敵も味方も、両控室から驚きの声が上がった。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Eリーグ第3試合、チーム藤井とエントリーチームの対戦が7月23日に放送された。“事件”が起きたのは第4局、藤井猛九段(51)と冨田誠也四段(26)の一戦。終盤戦で勝負はまだまだこれから…という局面で、藤井九段がまさかの投了。仲間の驚きの行動に、チーム藤井の森内俊之九段(51)からは「ええ~!投げちゃうの!?」と悲鳴が上がった。
チーム藤井の1勝、エントリーチームの2勝で迎えた第4局。ここで追いつきたいチーム藤井からは藤井九段、リードを広げたいエントリーチームからは冨田四段が出陣した。第1局でも対戦したカードで、初戦は冨田四段が勝利。互いに振り飛車党だが、「藤井九段の時は、気持ちを新たに居飛車で行こうと思っていた」と先手の冨田四段が居飛車の美濃囲い、後手の藤井九段は角交換型の四間飛車から穴熊に組んだ。
中盤戦では、バラバラの陣形をまとめ上げた藤井九段のペースで進んだが、冨田四段の受けもしぶとく一向に崩れる様子はない。攻めのターンが回った冨田四段が優勢に立ち、激しいねじり合いが見られるかという局面では、解説の千葉幸生七段(43)も「後手にチャンスが来ているのでは?」と熱戦を見守った。しかし、直後に藤井九段が静かに「負けました」。117手で冨田四段の勝利となった。
この事態に慌てたのは両チームの控室。エントリーチームの黒田尭之五段(25)は「え!?投げるの早くないですか!?」、折田翔吾四段(32)は「これが美学なんですね…」とポツリ。チーム藤井の森内九段からは「やめて!投げないで!なんで~まだ難しいじゃん!」と悲鳴が上がり、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)は「確かに7一銀と打てば見込みが無いわけではないですね…」と驚いた表情を見せた。
一局を振り返った藤井九段は「自分らしい将棋を指せたが、勝ち負けはしょうがない。チャンスも多かった将棋とは思うけど残念。若い人は手が見えている。言い訳ですけどこちらは手が見えなくて悲しい」とガックリ。視聴者からも「投げちゃったー」「ひええ」「もったいない!」「まだ見たかったようー!」「ウティ先生の悲鳴は貴重」と大きな反響が寄せられていた。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)