、いかに効率的にがんの部位に薬剤を届けられるか、もっと他の方法でアニサキスを使ってがんを攻撃できないかという研究をやっていく必要があります」
境教授は、「今後、不要になった場合にすぐに殺したり、痛みの原因となるアレルギー反応をなくしたりする技術の開発は必要になるものの、将来的にはがんの発見や治療のためアニサキスを飲む日が来るかもしれない」としている。
「みんなが考えていないことに対して取り組めているというのは、自分としてはわくわくしながら研究に取り組むことができたポイントになります」
(『ABEMAヒルズ』より)
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