芳文社「COMIC FUZ」にて連載中の『ゆるキャン△』は、女子高生たちによるアウトドア系ガールズストーリー。2018年にTVアニメ化されると、魅力的なキャラクターたちによる緩やかな雰囲気と本格的なアウトドア描写を両立させ、多くのアニメファンの支持を得た作品だ。
2020年にはスピンオフ作品の 『へやキャン△』、2021年には『ゆるキャン△ SEASON2』が放送されアウトドアブームの一端を担ってきた同シリーズが、原作者・あfろ氏監修の完全オリジナルストーリーで、映画『ゆるキャン△』として2022年7月1日より劇場公開中だ。
本記事では各務原(かがみはら)なでしこ役の花守ゆみりと志摩(しま)リン役の東山奈央にインタビューを実施。高校生から社会人となった登場人物たちの変化について、映画『ゆるキャン△』の見どころについて話を伺った。
――映画『ゆるキャン△』でまず驚いたのが、『ゆるキャン△ SEASON2』までは高校生だったなでしこたちが、社会人になって東京や名古屋で暮らしているという設定でした。
花守:台本をいただいて読むまでは、なでしこたちが大人になった姿ってどうなっているのだろう? という期待感がありつつちょっと不安もあったのですが、読み終わってみると確かにこういう未来があるかもしれないという説得力がすごくありました。
東山:最初に(登場人物が大人になった)映画『ゆるキャン△』のキービジュアルを見たときは、皆さんも驚かれたと思うのですが、私たちも「みんなが大人になってる!」とすごく驚きました(笑)。映画という大きな舞台で、ファンの皆さんが見たい『ゆるキャン△』になっているのか私も正直一抹の不安があったのですが、台本を読んでみると何の不安もなくなりましたね。
――それはファンも期待が高まりますね。台本のどのようなところが印象的だったのでしょうか?
東山:皆さんが大好きな『ゆるキャン△』の魅力が詰まっていましたし、普段のTVシリーズの30分という枠の中では描ききれない映画ならではのドラマが描かれていたところですね。
今回、“劇場版”ではなく“映画”と銘打っているのはTVアニメ版を見ていないと楽しめないような続きものとしての劇場版ではなく、映画単体の作品として楽しんでいただけるように願いを込めて付けられているので、その中で見せてくれるリンたちの色々な取り組みにすごく勇気をもらえると思います。
花守:なでしこたちが高校生から大人になるまでの時間を私たちが演じることはなかったのですが、それでも台詞の端々に私たちが知らない時間があったように感じられました。それが寂しくもあり、成長だったり変化だったりというものを実際に感じ取ることができたことがすごく光栄なこだと思っています。
あと、彼女たちの変わったところと変わらないところを映画『ゆるキャン△』を通して、一緒に感じていただけるところではないかなと思いますね。
――お二人が演じられているなでしことリンの変わったところと変わっていないところは、具体的にどのようなところでしょうか?
花守:なでしこはとにかく目の前にあることを楽しむので、歳を取ってないのではないかと思えるようなシーンもいっぱいありまして。それにみんなが動かされていく、動かしていく力というものは相変わらず彼女の中に存在するのだなと感じていました。逆にすごく変化しているなって思ったところが、彼女が受け取る側ではなく楽しんでもらう側になったということですね。
なでしこは東京のアウトドア用品店で働いているのですが、自分が高校生の頃にしてもらったことを今度はこれから楽しもうとしている人たちに対して全力で応えていくという。
――TVシリーズではバイトして貯めたお金でランタンを買っていましたが、それを見守っていた店員さんと同じような立場になっているんですね。
花守:そうなんです。受け取る側から与える側になったんだなと感じられる会話がリンちゃんとの会話の中にもあって。その会話のように、趣味はもちろんのことわたしたちが作っているアニメも同じように人から人へ継がれていく、伝わっていくんだなと思えて、私自身にもとっても響きました。なでしこは本当にカッコ良くなっています。
――リンは名古屋の出版社でタウン情報誌の編集者として働いていますが、リアリティがあって共感できました。
東山:キャンプを仕事にしたなでしことは違って、リンはキャンプは趣味のままで、出版社勤めという道を選びました。TVアニメでもキャンプをしながら本を読んでいましたしバイトも本屋さんだったので、意外とこんなところに伏線があったのだと私も納得できました。好きな本を作る業界に入っても、朝まで仕事をしてブラインド越しに朝日を見たりするようななかなかハードに働いているシーンも描かれていて(笑)。
でもリンは確かなやりがいを自分で感じていて、高校生から見守ってきたキャラクターたちが社会人として頑張っている姿に勇気をもらえるなと思いました。変化というところでは、出版社の上司とお話をしている中で、ちゃんと社会人らしくコミュニケーションをとっているところに成長を感じましたね。
――第1作目ではなでしこにキャンプに誘われたとき、あからさまに嫌そうな顔をしたりしていましたよね。
東山:そういうところが素直で可愛らしい子ではあったんですけど、マイペースだったリンが社会人らしい受け答えをして上司の方にお願いをするときの作法も身につけていて。そういったシーンでは大人になったんだなとは感じつつも、みんなで集まると高校生の時と変わらない表情と雰囲気でおしゃべりしてくれるので、そのギャップが見どころだと思いますね。みんなでいるシーンでより安心感が伝わってくると言いますか、ホッとするシーンだったなと印象に残っています。
社会人になったなでしこたちが再会し、キャンプ場を作ることになるストーリーが描かれる映画『ゆるキャン△』。TVシリーズからのファンは登場人物たちの変化と変わっていない『ゆるキャン△』らしい雰囲気を味わいに劇場へ足を運んでみてほしい。これまで『ゆるキャン△』を見たことがないという人も、精密に描かれるキャンプ描写や美味しい食事シーン、登場人物たちの魅力に心惹かれるはずだ。
映画『ゆるキャン△』
【公式HP】https://yurucamp.jp/cinema/
【Twitter】https://twitter.com/yurucamp_anime
(C)あfろ・芳文社/野外活動委員会
取材・写真・テキスト/kato