7月16日の日本武道館から5日…プロレスリング・ノアは7月21日の後楽園ホールから年間最大のリーグ戦『N-1 VICRORY 2022』(8・11横浜武道館~9・3エディオンアリーナ大阪第1競技場)に向けて動き出した。

 日本武道館で小島聡を撃破して4年4カ月ぶりにGHCヘビー級王者に返り咲いた拳王は、中嶋勝彦&征矢学との金剛としてモハメドヨネ&稲村愛輝&稲葉大樹と対戦。「ベテラン選手におんぶに抱っこだったら未来なんて見えない」と主張する拳王はヨネを必殺PFSで下すと、N-1にエントリーされなかった稲村、稲葉に「てめーら2軍はいつまで経ってもGHCの頂までいけねーんだよ。悔しかったら、少しは這い上がってみろ!」と檄を飛ばした。

 拳王に敗れてGHCヘビー級王座は失ったものの、N-1初出場が決まった小島は、小峠篤司とのコンビでアンソニー・グリーン&スタイオン・ロジャースの外国人コンビと対戦。試合はAブロックにエントリーされているグリーンのアルタネート・エンディング(変型パイルドライバー)で小峠が敗れてしまったが「チャンピオンベルトを失ってしまったけど、引き続きノアの充実した戦いの中に身を投じていて、本当に楽しくて仕方ない。N-1というリーグ戦にエントリーさせてもらって、俺は本当に幸せなプロレスラー人生を送らせてもらっているよ。拳王、勝彦、杉浦、丸藤…その他にもいっぱいノアには魅力的な選手がいるんだ。それを俺の中で消化して、またノアでの一番を取ってやるよ」と、前向きに優勝を宣言した。

 小島がエントリーされたBブロックの出場選手はGHCナショナル王者・船木誠勝、清宮海斗、中嶋、杉浦貴、マサ北宮、ティモシー・サッチャー、ジャック・モリス。誰と当たっても新鮮な組み合わせだ。8・11横浜武道館での開幕戦では杉浦と激突する。

 そして、この日のメインは『N-1スクランブル6人タッグマッチ』と銘打たれたA、B両ブロックの選手がシャッフルされての6人タッグ。杉浦(B)&藤田和之(A)&清宮(B)と潮崎豪(A)&田中将斗(A)&北宮(B)の激突になった。

 組み合わせ的には杉浦vs北宮、藤田vs潮崎、藤田vs田中、清宮vs北宮が前哨戦だが、特に火花を散らしたのは藤田と潮崎。本来2人は4月30日の両国国技館で王者・藤田に潮崎が挑むGHCヘビー級戦で戦うはずだったが、藤田が新型コロナウィルスに感染したために王座を返上して試合は中止。王座決定戦で清宮を豪腕ラリアットで仕留めた潮崎が新王者になったという経緯がある。その後、潮崎から小島、小島から拳王というのが今の流れだ。

 藤田と潮崎は8・11横浜武道館での開幕戦でいきなり当たるとあってバックの取り合い、腕や足の取り合いといった基本的な攻防からピリピリ。5分過ぎ、北宮を逆片エビ固めに捕らえた藤田がコーナーに待機する潮崎を「シオ、カモン! 来いよ!」と挑発し、清宮が潮崎に攻め込まれると「清宮、返せ! 武藤さんに勝ったんだろ!?」と檄を飛ばす場面も生まれた。

 試合が進むにつれて6選手はN-1に関係なくヒートアップ。杉浦がエルボー合戦から田中を投げっ放しジャーマン・スープレックスで叩きつければ、すぐに立ち上がった田中はスライディングD。藤田と北宮はタックル合戦で肉体をぶつけ合い、藤田が強引なブレーンバスターで叩きつければ、北宮はスピアーで反撃して一歩も引かない。

 最後は大熱戦になった。清宮が潮崎にカウンターのドロップキックから投げっ放しジャーマン、これに潮崎は豪腕ラリアットで反撃したが、そこでリングに躍り込んだ杉浦が潮崎にオリンピック予選スラム、杉浦に田中がスライディングD、田中に藤田が顔面蹴り、藤田に北宮がサイトー・スープレックスを放ち、6人がリング上で大の字に。

 ここから主役になったのは7・16日本武道館で4度目の対決にして武藤敬司に勝利した清宮だ。清宮のエルボーと潮崎の水平チョップが火花を散らし、打ち勝った潮崎が清宮をロ-プに振ると、物凄いスピードで疾走してカウンターのジャンピング・ニーパット。間髪入れずに、もう1発ジャンピング・ニーをぶち込むとタイガー・スープレックス! これは潮崎がカウント2で必死にクリアしたが、清宮はそこからダブルアームロックに移行。4・30両国の借りを返す形でギブアップを奪った。

 清宮は「俺に勝ったご褒美としてドラゴン・スクリュー、4の字、シャイニング・ウィザード、あいつに譲るよ」と、武藤から三種の神器を譲渡されたが、それらを一切使わずに勝利。そこに清宮の強い決意が表れていた。

 武藤発言の後、ファンから賛否両論の声が上がり、もちろん歓迎する声もあれば「武藤のコピーになってしまうのではないか」「オリジナルで勝負してほしい」といいう声もあった。

 そうしたなか、勝った清宮は「まだまだ自分も至らないところ、未熟なところがあると思います。でも、これから自分たちの世代のプロレスを作っていきたいと思います。俺たちのプロレスを見せます!」とマイクを手にファンに宣言。

 バックステージでは「武藤さんから学んだものを大事にして、自分のものをN-1までに掴んでいきたいと思います。自分の中で凄く考えた武道館からの日々だったんですけど、やっぱり自分は何かひとつ、自分にしかないものを作りたい、出していきたいと思っているので、N-1までに何としてでも見つけていきたいと思います」とコメントした。

 実は武藤の譲渡発言は、その前に「あいつの弱点といったら、決め技がイマイチでね。タイガー・スープレックスと、ちょっと飛び道具だけだから」という前置きがあった。また以前から武藤は清宮について「器用貧乏だよな。何か一発バーンっていう強い主張というかさ、そういうものがちょっと欠けているんじゃないかと思う」と言っていた。

 清宮は譲渡発言よりも、そちらを武藤から突きつけられた課題だと受け止めたのではないか。だから三種の神器を使うのは、清宮海斗を確立させたと本人が確信した時になるかもしれない。

 デビュー当時から三沢光晴二世と期待され、今は武藤敬司の後継者と言われるが、清宮海斗は誰のコピーでもないオリジナルな作品作り、自分たちの世代のプロレスを作ることに邁進する。それがプロレスリング・ノアの未来だ。

文/小佐野景浩

写真/プロレスリング・ノア

武藤敬司、清宮海斗に“三種の神器”を譲渡 ここから始まる武藤と清宮の本当の勝負
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