目的の場所に向かうとき、道を知っていれば記憶を頼りに、知らなければ地図アプリを活用する。スマートフォンの普及でずいぶんと便利な世の中になったが、去年創業されたベンチャー企業「LOOVIC」の山中享代表は、そうした行動が「当たり前ではない人々もいる」と話す。
「一般の方なら、2〜3回歩けば道をだいたい記憶して次も同じように行くことができるが、もう少し時間がかかる。私の子どもの例で言うと、初めて1人で電車通学をしたことがあったが、家族がついて1年ぐらいかけてようやく覚えた。でも、それでも忘れやすい。視空間認知障害という課題を抱えている」
目に入った情報から、位置や向きを把握する視空間認知能力。道を覚えることが苦手だったり、地図があってもどちらに向かえばいいか読み取れなかったり……その能力は人によってまちまちだという。発達障害で移動に困難を抱える息子がいる山中代表は、視空間認知の低さがハンデにならない社会を目指し、サポートデバイスの開発に取り組んでいる。
「ネッククーラーのような形のデバイスを首にかけて、それ自体が目的地に迷わないように案内してくれるサービスになる」
デバイスと地図アプリを連動して行き先を設定すると、骨伝導を用いた音声技術などによって行き先に向けて誘導する。地図やスマートフォンを手にしなくても、目的地にたどり着くことができるという。
LOOVICではデバイスの実用化に向けて、試作機の開発費用などを募るクラウドファンディングを実施した。
「『少し地図を使うことが苦手だなあ』という人は、潜在的にたくさんいる。統計を取ると、約4割の方が自分で地図を見ることが苦手だと思っている。我々の生活でも、初めての場所に行くときに迷うことは誰しもある。誰もが迷わず、目的地へ安心・安全に、画面を見ずに到着できる」
移動に困難を抱える人だけでなく、誰もが活用できるシステムで、歩きスマホをする必要もなくなる。山中代表は視空間認知の社会課題をテクノロジーで解決するとともに、「周囲からは見えにくい困難を抱えた人が生きやすい社会を目指していきたい」としている。
「それ(視空間認知など)が得意な人はあまり気づかないと思うが、苦手な人からするとそのギャップがあることによって社会に出て行くことに対し、すごく生きづらさを感じていく。我々は見えない・見えにくい潜在的なギャップにフォーカスしているが、それを可視化しながら解決していく。誰もが生きやすいバリアフリー社会になっていくために取り組んでいる。誰もが生きやすい社会になっていけばいいなと考えている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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