今月発表されたジェンダーギャップランキングで日本は116位と低迷している。5位に入ったスウェーデンに本社があるH&Mグループの女性社長に密着し、話を聞いた。
「携帯電話を持たずに、基本的に人を観察しています。その人 がどんな服を着ているのか、どんなふうに見えるのかを知ることができます。そうすることで、私たちの商品構成に多くのヒントを与えてくれます。朝と夕方がベストタイムです」
こう話すのは、衣料品大手H&M、北東アジア地域の社長のアネタ・ポクシンスカ氏(35)。毎朝、自宅からオフィスのある渋谷へはバスと徒歩で通勤していて、道行く人のファッションを観察している。
大学時代のアルバイトから始まり、商品部の責任者などを経て、今年1月に史上最年少でのエリア社長に就任。夫と2人の息子とともに来日した。夫は“主夫”としてアネタ社長を支えていて、週末は渋谷にある居酒屋で家族そろって日本食を楽しむという。
今回、アネタ社長を密着取材をするうえで、特に興味があったのが「女性活躍」についてだ。スウェーデンが本社のH&Mグループは管理職の63%を女性が占めている。
今月発表されたジェンダーギャップ指数。政治、経済、教育、健康の4つの分野について男女格差を指数化したもので、トップはアイスランド、次いでフィンランド、ノルウェーの順だった。
H&Mの本社があるスウェーデンは5位。女性管理職の割合が高いことなどが評価された。両親あわせて育児休業が480日(労働日)認められ、父親だけが取得できる休みもあることなどが後押ししたという。アネタ社長自身も子育てをしながら社長業を行っている。
日本でも今年から、男性の育休取得増加を目指す法律が施行された。ただ、まだ男女共に育休をとることが「迷惑をかける」と感じる人も少なくない。この状況にポーランド出身のアネタ社長は理解を示す。
「ポーランドは(日本の状況に)かなり似ていました。子どもが生まれると女性が家事をするのが当たり前で、女性が仕事を辞めなければなりませんでした。でも段々と変わっていきました」
会社から産休明けにスウェーデンへの転勤を提案された。当時、ポーランドでは男性の育休制度ができたばかりで、夫が代わって育児休暇を取ることで、アネタ社長はキャリアを続けることができたという。
「スウェーデンにはまだ友人がいなかったので、自分たちで何とかするしかありませんでした。(しかし)スウェーデンでは子どもを幼稚園に送り迎えすることが尊重されています。勤務時間は融通がきくため、家族の面倒をみることができるのです」
スウェーデンでは、男性も女性も仕事と育児で活躍することを後押しする制度が整っている。日本人スタッフたちはどう感じているのか。
一方、ジェンダーギャップ指数で日本は146カ国中116位。G7(=主要7カ国)の中では最も低い順位だ。教育と健康の分野では男女平等がほぼ達成されていたが、国会議員や閣僚に占める女性の割合が低く、政治分野では100点満点中6点だった。
今月実施された参議院選挙で当選した女性議員は過去最多の35人。しかし、衆参合わせると女性の割合は15.4%と世界の潮流からは取り残されている。そのうえで、日本の女性の社会進出について、上智大学の三浦まり教授はこう指摘する。
「日本などは、女性が社会進出するタイミングが少し遅くて、本当に最近ですよね。日本も本当に20年というのを見据えて変化していかないといけないと思います。やっぱり教育レベルでの男女の教育格差はまだまだあるので、そこも直していかないと、20年後30年後の管理職における男女の格差も縮まってこないですし、政治家あるいは閣僚における男女の格差も縮まっていかないですから」
アネタ社長も「(日本でも)変化はもうそこまで来ています(スウェーデンでも)年単位で構造的な問題を解決してきた長い歴史があります。変化は一日にしてならず。長い時間をかけて築き上げていくものです」「多様性が組織と働く人をいい結果に導く」と見解を述べた。
その中で、日本の女性たちはどうしたら輝いていけるのかについては「勇気を持って、自分の情熱を追求してください。あなた方が本当に何かを変えたいと思うのなら。それは家族と共に解決できます。私がその一つの例だから」とアドバイスを送った。(『ABEMAヒルズ』より)
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