「国を背負うためには覚悟が必要だ」猫ひろし&ラモス瑠偉が語る“スポーツのための国籍変更”の意味
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 12月に開催されるFIFAワールドカップカタール2022。開催国であるカタール代表といえば2019年のアジアカップ決勝で日本を降した際、その多くが国籍を変更した選手だったことが賛否を呼んだ。

【映像】国際大会の意義と国籍変更についてラモス瑠偉と考える

 アスリートの国籍変更をめぐる議論で思い出されるのが、オリンピック出場を目指して、2011年にカンボジア国籍を取得したお笑い芸人の猫ひろしだ。

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 翌2012年、ロンドン五輪出場が内定するや「人生賭けて頑張っている人がいる場に売名目的で入り込むな」「国籍は遊びや道具じゃない」など、日本からも批判の声が相次いだ。「友達に“有名人も悪口を言っているぞ”と言われて聞きたくないと思ったり、ネットを開くと悪口が書いてあったり。睡眠不足になっちゃって…」。

 さらに出場内定から2カ月後には国際陸上競技連盟が「国籍変更から1年未満の選手は1年間の居住実績がなければ国際大会には出場できない」との判断を示す。「金持ちの国が選手をお金で連れてくるのを抑える目的だが、世界第一号として僕が引っかかってしまった。猫が罠に引っかかった」。

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 特定の国や地域が表彰台を独占してしまうような競技の場合、選手が活躍の場を他国に求めたり、他国が強化のために選手を受け入れたりするのは珍しいことではない。例えばリオ五輪の卓球では出場選手177人のうち44人が中国出身で、シンガポールの場合は5人全員が中国出身だった。陸上競技もまた、その傾向が強いという。

 スポーツライター・作家の小林信也氏は「マラソンの場合、上位100人のうち、90人くらいがエチオピアやケニアの選手という状況だ。そうなれば自国の枠に入れない選手は他国に行きたいということになる。そこで上位に入れば豪邸が建つというケースを見れば、“自分も”と思うのは当然だ。ただしこれでは国対抗で競技をやっている意味がなくなってしまうと思う」と話す。

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 こうした経験から、猫は「国を背負うためには覚悟が必要だ」と指摘する。「大会が終わったら元の国籍に戻すというような考えは僕にはない。国の代表として出るという覚悟を持ってやるんだったらいいと思う」。

 こうした思いが通じたのか、2016年のリオ五輪では無事カンボジア代表に選ばれた。足が折れても絶対にゴールしようと。ゴールした後、10分間くらい“カンボジア!カンボジア!”ってコールが起こった。テレビで見ていた人からも、“カンボジアを世界に広めてくれてありがとう”って。覚悟は伝わったのかなと思った」。

■ラモス瑠偉「もし日本がカタールと同じようなことをやったら、私は試合を見に行かない」

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 一方、サッカー指導者のラモス瑠偉氏(ブラジル出身)は1977年、20歳の時に来日。Jリーグ発足前の読売サッカークラブに入団し、1989年に日本国籍を取得した。メディアによるバッシングから守ってくれたチームへの恩返し、そして日本人の妻や一人娘への思いがあったからだという。

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 ただ、国籍の変更の手続きは容易ではなかった。「いろんな書類を揃えなきゃいけないから。文句を言うと、いじわるされるし(笑)。それで1年ちょっと経った頃、“そういえば会社を作ったでしょ”と言われて、また半年ぐらい。当時は本当に難しかった。審査では小学校レベルの文字を読めなければならないので、奥さんと頑張って勉強して。神様に見守られていたのか、運良く出されたものがまあまあ読めた(笑)」。

 90年には実力が認められて日本代表にも選出され、Jリーグ発足後もヴェルディ川崎の“背番号10”として活躍、日本サッカー界に大きな足跡を残したラモス氏。「日の丸を背負って戦う、こんなに名誉なことはない。家族のためにも結果を出したいと思ったし、プレッシャーはすごかった」と振り返り、「国を背負う以上は、やっぱり何年か住んで、言葉や文化を理解するべきだと思う」と訴える。

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 「いろんなことがあったけど、乗り越えられたのは支えてくれた日本の方々のおかげだ。国籍を取るのに皆が同じ理由でなくてもいいし、自分の家族を助けるためにという選手もいるだろうから、批判はしない。でも大会が終わったら金をもらって帰る、日本はどうでもいい。そういう人たちをなんで応援しないといけないのか、理解できない。もし日本がカタールと同じようなことをやったら、私は試合を見に行かない」。

 前出の小林氏は「ラモスさんのようなケースは理想的だが、珍しい」と話す。

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 「最近では政治的な目的のために選手を帰化させ、チームを強化するというのが主流になってきている。サッカーだけでなく、水球やアイスホッケーもそうだ。そして一度は帰化するけれど、大会が終われば帰ってしまうというケースも多い。もちろん、豊かな国が手を差し伸べているという部分も少なからずあるだろうが、ブローカーのような人がいて、仲介ビジネスのようになってしまっているという問題もある。

 日本に来ている長距離選手の中にはそういうパターンもあるし、本人にとってはプラスかもしれないが、基本的にはスポーツのために国籍を変えるというのはおかしいと思う。大相撲もそうだが、モンゴルの英雄である白鵬が親方になるために母国の国籍を捨てないといけないというのは違うと思うし、ルール改正をしなければ、こうした動きが止まることはないと思う」。

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 議論を受け、モデル・デザイナーの長谷川ミラは「私も“ハーフ”といわれる人間なので、スポーツに限らず何らかの線引きを設けた場合にはハーフ差別や外国人差別のようなことに繋がってしまうのではないかという不安を抱く。でも同時に“日本に骨を埋める”という方も少なくないわけで、どういう線引きにするかという議論も必要なのかもしれない」とコメント。

 「テレビを見ていて、見た目で“外国人、何で出ているの?”と思っても、東京生まれ、東京育ちみたいに説明されると、日本代表だと感じると思う。あるいは日本以外の国で好きな選手を見つけて応援していると、勝った時には自分の国の選手が勝ったときと同じように涙を流すこともある。もしかすると、国籍とか、国別対抗で戦うこと自体がナンセンスな時代になるのかもしれないし、愛国心だとか、日本人だという気持ちがあればOK、ということでもいいのかもしれない」。(『ABEMA Prime』より)
 

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