少子高齢化が進む中、高齢者層の利益が優先され、若年層の負担が増加の一途を辿り、さらなる少子高齢化へ…という“スパイラル”は年々深刻化している。
関東学院大学の島澤諭教授の試算によれば、団塊の世代に比べ、その孫に当たる18歳世代では実に4000万円ほど“損”をしているという。
「世代会計という手法を用いて計算したものだが、所得税・消費税といった税負担、あるいは年金・医療介護の社会保険料負担から、年金・医療介護児童手当といった助成金・給付を差し引いた、一生分の政府と国民の間のサービスの受け渡しだ。これが高齢の世代では受け取りが多く、若い世代では支払いが超過している。なぜこうなっているかといえば、昔は経済成長できていたので、このような構造があったとしてもより若い人は稼ぐことができ、受け取りもできていたので問題にはならなかった。しかしこの構造が維持されたまま経済が成長しない、あるいは人口が増えないということが背景にある」。
こうした状況への“諦め”、そして政治的無関心から、選挙の度に問題視されるのが若年層の低投票率、そして「シルバー民主主義」だ。東北大学の吉田浩教授の試算によれば、若い世代の投票率が1%下がると、社会保障や国からの支援が高齢世代と比較して年間約7万8000円の減少につながるのだという。
『シルバー民主主義の政治経済学』の著書もある島澤教授は「シルバー民主主義自体の定義にこれ、というものはない。が“政治家が当面の選挙に勝つため、数的に優位にある高齢者の票を目当てにしてその意向を忖度し、利益を損なわないように振る舞う”というのが共通項だと思う」と話す。
ただし現状を複雑にしているのは、こうした高齢者への優遇を温存したまま、若者向け給付も増やしている実態だ。これは2009年に旧民主党政権が政権交代を果たした際、若者への給付も含む“人への投資”が票になるということを政治が学んだからだと思う。しかも財源は高齢者の給付を削るのではなく、赤字国債で賄っている。これでは結局、さらに若い世代への負担の先送りであって、現状は言うなればブルーハーツの『TRAIN-TRAIN』の“弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく”だ。つまり“バラ撒き”によって票を買うという形になっているということだ。若い世代が考えるべきは、もっと給付をくれというだけではなくて、財源についてもワンセットで出しているような政党、候補者を見つけ出すことだと思う」。
リディラバ代表の安部敏樹氏も「バラ撒きの問題は大きい。例えば20年後、30年後の不安というのは、20代でも70代でも共有できるトピックであるはずだ。しかし政治はその時に日本はどういう状態であるべきかという定義をしていないし、そのための施策もほとんど打てておらず、場当たり的に対応しているだけだと思う。もちろん、厳しい状態にある高齢者のケアを忘れてはいけないし、実際、生活保護受給者の割合が多いのも高齢者だ。その意味では、高齢者の間でも大きな格差が開いている」とコメント。
また、「若い世代の意見が政治に反映されるようにするためには、政党交付金の額を、満額に投票率を掛けて計算するように制度を変更すればいいのではないか。政党交付金は議席数や得票数で決まるので、必然的に与党ほど額が大きくなるので、これまで現状維持を望んでいた与党にも、若い世代を掘り起こすインセンティブが生まれると考えられるからだ。一方で、加えてメディアとの関係も大切だ。選挙期間中にテレビに出る場合、選挙応援に行っていないか確認されることもあるが、行っちゃいけない理由はない。もちろん番組内で応援している候補者の名前を挙げるのはおかしいが、逆に政治を語るような人たちが選挙応援に行かなくていいのかとも思う」とも話した。
一方、近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「若者全員が投票に行けばどうにかなるという話ではないし、世代論にするのも非常に危険だと思う。2000兆円にものぼる個人金融資産の60%以上は60歳以上が持っているし、同じ年金受給者でも現役で元気にやっている高齢者もいれば、貧しい生活を送られている方もいる。その点、若者なら頑張れば希望も持てる。政治もそこを見ていると思うし、単純に世代間対立の問題にしてはいけないと思う。
やはり高度成長期に作った仕組みのままだからこうなっているわけで、どこで本当に手をつけるのかが問われているということだ。非常に言いにくいことで、“一人一票を否定するのか”と大炎上したこともあるが、やはり納税している人としていない人という区別はあってもいいんじゃないか。なぜなら、“一票の格差”について最高裁で合憲とした判断もある。認められているとするならば、制度的にもありえるのではないか」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)
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