将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Dリーグ第3試合、チーム康光とチーム稲葉の対戦が7月2日に放送された。第3局では、銀をタダで渡すまさかの見落としがあり、解説者も仲間も言葉を失う事態が発生した。
第3局は、連勝中のチーム稲葉から服部慎一郎四段(22)、まずは1つ星を返したいチーム康光から郷田真隆九段(51)の両名の対戦となった。戦型は郷田九段の得意戦法の矢倉に。タイトル6期の郷田九段を相手に伸び盛りの服部四段も堂々と立ち向かい、がっぷり四つの戦いとなった。
難解な中盤戦、郷田九段の攻撃のターンで事件は起きた。特段、時間に追われる様子もなく、7三の地点から7二に銀を進めた郷田九段。「え!?」と先に異変に気付いたのは対局者ではなくチーム康光の控室だった。一瞬の思考の空白か、魔が刺したか。佐藤康光九段(52)は目を見開き、継ぎ盤を動かしていた先崎学九段(52)の右手は宙をさまよったまま体が硬直。服部四段が同金としたところで、郷田九段も小さく「あ!」と声を上げ、右手で頭を抱えて体を丸めた。
銀を一枚タダで取られる事態に、解説を務めた石田直裕五段(33)も「こんなことあるんですね…」と絶句。先崎九段は「単純なうっかりだな、こんなこともあるんだな…」と肩を落とすと、敵チームのリーダー、稲葉陽八段(33)も「将棋は恐ろしい…」と言葉を失っていた。形勢ははっきりと服部四段が優勢となり、その後も気を緩めることなく勝ち切った。
終局後、郷田九段は「すごい簡単なうっかりをしてしまった。今はチームのことを考える余裕がない。視聴者の皆さんに大変申し訳ないです」と猛省。対局を見守ったファンからは「将棋こわい」「トップ棋士でもうっかりあるんだ」「忍術くらったのか」「頭抱えてるなんて相当…」「そんなときもあります!」「ドンマイです!!」「郷田先生がんばれーー!」と激励のコメントが多数寄せられていた。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)